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宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~  作者: 出雲大吉
第2章

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第067話 感謝、感謝


 部屋は結構広く、20畳くらいはあり、温かみのある部屋だ。

 老舗ということでけっして新しくはないが、清潔感があり、居心地は良さそうだった。

 さらには窓が大きく、海を一望できるため、眺めはかなり良い。


「良い部屋ですね。1万ゼルは安いですよ」

「確かにな。それでいて、サービスまでしてくれた。この町の人間は皆、良い人だな」

「ニーナちゃんやカルロ先輩もですけど、明るい国民性なんでしょうね」


 多分、そうだろう。


「ふう……ちょっと疲れたな」


 そう言って窓際のテーブルにつく。


「そうですね。良い町なんですけど、坂道がちょっと……」


 エルシィもテーブルについた。

 なお、ウェンディは部屋の中をふよふよと飛んでいる。


「だよな。しかし、苦労するだけの価値はある眺めだ」

「はい」

「船が良いですよね。漁船や大型船といった色んな船が見えます」


 ウェンディが窓に張り付いた。

 いつもの光景である。


「夕食まで時間があるし、眺めを楽しみながらオイルや防腐剤を作ってみるか」

「そうしましょう」


 エルシィが頷き、魔法のカバンから材料とレシピを取り出す。


「まずはオイルか。この木の実から抽出するんだったな」


 籠の中にある黒いクルミみたいな木の実を手に取った。


「抽出は特に気を付けることはないようですね。不純物を取り除くっていう基本的なことが書いてある程度です」


 エルシィがレシピ本を読みながら説明してくれる。


「学生でもできるな」

「ですねー」


 楽勝だ。


「あのー、学生でもできる作業で1000ゼルの木の実が5000ゼルのオイルになるんですか?」


 作業を始めると、ウェンディが聞いてくる。


「それが錬金術師だ。これまで皆、錬金術師は儲かるって言ってただろ。錬金術師は職人なんかが何日もかかる作業を一瞬でやってしまうんだよ。錬金術師自体の絶対数も少ないし、特殊な技能だからまず職には困らないんだ」

「ほー……そういうことですか。エリクサー屋さんはどうですか?」


 ないわ。


「巨万の富を得られるだろうな。まあ、すぐに誘拐されるか、殺されるだろうけど」


 ありすぎる力は脅威にしかならないのだ。


「そうですか。しかし、そんなに儲かるなら最初からお店を出そうとは思わなかったんですか?」

「店はそう簡単なものじゃない。俺達は錬金術師として優秀かもしれないが、技術者にすぎないし、経営者じゃないんだ。もちろん、前世でもそういう経験はない。この旅は永住の地探しだが、それと同時に勉強でもある。ポードのイレナも今回の木材の加工も非常に勉強になっている」


 商売は違う世界なのだ。


「難しいものなんですね」

「だろうな。だからこそ、この経験が役に立つんだ。お前もやってみるか?」

「私はいいです。見てるだけにします」


 窓に張り付いているくせに……


 俺とエルシィはその後も木の実を取っていき、オイルを抽出して専用の容器に入れていく。


「将来、自分達のお店を持ったらこうやって作業をするんですかね?」

「多分な。誰かに命じられるわけでもなく、自分達で考えて物を作るのも良いものだ」

「本当ですよね。一緒に頑張りましょうね」

「ああ。適度にな」


 これが大事だ。


 俺達はその後も作業を続けていったが、18時前にはすべての木の実をオイルに変え終わったので片付けをする。

 そして、ちょうど片付けが終わった辺りで女将さんが夕食を持ってきてくれた。


「おー、美味しそうですね!」

「魚のようですけど、これは何でしょう?」

「ムニエルだな」


 白身魚のムニエルとパン、それにサラダとポタージュスープが付いている。

 もちろん、サービスのワインもあった。

 白身魚のムニエルは表面がこんがりと香ばしく焼き上がり、見ているだけで美味しそうだ。


「食べ終わったら部屋の外に置いておいてくれればいいから。ワインのおかわりなんかが欲しかったら下で注文してね。それじゃあごゆっくり」


 女将さんがそう言って部屋から出ていったのでテーブルにつき、それぞれのグラスにワインを注いでいく。


「「「かんぱーい」」」


 俺達はグラスを合わせ、ワインを一口飲む。

 時刻は18時を回っているため、夕日が海の向こうに沈み始めていた。

 そして、そんな夕日が海を茜色に染めている。


「すごいですね」

「綺麗です……」

「これが何よりの観光スポットなんだろうな」


 上の広場で見るのも綺麗だろうが、ワインと食事を楽しみながら部屋で見るのも一興だろう。


「良いですねー」

「お魚も美味しいですよ」


 もうウェンディは食べ始めていた。


「そうか。俺達も温かいうちに食べよう」

「はい」


 俺達も白魚のムニエルを食べることにする。

 ナイフを入れると、ふっくらとした白身が現れ、一口食べればバターのコクとレモンの爽やかさが口の中に広がった。

 そして、白身魚の繊細な旨みを引き立てており、非常に美味しい。


「美味いな」

「魚って美味しいですよね」


 そうだな。

 そして、イラドの港町ではこういう料理を食べられないんだろう。


「ワインとも合うし、最高のディナーだ」

「ホントですよー。来て良かったですねー」


 確かにな。

 あの時、ニーナに会ってなかったらここまでの風景や料理を味わえなかったかもしれない。

 出会いというか、再会に感謝だ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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