第069話 飛び道具
門を抜けた俺達は道を歩いていく。
周りは草原だが、右を見ると、海が広がっているし、道の先には森が見えている。
森までの距離は1キロもないだろう。
「ニーナ、森って魔物が出るのか?」
「んー? もちろん、出ますよ。というか、魔物が出ない森はないと思います」
そうなんだ……
「さっきの兵士との会話的にお前もよく採取に行くのか?」
「行きますね。やっぱり市場で買うより自分で採取した方が儲かりますので」
それはわかるが……
「護衛とか付けているのか? 危ないだろう」
「森の奥に行く際は冒険者や知り合いの兵士に頼むことはありますが、基本的には一人ですよ。森の手前はそんなに強い魔物は出てきませんし、逃げればいいだけです。それにイラドは庶民が魔法を使うことを禁止していましたが、ターリーにそんな法律はないです。私も簡単な攻撃魔法は使えますし、森の浅いところに出てくるようなゴブリンやコボルトなら倒せます」
あ、そうなんだ。
「お前も魔術師だったのか」
「それを名乗れるレベルじゃないですけどね。まあ、この辺りは兵士が多いですし、強い魔物は出ないんですよ。だからレスター先輩もエルシィも安心していいですよ」
ちょっと安心。
どうしても前世にいなかった魔物はちょっと身構えてしまうのだ。
俺達がその後も歩いていくと、森に到着した。
森は深そうだが、道があり、馬車の車輪の跡が見えることから普段から使われていることがわかる。
「この森の先は何があるんだ?」
「町がありますよ。船を使うことが多い国ですけど、内陸部はやはり馬車です。それと飛空艇はあまり利用しない国ですね。王都と北部の町に空港があるだけです」
船の国だから飛空艇が嫌いなのかな?
「結構お国柄が強い国だな」
「イラドも相当ですよ」
まあな。
「ニーナちゃん、船に使う木ってどれ? この辺の木でいいの?」
エルシィがそう聞きながら1本の木をパンパンと叩く。
「あ、いや、ちゃんと種類があるの。今、エルシィが触っている木は湿気に弱い特徴があるからダメ。良いのは湿気に強くて丈夫なことなのよ。えーっとね……あれかな?」
ニーナが指差したのはエルシィが触っている針葉樹ではなく、広葉樹だ。
「これか?」
ニーナが指差している広葉樹に触れてみた。
幹は太く、頑丈なような気がする。
「はい。その木ですね。もうちょっと奥に行けばいっぱい生えてます」
そう言われて森の奥を見ると、同じような広葉樹がちらほらと見える。
「なるほど。確かにあるな」
「この辺りはこういう木が多いんですよ。北の方にも森があって木材がいくらでも採れるんです。そういうわけでじゃんじゃん伐採しちゃってください」
こうやって森林破壊は起きるんだよな。
「そこまでせんが……うーん、この木を伐採か」
でかくないか?
幹も太いし、高さも10メートルはあるぞ。
「ニーナちゃん、魔法がない場合はどうしてるの?」
「そりゃ斧とかじゃない? 私も詳しくは知らないけどさ」
斧でこの木を伐採するのは大変だろうな。
「ウェンディ、どうやるんだ?」
「そうですね。やってみましょうか。ただ、木が倒れると危険なので少し離れましょう」
俺達はウェンディの指示通り、森から離れていく。
そして、木の高さ以上まで距離を取った。
「このくらいでいいか?」
「ええ」
ウェンディは頷くと、エルシィの腕の中から脱出し、ふよふよと浮き出した。
「うーん、やっぱり飛んでるし、人形にしか見えない……」
まだ慣れてなかったのか……
「ニーナさんはエアカッターを使えますか?」
ウェンディがニーナに聞く。
「私? 使えないよ。簡単な火魔法とか水魔法くらいしか使えないし」
俺達と一緒だな。
「では、一緒に覚えましょう。エアカッターは今回のように木を切ることに使えますが、明確な攻撃魔法です」
「殺傷能力は高いだろうしな」
名前からしてそうだ。
「はい。間違っても敵じゃない相手に使ってはいけません。魔力のコントロールには特に注意してください。それではいきます」
ウェンディがさっきの広葉樹に向けて手を掲げた。
すると、ウェンディの柔らかお手手に魔力が集まっていく。
「おー……」
「え? この人形ちゃん、本当に魔法を使うの?」
ニーナが驚いている。
「使い魔ですもん。手に魔力を込めたら空気を動かし、鋭い風をイメージし、魔力を放ってください。こうです」
ウェンディがそう言うと、手の周辺からびゅんっという音が聞こえた。
大気を切り裂くように何かが飛んでいくと、前方の木が手前に倒れてくる。
そして、大きな音を立てて倒れると、森から鳥達が一斉に飛び立った。
「すごいですね」
「怖い人形ちゃんね」
「これは確かに殺傷能力が高いな」
あっという間にあんなに太かった木が切れた。
「これがエアカッターです。初歩魔法の1つですが、このような威力が出ます」
これが魔法使いが恐れられる理由だろう。
初歩魔法でもこの威力なのだ。
前世で考えればその恐ろしさがよくわかる。
「やってみるか」
「どうぞ。あなた方錬金術師はあまり魔法に馴染みがないでしょうが、魔法使いよりも魔力のコントロールがお上手のようですのですぐでしょう」
倒れている木の1本の枝に向かって手を掲げ、狙いを定める。
そして、先ほど、ウェンディがやっていたように手に魔力を集め、鋭い風をイメージした。
「いくぞ……」
そう言って魔法を放つと、びゅんっという音が聞こえ、あっという間に狙った枝が宙に浮き、地面に落ちた。
「先輩、すごーい!」
「おー、切れましたね!」
うーん……
「お前らもやってみ? 簡単だぞ」
ものすごく簡単だ。
火魔法や水魔法の方が難しいくらいだと思う。
「へー、じゃあ、やってみます」
その後、エルシィ、ニーナとエアカッターを放ったのだが、ちゃんと狙った枝を切ることができた。
俺達自身はこれでかなりの攻撃力を持ったことになる。
旅をするうえで心強いと思った反面、イラドが魔法の習得を貴族のみという風に制限した理由がよくわかった。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




