第035話 検証
翌日は部屋にこもりきりでポーションを作っていく。
すると、夕食前には150個のポーションができあがった。
「ふう……さすがにちょっと疲れましたね」
「さすがはエルシィだ」
今日はぶっ通しでやっていたし、手伝いの俺でもちょっと疲労感がある。
それなのにやり切ったエルシィは本当にすごい。
「先輩もお疲れ様です。それにしてもこれだけのポーションが並んでいるとすごいですね」
床には青色の液体が入ったフラスコが並べられており、何かの儀式みたいだった。
「150個あるからな。エルシィ、俺の荷物をお前の魔法のカバンに入れさせてくれないか? 俺のカバンに収納するわ」
「それもそうですね。じゃあ、荷物を出してください」
カバンから着替えなんかの荷物を取り出し、ベッドに並べていく。
そして、すべての荷物を取り出すと、ポーションを収納していった。
「先輩、ちゃんと畳みましょうよ」
エルシィが俺の着替えを畳んで収納していく。
「そうだな……」
今度からはそうしよ。
「ところで、この布団はどうします? 使う機会ありますかね?」
エルシィが布団を畳みながら聞いてくる。
「うーん、飛空艇では活躍したが、列車は寝台に乗るからな……」
他に使う予定があるだろうか?
「寝台では使わないでしょうね」
「だよな……荷物になるか」
俺達の魔法のカバンも容量に限界がある。
「先輩の家の布団ですし、捨てるのもどうかと思いますが……」
でもなー……
「邪魔なら私が持っていましょう。なかなか良い布団でしたし、もったいないです」
ウェンディはそう言うと、テーブルからふよふよと飛んでいき、ベッドの上にあるエルシィが畳んだ布団に触れる。
すると、一瞬で布団が消えてしまった。
「え?」
「消えた?」
どうなってんだ?
「これは空間魔法ですね。あなた方の魔法のカバンと同じようなものです。ただ、容量は非常に少ないです」
へー……
「じゃあ、布団はお前に任せるわ」
「お任せください」
ウェンディが柔らかお手手で胸を叩いたので収納を再開する。
すべての荷物とポーションを収納し終えると、1階に降り、夕食を食べた。
そして、夕食後はゆっくりとワインを飲みながら過ごしていく。
「今日がこの町の最終日ですね。静かな夜ですし、落ち着きますね、おほほ」
エルシィが優雅にワインを飲みながら貴族ごっこをしている。
「そうだな」
「ささっ、旦那様、どうぞ」
ウェンディが浮きながらワインを持ち、グラスに注いでくれる。
「悪いな」
「奥様もどうぞ」
今度はエルシィの方に注いだ。
「ウェンディちゃん、ありがとー」
俺達はウェンディが注いでくれたワインを一口飲む。
「さて、さっき荷物を整理してわかったんだが、エリクサーがエルシィに渡した分も合わせると、5個になっていた」
毎日のように寝る前にコツコツと作っていたのだ。
俺、やることなかったし。
「5個はすごいですね」
「保険にしては作りすぎたかもしれんな」
そう言ってテーブルに5個の虹色に輝くエリクサーを置いた。
「うーん、何度見ても神秘的というか普通じゃないですね」
虹色に輝くエリクサーが5個も並んでいると壮観だ。
「まあな。なあ、ウェンディ、これは飲めばいいのか?」
詳しいであろうウェンディに聞く。
「普通のポーションと同じと考えていいですよ。飲んでもいいですし、患部にかけてもいいです。まあ、患部にかけなくても飲めば全回復なんですけどね」
じゃあ、飲む一択だな。
「こいつがどんな物なのかを試したい。だからこんなに作ったんだ」
「まあ、わかります。でも、怪我も病気もしてないですよ」
そこなんだよなー。
「エルシィ、一応聞くけど、怪我をする気はないか?」
「先輩……こんな可愛い奥さんを殴る気ですか?」
「いや、殴りはしないが……」
自分で性格は良くないなって思っているが、さすがにそこまで鬼畜ではない。
「というか、ちょっとした怪我ならポーションでいいじゃないですか。検証にならないです」
そうなんだよなー……
「事故かなんかで大きな怪我をすれば検証できるが、それはもう検証ではないしな」
「それはそうですね。普通の用途ですし、そもそも事故らないように生きたいです」
まったくもってその通り。
痛いのは嫌だ。
「エリクサーは怪我や病気が治るだけじゃなくて、疲労も魔力も回復しますよ」
ウェンディが教えてくれる。
「そうなのか?」
「はい。完全回復がエリクサーなんで。古傷もニキビも消えます」
古傷もニキビもないが……
「ちょうどエルシィの魔力は減っているな……」
「朝からずっとポーションを作っていましたからね。それに疲労もあります」
俺も疲れがある。
「飲んでみるか」
「試してみます?」
「5個あるしな。エルシィも飲め。貴重な体験だぞ」
テーブルの上のエリクサーを2つ取り、1つをエルシィの前に置いた。
「貴重すぎますねー」
「いくらでもとは言わんが簡単に作れるものだ。とにかく、試してみよう」
「わかりました。ウェンディちゃんは?」
「私は結構です。そもそも疲れるという概念がないですし、魔力もご飯で補充できますので」
疲れるという概念がないのにあんなに寝ているのか。
「よくわからん人形だな」
「天使なんで。本当の意味であなた方とは生きている次元が違うのです」
それもそうか。
こいつのことは深く考えてはいけない。
「よし、じゃあ、飲むか」
「ええ」
俺達はフラスコの栓を抜き、エリクサーを飲む。
特に味がするわけでもないため、一気に飲み干した。
「お、おー……」
疲労が消えるとか魔力が回復するという感じではない。
なんか生まれ変わったような気がするし、すごい爽快感だ。
「むむ、なんか絶好調です。すごいフレッシュな気持ちです」
「身体の不調がまったくないな」
これはすごいわ。
「ええ。ですが、完全に酔いも覚めましたね」
うん。
酔いの気持ちいいふわふわ感まで消えている。
「あー、アルコールも消えますね。まあ、二日酔いも消えるということです」
それはありがたいが……
「なんかせっかくのワインがもったいないな」
「そうですね。というか、疲労感が完全になくなったのは良いですけど、眠気までなくなってます。今日、眠れるんですかね?」
あ、マジだ。
全然、眠くない。
「仕方がない。ボトルをもう1つ空けるか」
「そうしましょう。かんぱーい」
「乾杯」
俺達は乾杯をし、その後も話をしながら飲んでいった。
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