第048話 (/ω\)
エリクサーの瓶をコーティングしてからさらに数日が経った。
この数日は暇なのでエルシィと共に錬金術の勉強をしていた。
なお、ウェンディは変わらずに窓に張り付いている。
「レスターさん、今、どの辺を走っているんですかね? 所々で川を渡っていますけど」
ウェンディが窓に張り付いたまま聞いてくる。
「すでにゲイツは抜けて、ターリーに入っているぞ」
「え? そうなんですか? では、すでに目的地に着いたってことです? 海は?」
ウェンディがこちらを向いた。
「ターリーも大きい国だからな。今は北部だろう。今日の夕方にはターリーの玄関口と呼ばれるヤークの町に到着する。そこからは相談だな」
「相談ですか?」
「どこに行くかだ。海を見に行くってことになってるが、ターリーは海に面した国だから選択肢が多い」
他にも海に面している国は多いが、ターリーは南部にあり、気候が穏やかなため、特に人気なのだ。
「なるほどー。エルシィさん、どうですか? あなたは詳しそうです」
ウェンディが聞くと、エルシィが教材を片付け、旅行雑誌を取り出した。
道中の駅で食事を買った時に一緒に買ったものだ。
「人気なのは王都とエルディアかなー? どっちも港町なんだけど、綺麗らしいよ。昔、雑誌で見たことがある」
エルシィ、そういう雑誌が好きだな。
「ふむふむ。その2つですか。でも、王都は避けた方が良いのでは?」
「そうかもねー。先輩、どうしますか?」
エルシィが聞いてくる。
「王都を避けた方が良いのは確かだな。その辺も含めてヤークで情報集めだ。玄関口っていうくらいだし、そういう情報も集まっていると思う。まあ、ずっと列車生活だったからまずは休みたいわ」
最初は楽しかったが、さすがに10日以上も列車で寝ていると、揺れないベッドで寝たくなってきた。
「確かにそうですね」
「まあ、私もそろそろ町を見たいですね」
ずっと楽しそうに窓の外を見ていたウェンディですらこれだからな。
はっきり言えば俺とエルシィはとっくの前に飽きている。
最初は楽しかったが、さすがに長すぎた。
俺達はパンフレットを眺めながら話をし、到着を待つ。
そして、15時を過ぎたあたりで大きな川が見えてきた。
「これがフィルナ川ですねー。ターリーを縦断する大陸最大の川です」
エルシィが旅行雑誌を見ながら説明する。
「ほー……そろそろヤークに着きますかね?」
「そうだね。先輩、片付けをしましょうか」
10日以上も同じところで生活していたため、個室の中はかなり自分達が生活しやすいように変えていたり、物を出していたので片付けないといけない。
「そうだな」
「私も手伝います」
俺達は3人で片付けをしていき、それぞれの魔法のカバンや空間魔法に収納していく。
そして、すべての荷物を収納し終えると、列車が減速し始め、ついには停車した。
「着きましたね」
エルシィがウェンディを抱える。
「ああ。降りよう」
俺達は個室を出ると、列車から降りた。
駅のホームは地下にあるようで灯りが点いているのだが、少し暗い。
そんな駅のホームを抜けると、階段を昇り、駅を出る。
すると、目の前には大きな川が見えた。
「おー、すごいですね!」
「川一つにしても上から見るのとは違います!」
2人が興奮しているようにすごいと思う。
川は幅が100メートル以上もあり、穏やかな流れのようだが、かなり大きく、圧倒されるように感じた。
こちら側の左の方に町が広がっているのだが、対岸にもこちら側と同じく、町が見えている。
さらには両岸に多くの船があり、町と町を行き来している船も見えていた。
「どっちがヤークの町なんですか?」
ウェンディがエルシィに聞く。
「どっちもだね。今、私達がいるのが西岸の町であっちが東岸の町。昔は別の町だったらしいけど、今はどっちもヤークの町ってなってる」
エルシィが旅行雑誌を読みながら説明し始めたので腕の中にいるウェンディを受け取った。
「仲が悪そうだな」
そんな気がする。
「どうですかね?」
「レスターさん、これからどうするんですか?」
ウェンディが聞いてくる。
「とりあえず、宿探しだな。エルシィ、旅行雑誌に何か書いてないか?」
「うーん……宿屋情報は載ってないですね。というか、ヤークに関しては渡し船がおすすめとしか書いてないです」
おすすめだとは思う。
乗ってみたいって思ってるし。
「それだけ?」
「はい。1ページしかないですしね」
そんなに観光名所じゃないんだろうか?
「うーん……まあいいか。とりあえず、宿屋を探そう」
「あ、だったら駅員さんに聞いてみますよ」
エルシィはそう言うと、駅に戻るために階段を降りていった。
「レスターさんは行かないんですか? いっつもエルシィさんが人に聞いてますけど」
「俺はそういうのが苦手だと言っただろう。別に口下手というわけではないが、人に好かれるタイプじゃないんだ」
これは前世からそう。
だから容姿とかではなく、性格や内面から出るオーラが悪いんだと思う。
「そんなもんですかねー? あまり笑わないからでしょうか?」
それはあると思うな。
いつも笑顔のエルシィと違い、楽しいことがあっても上手く笑えないのが俺だ。
「まあ、俺の役目は話が長くなりそうになった時やエルシィが絡まれそうになったら話を中断させることだな。不機嫌オーラを出すのは得意なんだ」
前世からそれで孤立していたような気がするが。
「貴族の方にもですか?」
「さすがにそれは危ないし、貴族に睨まれるようなことはしない。俺達と同じような庶民の話だ」
身分もそうだが、目上の人間にはしない。
「ただいまー。何の話ですかー?」
エルシィが戻ってきた。
「レスターさんが不愛想だから人に好かれないって話です。相談を受けているところですね」
そうだっけ?
「えー、先輩はそのままで良いよー」
「いや、お店経営をするんなら最低限の愛想も大事では?」
「私とウェンディちゃんがいるから大丈夫じゃん」
うーん、俺のことを話しているのにまったく俺が入れる気がしない会話だ。
「そうですかね?」
どうでもいいけど、ウェンディはいつまで下界にいるんだろうか?
居着く雰囲気がものすごくしているが……
「そうだよ。愛想の良い先輩はもう先輩じゃないし」
「これが良いですか?」
腕の中にいるウェンディが指差してくる。
「かっこいいじゃん。できる大人って感じ」
国から逃亡したできる大人ニートですまんな。
「ふむふむ……」
ウェンディが見上げてきた。
「何だ?」
「私は一緒に川を見て、そっと手を繋いでくれる男性が良いと思いますよ」
そっと抱いてやってるだろ。
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