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宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~  作者: 出雲大吉
第2章

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第074話 それしか言わないの? ★


 私達はニーナちゃんの案内で坂の上の方にあるお店にやってくる。

 店は上品で静かなお店であり、ウェイターに案内され、テラス席に通された。

 そして、適当な料理とお酒を注文し、夜景を眺めながら食べる。


「良い眺めだね」


 少し暗くなってきているが、それでも海は見えるし、船もちらほら見えている。

 周りの観光客らしき家族も同じように夜景を眺めながら会話に花を咲かせていた。

 ただ、たまにちらちらとこちらを見ているのが少し気になる。


「料理も美味しいです!」


 ウェンディちゃんは満足そうに魚の煮込み料理を食べている。

 さすがにもう見慣れた光景だが、周りがこの子を見るのもわかった。


「本当に美味しいね。眺めも良いし、良いお店じゃん。先輩達も来るかな?」

「来ないんじゃない? 兄さんのチョイスなら下の方のお店に行ってると思う。お酒をメインに飲むならそっちの方が良いからね」


 確かにここは食事や雰囲気を楽しむところだね。

 周りの客層を見ても男性同士で来るところじゃないっぽい。


「下の方も気になるなー。先輩に連れて行ってもらうかな?」

「やめた方が良いよ。下の方は治安が良くないから。悪い人間がいるっていう意味じゃなくて、酔っ払いが異常に多いって意味。海の男は酒ばっかりだからね」


 確かにそういうイメージはあるね。


「先輩が守ってくれるもーん」

「私にそんな甘い声を出されても……というか、いつもそんな感じなの? レスター先輩に負担をかけすぎじゃない?」


 うーん……


「先輩、頼られるのが好きな人だからなー」


 頼んでなくても勝手に動くし。

 魔法を推進するイラドの魔法学校では色んな控除があるのだが、よく『お前の分もやっておいたからな』って相談もなくやってくれていた。


「まあ、わからないでもないわね……あの人、仏頂面なだけで中身は優しい人だし」


 そうそう。

 愛想がないだけ。


「よくそんな人と仲良くなれましたね。レスターさんの方から声をかけてきたんですっけ? 正直、意外です」


 小さいグラスで白ワインを飲んでいるウェンディちゃんが聞いてくる。


「あ、私もそれが気になる。あのレスター先輩がナンパみたいなことをするのが想像できない。これが同じクラスならまだわかるんだけど、クラスどころか学年すら違うじゃないの」


 うーん……


「そんな大層なものじゃないよ? 最初は図書館で上の段の本を取ってくれたのがきっかけだし」


 私は背が高くないので上の段に手が届かなかったのだ。


「あ、知ってる。恋愛小説の導入だ」

「ひゅー、ひゅー」


 確かに王道と言えば王道だけども。


「それで? それで?」


 ニーナちゃん、こういう話題が好きだよね……


「取ってもらった本が錬金術関係の本だったから『自主学習か?』って聞かれて『そうです』って答えた」

「その時から真面目な御二人だったんですね……」


 真面目でいいじゃん。


「私達は支えてくれる人も頼れる人もいないから自分達の力で切り開くしかないんだよ」


 孤児だもん。


「それはとても立派なことだと思います。それがきっかけで仲良くなったんですか?」

「どんな感じ? どんな感じ?」


 ニーナちゃんがワインをぐいーっと飲み、聞いてくる。

 完全にこの話を肴にしている。


「いや、本当にたいしたことじゃないよ? ちょっと話をしたら同じ錬金術を学ぶ孤児だったから先輩が気にかけてくれただけ。勉強を教えてくれたし、その他にも奨学金の裏技的なものも教えてくれた」


 というか、やってくれた。


「ほー……レスター先輩、その時から完全に囲ってるじゃん。そんなにエルシィが可愛かったのかな?」

「それはそう」


 可愛いから。


「あなた、そこだけはブレないわね……昔からずっとそう」


 可愛いもん。


「先輩も可愛いなって言うよ」

「あなたが可愛いですよねって聞いたからじゃない? それ以外に回答がないでしょ」


 まあね。


「ニーナちゃんはー?」

「私はないってば……」

「でも、リアルな話、カルロ先輩が造船関係の職に行ったってことはあの店はニーナちゃんが継ぐんでしょ? お婿さんは?」


 絶対にいるでしょ。


「うーん、どうだろ? その辺はまだ話し合ってないんだよね。父さんもまだ若いし、兄さんがそっちの道をやめて帰ってくるかもしれない。そんな大層な店じゃないし、どうとでもなれって感じかな?」


 そんなものなのかな?

 まあ、カルロ先輩も錬金術師だし、造船関係の仕事をしていたとしても、いつでも店に戻れるとは思うけど。


「まあ、ニーナちゃんも可愛いし、すぐに見つかるか」

「もを付けるのがあなたらしいわ。というか、私よりあなた達よ。よく国を出たわね」


 それか。


「やっぱり孤児はねー。差別的なあの国ではちょっと……」


 先輩なんてエリクサーを永遠に作り続ける機械にされそうになったし。


「あのさ、よく国から出られたよね……他国出身の私達ですら、国に帰る時にかなり強引に引き留められたよ。良い職場を紹介するからって。せっかく育てた人材を流出させたくなかったんだと思うけど、毎日のように家に来るのはやめてほしかったよ」


 すごいね……

 さすがはイラド。


「結局、どうしたの?」

「父が危篤って言って、強引に帰ったよ。さすがに強制的に止める権利はないからね」


 外国人だもんね。

 ニーナちゃん達がターリーの大使館に泣きつけば外交問題になる。


「そっかー」

「あなた達は? 宮廷錬金術師だよね? 引き留めがすごそうなんだけど……」


 ここは正直に言うべきところだね。


「もうイラドには帰らないって言ったでしょ。私達は本当の意味で逃げてきた。駆け落ちだね」

「やっぱり……駆け落ちはスルーするけど、宮廷錬金術師になったのに店を出すために旅に出るっておかしいもの。なんかトラブルがあって国を出たんだろうなーって思ったよ」


 まあ、わかるよね。

 宮廷錬金術師はそれほどまでに上級の職業であり、憧れなのだ。


「どうしても貴族がね……私や先輩って結構な給料をもらってたけど、同期の貴族の半分以下だったよ」


 悲しいのはそれに対して不満すら思わなかったこと。

 あそこの国に生まれ育つと、そういうものって認識してしまうのだ。


「イラドらしいわ……まあ、何のトラブルかは聞かないけど、国を出て、正解じゃない? あなた達は自分達の力で稼げるし、今日の成果だってすごかったでしょ」


 確かに大金をもらえた。

 今日だけでも宮廷錬金術師時代の給料を超えている。

 まあ、先輩と合わせれば低いけど、それでも明日は超えるだろう。


「もし、お店を開いたら遊びに来てよ」

「そうね。どこになるのかはまだわからないでしょうけど、観光がてら遊びに行くわ」

「そうして」

「ねえねえ、いつからレスター先輩のことが好きだったの?」


 この子、本当にこの手の話題が好きだなぁ……


「最初から。かっこいいもん」

「本を取ってもらってドキッて感じ?」

「ひゅー、ひゅー」


 ウェンディちゃん、口笛はいいけど、飛ばないで。

 お隣の老夫婦が固まっちゃってるよ……


お読み頂き、ありがとうございます。

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