第044話 取引終了
翌日、少し早めに起きた俺達は朝食を食べ、準備をする。
「ポーションもあるし、キュアポーションもある……よし、行くか」
「ええ。今夜は寝台列車です」
「楽しみですね」
2人が楽しそうにしていると、ノックの音が部屋に響いた。
『そろそろ行きましょー』
準備を終えたイレナが扉越しに声をかけてくる。
「ああ。今行く」
俺達は部屋を出ると、イレナと合流し、宿をチェックアウトした。
そして、ラック商会へと向かう。
ラック商会に着くと、まだ9時過ぎだというのに多くのお客さんで賑わっており、人気店なんだなと思った。
「イレナ様、お待ちしておりました」
昨日の女性が出迎えてくれる。
「納品に来たわ。商会長さんは?」
「上ですね。どうぞ、こちらへ」
昨日と同じように女性が案内してくれ、2階に上がる。
そして、応接室に入ったのだが、商会長のダリウスの他に3人の男性が待っていた。
「おはようございます」
ダリウスが挨拶をして、頭を下げると、他の3人の男性も頭を下げる。
「おはよう。そちらの3人は?」
イレナがダリウスに聞く。
「今回の取引は数が数なもので応援を呼んだのですよ。早速ですが、始めましょう。昨日言った通り、Aランクポーションが10万ゼル、Bランクポーションが5万ゼル、Cランクポーションが3万ゼルでよろしいですか?」
「ええ。それでお願い」
イレナが頷いた。
「では、商品を出してください」
「ええ。お願い」
イレナが頼んできたので魔法のカバンからポーションを取り出していく。
それを3人の男性が鑑定していき、運搬用に台に並べていった。
そして、かなりの時間がかかったが、150個のポーションを取り出し、3人の男性も鑑定を終える。
「商会長、確かにCランクが80個、Bランクが60個、Aランクが10個ありました」
「すごいですよ。CランクとBランクはギリギリそのランクってだけでほぼBランクとAランクです」
調整して作ったものだからな。
「わかった。やはり実力のある御夫婦のようだ。イレナさん、確かに150個あり、ランクもおっしゃっていた通りでした。代金を支払います」
ダリウスはテーブルの上に札束を置いた。
札束は640万ゼルあるため、かなり分厚い。
「確かに。私との取引は以上よ」
イレナがそう言うと、男性3人が台ごとポーションを外に出していった。
そして、すべての台を外に出すと、代わりの台と共に部屋に戻ってくる。
「良い取引でした。それでは次にキュアポーションの方に参りましょう。何個作りましたか?」
ダリウスが聞いてくる。
「60個だ」
「それは素晴らしいですね。こちらも昨日言った通り、10万ゼルでよろしいですね?」
「ああ」
大儲けだ。
「では、そちらの方も出してください」
「わかった」
今度は魔法のカバンからキュアポーションを取り出していく。
それを先程と同じように3人の男性が鑑定していき、運搬用に台に並べていった。
そして、こちらもそこそこの時間がかかったが、60個のキュアポーションを取り出し、3人の男性も鑑定を終える。
「商会長、Bランクのキュアポーションが56個、Aランクが4個ありました」
「そういえば、ランクを指定していませんでしたね……」
ダリウスが手を額に当て、考えだす。
「代金は10万ゼルのままで良い。キュアポーションに限って言えばCランク以上はさほど変わらん。調整が面倒だったからBランクになっただけだし、たいしたことじゃない」
手間暇は一緒どころか逆にCランクに落とす方が面倒なのだ。
「そうですか……本当に素晴らしい錬金術師のようですね。どうです? ウチと契約しませんか? 月に100万ゼルはお約束しますよ? もちろん、御夫婦で雇いますし、それぞれに100万ゼルを支払います」
宮廷錬金術師の時の2倍か。
すごいわ。
「遠慮しておく。俺達は旅をしているんだ」
「左様ですか……もし、その気になったらいつでもお声がけください。いつでも歓迎いたしますので……それでは代金を支払います」
ダリウスが残念そうにそう言うと、テーブルに札束を置いた。
これまた分厚い600万ゼルの札束である。
「確かに」
札束を受け取ると、魔法のカバンに入れる。
「それでは取引は以上になります。非常に良い取引となり、嬉しい限りです」
「こちらもね。また機会があればお願いしたいわ」
やめとけ。
「ぜひとも」
「商会長さん、ちょっと数分でいいからこの部屋を貸してくれない? こちらもこの2人と精算をしたいのよ」
まだ金をもらってないからな。
「どうぞ。終わったらそのまま出ていってもらって構いません」
「ありがとう」
「いえいえ。それでは私達は失礼します。今後とも良しなに……」
ダリウスと男達はキュアポーションを運んで部屋の外に出ていった。
そして、この場には俺達だけが残されると、イレナが対面に座る。
「無事に取引は終わったわ。あなた達のおかげでかなりの儲けが出た。ありがとう」
「気にするな。俺達もかなり儲けられた。これからの旅も随分と楽になったし、夢に近づいた」
「ありがとー」
「どうもです」
エルシィとウェンディが礼を言う。
「じゃあ、代金を払いましょう。Cランクを1万ゼル、Bランクを1万5000ゼル、Aランクを3万ゼルで合計で200万ゼルね。正直、こちらの儲けからしたらかなり少額と言っていいわ」
イレナがそう言って、札束をテーブルに置く。
「気にするな。それはお前の功績だし、キュアポーションの方でも儲けられたから問題ない」
ポーションにしても、キュアポーションにしても破格すぎる値段だ。
「そう? そう言ってもらえると気が楽になるわ。それとこれは宿代ね」
イレナが立て替えておいた宿屋の料金をテーブルに置いた。
「どうも」
「じゃあ、こんなところね。もう出るの?」
時計を見ると、時刻は11時だった。
「ああ。12時の便に乗るわ。お前はどうするんだ?」
イレナはミックで降り、俺達はそのまま南に行くが、乗る列車は同じだ。
「ちょっと仕入れがあるから14時の便で帰るわ」
「じゃあ、お別れだな」
「ええ。でも、せっかくだからお昼をご馳走させてよ。ちょっと早いけど、列車内で食べるよりはいいでしょ」
それもそうだな。
「じゃあ、行くか」
「ええ。美味しいお店を案内するわ」
俺達は立ち上がると、応接室を出る。
そして、1階に降り、案内してくれた女性に一声かけると、店を出た。
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