第063話 何だ、あれ?
クラーラを待っている間、右の方のボードに貼ってある依頼票を見てみる。
「本当にあまり仕事がないな」
依頼票は10枚しかない。
他の町のギルドは知らないが、明らかに少ないだろう。
「港の清掃、漁師の手伝い……あ、先輩、ポーションの納品がありますよ」
確かにあるが、Dランク以上を納品して1000ゼルだ。
「ニーナ、お前の店ならいくらで買い取る?」
一緒に依頼票を眺めているニーナに確認する。
「1200ゼルです。伝手があるなら直接売った方が儲かりますよ。レスター先輩やエルシィほどの腕があれば伝手もいらないかもしれませんね」
普通は得体の知れない人間から薬であるポーションは買い取りづらい。
しかし、俺達はぱっと見でも上質とわかるBランクでもAランクでも納められるからな。
「ギルドで仕事をすることはないかもな……」
「錬金術師は貴重ですし、儲かりますからね。レスター先輩が望めばこの町の造船関係の仕事に採用試験なしで就けますよ」
それはお断り。
「レスターさん、レスターさん。ここにゴブリン退治の依頼がありますよ」
ウェンディがふよふよと浮き、とある依頼票を指差した。
「せん。というか、1匹500ゼルじゃないか。誰がするんだよ」
時間のことを考えてもポーションを売った方が遥かに儲かるわ。
「先輩はエリートさんなんだからそんなことしないの……先輩、やっぱり木材に期待ですよ」
ウェンディを掴んで抱えたエルシィが言う。
「そうだな……ニーナ、頼むわ」
「ええ。職人さんを紹介しましょう。あ、戻ってきた」
ニーナが言うようにクラーラが戻ってきた。
「お待たせ。じゃあ、これが冒険者カードね。こっちがかっこいい旦那さんの分でこっちが可愛らしい奥さんの分」
クラーラがそう言って俺とエルシィにカードを渡してくる。
カードは白いカードであり、表には名前が書いてあるだけであり、裏には何も書いてなかった。
「シンプルだな」
「見た目はね。でも、特殊な魔法が書いてあってギルドで情報を読み取れるようになっているの。だから複製はできない。失くさないようにね。2枚目からは5万ゼル取るから」
それは失くしたくないな。
「わかった」
「仕事する?」
クラーラが依頼票を見ている俺達を見て、聞いてくる。
「いや、ニーナに木材の職人を紹介してもらうつもりだ」
「また幽霊冒険者かー。まあ、ニーナが連れてきたからそうだと思ったけどね」
幽霊部員みたいなことだろうな。
「そういうのは多いのか?」
「ぶっちゃけて言えばそういう人の方が多いです。ニーナもニーナのお兄さんもですしね」
2人はそうだろうな。
俺達と同じ錬金術師であり、職を持っているし。
「それっていいのか?」
「さあ? 末端の私が考えることじゃないです」
それもそうか。
「じゃあ、クラーラ、私達は行くね。お仕事頑張って」
「はーい。あ、せっかく帰ってきたし、またご飯行こうよ」
「そうね。また連絡するわ」
ニーナとクラーラがお互いに手を上げると、ギルドを出る。
そして、来た道を引き返していき、坂になっている大通りまで戻ってきた。
「次は職人のところか?」
「はい。ちょっとだけ降ります」
ニーナがそう言って坂を降りていったのでまた坂かと思いながらついていったのだが、10メートルもせずに立ち止まった。
「ここか?」
坂の大通り沿いに何かの店があり、看板には【サッキーニ資材店】とあった。
「はい。ウチと付き合いのあるお店ですね。というか、親戚です。お爺ちゃんのお兄さんのお子さんですから……えーっと?」
「いとこおじだな」
「それです」
ニーナが頷くと、扉を開け、中に入った。
俺達も続くと、店の中はさっきの冒険者ギルド同様に受付しかなく、特に商品も並んでいない。
そして、受付には眼鏡をかけたおじさんが座っており、書き物をしていた。
「おじさーん」
「ん? ニーナか。どうした?」
険しい顔で書き物をしていたおじさんだったが、ニーナの顔を見て、笑顔になる。
「ちょっとお仕事の話。実はこちらの2人は私の同級生と先輩なんだけど、木材の採取、加工の仕事に興味があるらしいの」
「同級生と先輩? イラドか?」
おじさんが俺達をじーっと見てくる。
「そうそう。ご夫婦なんだけど、こっちの可愛い子が私の同級生でかっこいい方が兄さんの同級生」
「へー……なんでまたこんなところにいるんだ?」
「新婚旅行兼どっかで店を開きたいからその場所探しとお金貯めだってさ。2人共、優秀な錬金術師なんだよ」
「なるほどな。確かにこの辺りで手っ取り早く儲かるのはウチだろう。しかし、大変だぞ」
大変なのか?
まあ、木材の加工は大変か。
木だしな。
「その辺の話を聞きたいと思ってきたんだ」
2人の話に入る。
「ふーん……この町から西の方には森林地帯があるんだ。そこで良い木が採れるんだが、まず木を切らないといけない。そこから加工し、町に持って帰る。できるか?」
うーん……
「ウェンディ、木を切れるか?」
「木を切るのは簡単ですよ。エアカッターで切れます。難しい魔法じゃないですし、優秀なレスターさんとエルシィさんならすぐに覚えられるでしょう」
エルシィの腕の中にいるウェンディが頷きながら答えると、おじさんが驚いた顔でウェンディを凝視する。
そして、ウェンディを指差しながらニーナを見たのだが、ニーナは何も言わずに首を振った。
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