第085話 作業開始
「綺麗な砂浜と海ですねー」
エルシィが言うように白い砂浜と澄んだ海が綺麗だ。
「まだ泳げる時期じゃないけど、夏だったら気持ちいいかもね」
「ニーナちゃん、泳げる?」
「子供の頃はよく泳いでたからね」
「へー……私、泳いだことない」
エルシィは内陸部出身だからな。
なお、俺も内陸部出身だから泳げない。
前世は知らない。
「まあ、泳げる時期だったとしても泳げる雰囲気じゃないけど」
ニーナがそう言って、左の方を見る。
多くの軍人や海賊もどきが忙しなく動いており、せっかくの綺麗な海なのに騒がしい。
正しいのは仕事をしているあっちだけども。
俺達がしばらく待っていると、カルロが少佐とアラムと共に戻ってきた。
「どうだった?」
「やはり船底に穴が空いていたな。多分、岩礁に当たったんだろう。よくここまで来られたもんだ。運が良いというか何というか」
確かに沈みそうだな。
「逆だ、逆。雨が強かったから避難のために陸地を探していたんだよ。それでこの無人島を見つけたんだが、近くに岩礁があったんだ」
アラムが笑いながら答えた。
何がおかしいのかはわからない。
「とにかく、必要な部材なんかもチェックした。昼すぎには終われそうだ」
そりゃ良かった。
こんなところで1泊したくない。
「じゃあ、頼むぜ。俺はちょっと島の調査に行ってくるからよ」
アラムはそう言って、森の奥に入っていった。
「少佐、料金の話だが……」
アラムの姿が見えなくなると、カルロが大事な話を始めた。
「いくらくらいになる?」
「普通にウチのドックに持ち込んでも軽く300万ゼルはいくレベルだ。材料を現地調達する手間や出張費なんかを加えると、500万ゼルってところだな」
ほー……
「そんなものか。構わん。一から作るよりずっとマシだ」
「じゃあ、それで」
「では、早速作業に入ってくれ。我々はその辺にいるから何かあったら声をかけてくれ。また、この島には魔物や獣はいないらしいが気を付けて作業を行ってくれ」
少佐はそう言うと、乗ってきた船の方に歩いていく。
「カルロ、500万ゼルで良かったのか?」
「本当は400万ゼルってところだ。プラス100万は面倒なことだからだな」
ぼっていたわけか。
「少佐は簡単に頷いたな」
「軍は金払いが良いからな。まあ、ラッキーと思え」
そんなものか。
「分け前は?」
「俺が3、ニーナが2、お前達が2人で5ってところだ」
専門の職人のカルロが一番高いのは当たり前だと思うが……
「お前の分け前が少なすぎんか? 実際に修理や組み立てをするのはお前だろ」
「気にするな。祝儀とでも思ってくれ」
良い奴。
「じゃあ、始めるか」
「ああ。必要な部材は俺が指示をする。まずは木の伐採からだな」
俺達は森の中に入ると、手頃な木を探す。
すると、森で見つけた木材に適している広葉樹が見つかったため、エアカッターで伐採し、枝を落としていった。
「皆さん、手際が良いですね。こういう時のために船に錬金術師を乗せておくと、便利そうです」
ウェンディが感心しながら言う。
「錬金術師を船に乗せるなんてとんだ贅沢だ。それに誰も立候補しないだろうな」
カルロが笑う。
「俺もパスだな」
「私もー」
「怖いわよね」
全員が頷く。
「海の大冒険というロマンがわからない人達ですね」
「飯は保存食ばっかりだぞ」
「それは嫌です。やっぱり陸ですね」
ウェンディが即座に手のひらを返したところで枝を斬り落とし終えた。
次に皮を剥ぎ、丸太を乾燥させていく。
「カルロ、木はどれくらいいるんだ?」
エルシィが乾燥させている間に聞く。
「もう1本いると思う」
「じゃあ、待っている間に進めるか」
俺達はもう1本の木を切ると、枝を落としていく。
そうやって4人で効率良く動いていき、作業を続けていった。
そして、昼になると、両方の丸太の乾燥を終えたので皆で昼食を食べる。
「あと1、2時間で木材の加工は終わりそうだな」
カルロがサンドイッチを食べながら算段する。
「組み立てというか修理の方は?」
「そっちは錬成ですぐだ。俺はそれが専門の錬金術師だからな」
「じゃあ、あとちょっとだな」
「それなんだけど、防腐剤のストックは十分だが、オイルの方が足りないかもしれない」
んー?
「持ってきてなかったのか?」
「持ってきているんだが、昨日までの雨でちょっとダメになってな。残っているやつを持ってきたんだが、心もとないんだ。午後からちょっと木の実を探してくる」
やっぱり雨の被害って結構あるんだな。
「木の実は俺が探してこよう。カルロは木材の加工の方を頼む。お前の方が上手いだろ」
「木の実はわかるか?」
「お前らの店で買ったし、わかる」
クルミみたいなやつ。
「そうか。赤い花が咲いている木だからすぐに見つかるとは思う」
「なかったらどうする? 奥まで行ってみるか?」
「そこまでしなくていい。最悪は帰ってからやる。ちょっと値段交渉をしないといけないがな」
現地でやるって前提での500万ゼルだからな。
「わかった」
「先輩、一人で森の中に入るのは危険ですし、私も行きますよー」
「あ、私もついていきましょう。迷子になっても飛べるのでどうとでもなります」
エルシィとウェンディもついてくるらしい。
「迷子になるような大きさの島じゃないがな。まあ、何があるかわからないから一緒に行くか」
魔物も獣もいないらしいが、蛇くらいはいるかもしれん。
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私が連載している別作品である『最強陰陽師とAIある式神の異世界無双』のコミカライズが連載開始となりました。
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