第055話 絶対にご飯目当てだな
町中を歩いていくと、大きな船がある所に到着する。
船にはタラップがかけられており、中に入れるようになっているが、その前には受付が見え、人が並んでいた。
「あそこか」
「はい。行きましょう」
俺達は受付まで行くと、並んで順番を待つ。
そして、しばらく待っていると、俺達の順番になった。
「こんにちは。こちらはエルディア行きですが、乗られますか?」
若い女性の受付嬢が笑顔で聞いてくる。
「はい。3等室と2等室を1つずつ」
ニーナが代表して答えた。
「3等室と2等室ですね。2等室はこちらのお客様方ですか?」
受付嬢が俺とエルシィを見てくる。
「ええ。新婚さんなんで右側の部屋をお願いします」
右側?
新婚なのと何か関係があるんだろうか?
「かしこまりました。まだ空いていますのでそちらをお取りします。3等室のお客様は?」
受付嬢が今度はニーナを見た。
「私は左側でいいです。エルディアの人間なんで」
「では、そちらの方をお取りします。それでは3等室のお客様が1万ゼル、2等のお客様が2名分で4万ゼルになります」
受付嬢がそう言うので4万ゼルを支払う。
ニーナも1万ゼルを支払った。
「それではこちらが客室の鍵になります。出発は10時になりますが、12時、18時、朝の9時に食事をお部屋にお持ちします。時間をずらしたい場合や船内の食堂をご利用の場合などございましたら船内にいる係の者にその旨を伝えてください。その他にも何かございましたら気軽に係の者にお声がけください。それでは良い旅を」
受付嬢はにっこりと微笑み、頭を下げたのでカウンターにある鍵を受け取り、船に向かう。
「随分とサービスが良いんだな」
「さっき言った飛空艇や列車への危機感ってやつですよ。ターリーのこういう大型客船はどこもサービスが良いんです。レスター先輩達もまた次の国に行かれる際は船で行くのも良いかもしれませんよ」
そういう手もあるか。
海に面している国なら船でも行ける。
船の良いところは飛空艇と比べて安価なところだ。
それでいて、サービスも良いなら考えても良いかもしれない。
「悪くないな」
俺達は歩いていくと、船にやってきたのでタラップに乗り、中に入った。
船の中は飛空艇とそう変わらない。
「先輩、私達の部屋はどこですか?」
エルシィが出入り口の正面にある船内図を見ながら聞いてくる。
「えーっと、208号室だな……ここだ」
208と書かれた部屋があったので指差した。
ニーナと受付嬢が言っていた通り、船の進行方向の右側の部屋になっている。
「ニーナちゃんは?」
「私は118号室。ここだね」
ニーナが指差した部屋は俺達とは逆で左側の部屋だ。
「なあ、右と左が関係あるのか?」
どっちも一緒のような気がするぞ。
「この船は川を下っていくんですけど、一回海に出るんですよ。そこからエルディアの町に向かうんですけど、エルディアは右側にあるので到着する時に船から町を一望できるんです。エルディアは高い丘の斜面に町が作られているので町の高台から海を見ても綺麗なんですけど、逆に海から町を見ても綺麗なんですよ。だから観光客は右側の個室を取るのが裏技なんです。町を出る時も同様に町を見ることができる方の部屋を取った方が良いですよ。どうせ料金は変わらないので」
なるほどな。
それなら見える方の部屋を取った方が良いわ。
10時出発なのにちょっと早めに来たのはこういう理由があったからだろう。
「ニーナちゃんは左でいいの?」
「もう見飽きた。右側は他の観光客に譲るわ」
現地の人間だもんな。
それに多分、何度も王都とかに仕入れに行って、船を利用しているんだろう。
「そっかー」
「まあ、楽しんでよ。あ、あとで部屋に行ってもいい? お邪魔なら遠慮しておくけど」
「来てよー。せっかくだし、話とか聞きたいし」
俺もエルディアのことを聞きたい。
「じゃあ、適当な時間に行くわ。またあとでね」
ニーナはそう言って奥の方の通路に向かって歩いていった。
「俺達も行くか」
「そうですね」
「208号室はあっちです」
ウェンディが右側の通路を指差したので通路を歩いていく。
そして、部屋の番号を確認していくと、208号室と書かれた扉を見つけたので鍵を開け、中に入った。
部屋の中は10畳くらいの個室であり、ベッドやお茶セットが置かれた棚がある。
さらには奥に外を見られる窓があり、テーブルも置いてあった。
「良い部屋だな」
「列車や飛空艇の狭い個室とは違いますね」
これで料金が4万ゼルなのだから飛空艇よりこっちの方が良いように思える。
もちろん、スピードは段違いだろうが。
「山しか見えませんね」
ウェンディは早速、窓に張り付いていた。
「まだそんなものだろ。出発までまだ30分以上あるから待とう」
「あ、お茶淹れまーす」
「悪いな」
エルシィが棚の方に行き、お茶の準備を始めたのでテーブルにつく。
座っていると、窓から景色が見えるのだが、町並みとその奥にある森や山が見えるだけだった。
「確かに列車と変わらんな」
「でしょー? 海はまだかなー」
ウェンディは窓に張り付いたまま楽しそうにしている。
「いつも窓に張り付いているが、楽しいか?」
「楽しいですよ。レスターさん達に同行して良かったです。どんな景色も新鮮ですし、ご飯も美味しいです。もう天界には戻れませんね」
「戻らなくていいのか?」
天界とやらで仕事とかないんだろうか?
「私はレスターさんの行く末を見守る使命があるのです。神のせいでレスターさんは国を追われてしまいましたし、これは大天使としての責務です」
ホント、神1人のせいにするんだな。
そのうち怒られるんじゃないか?
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