第033話 てれれてってってー
俺とエルシィは森に向かって歩きながら魔法の練習をしていた。
「火魔法は込める魔力によって火の強さが変わるな。攻撃魔法と考えれば発射後のスピードやコントロールも大事になってくるだろう」
「当たらないと意味がないですしね。あえて威力を落として数を出し、足止めしてから威力のある火魔法をぶつけるというのもありだと思います」
なるほど。
俺達は2人いるしな。
ウェンディをいれれば3人だ。
「その辺も応用になってくるな」
「はい。練習もいりますね」
「あのー、御二人が賢いのはわかりましたが、あまり魔力を使わない方が良いんじゃないですか? 薬草を採取したらポーションを作るんですよね?」
確かにウェンディの言う通りだな。
『調子に乗って魔力を使いすぎてポーションが作れませんでした』はない。
「いかんな。また同じミスをするところだった。どうも調子に乗る癖がある」
部長にエリクサーを見られた時と同じだ。
「それだけテンションが上がりますからね。ずっとできなかったことができるようになったわけですし」
「まあな。とはいえ、今は200万ゼルだ」
「頑張りましょー」
俺達は魔法の練習をやめて歩き続けると、森に到着した。
「道があるな」
舗装されているわけではないが、馬車が通れそうなくらいな道があり、森の奥まで続いている。
「こういう町に近い森は木を切ったり、獣なんかを狩ったりしますので道が整備されているんだと思います」
木材も獣も重いからな。
運ぶ用の道があるわけだ。
「じゃあ、道沿いにある薬草を採取していくか」
「はい」
俺達は左右に分かれ、腰を下ろす。
「私は採取できないので見張ってますね」
ウェンディは俺達の間でふよふよ浮いていた。
「頼むわ」
「おねがーい」
俺達は道沿いに生えている薬草を採取していく。
「結構、生えているな」
「多いですね。まあ、錬金術師が少ないらしいですし、薬草自体にもそこまで需要がないんでしょう」
薬師も使うだろうが、あの町の規模なら数人ってところだろうからな。
本来ならこういう森で薬草を大量に採取し、王都なんかの大きな町に送るもんだが、送っても使う錬金術師がいないから意味がないってところだろう。
俺達みたいな専門家が取り扱わないと薬草なんてただの雑草だし。
「これだけあるなら午前中で終わるな」
「ええ。慣れたものですしね」
魔法学校には採取の授業もあった。
貴族連中はサボっていたが、俺達庶民組は一生懸命やっていたからこういうのはお手の物なのだ。
「ちゃんと経験が生きているな」
「頑張った甲斐がありましたね。学校の時はサボっていた貴族が真面目にやっていた私達より成績が良いのにムカついていましたが、真面目にやって良かったです」
ホント、ホント。
俺達はその後もせっせと薬草を採取していく。
もちろん、どんどんと奥に向かっているのだが、特に何が出てくる様子もないし、鳥の鳴き声が聞こえており、非常にのどかだ。
「たまには外に出るのも良いもんだな」
「そうですねー。いつも家デートでしたもんね」
たまに終業後や休みの日にお互いの家に行って、飯食ったり、しゃべったりしていたが、あれはデートなんだろうか?
「あのー、和やかな雰囲気のところをすみません。魔物が来ました」
ウェンディがそう言うので慌てて立ち上がる。
すると、道の奥に子供サイズの醜悪な顔をした魔物がいた。
「あー、あれはゴブリンですね」
「ほう……あれがゴブリンか。初めて見るな」
俺は孤児とはいえ、王都生まれ王都育ちだから魔物を見る機会がないのだ。
「すごい……かっこつけているくせに奥さんの背中に隠れました」
俺はエルシィの後ろに回り、両肩を掴んでいた。
「様子を見ているだけだ」
「そ、そうですか……どうします? 向こうはこちらを見てますよ」
あ、目が合った。
「よし、覚えた魔法で倒そうじゃないか」
「言っていることは勇ましいんですけど……」
「先輩、私がやりましょうか?」
エルシィはケロッとしているし、ビビっている様子はない。
「お前、怖くないのか?」
「ゴブリンくらいなら……子供の時から見ていますし、あれって子供でも倒せる雑魚ですよ。群れていたら危ないですけど、1匹なら問題ないです」
え? あれが群れるの?
キモッ……
「馴染みがなくてなー……」
「先輩、都会っ子ですもんね。私がやりましょう」
エルシィがゴブリンに向かって手を掲げる。
「いや、俺がやろう。お前は危ないから下がっていろ」
「ホント、セリフだけはイケメンだな……」
ウェンディ、うっさい。
「先輩、頼もしい!」
エルシィが俺の後ろに回り、背中に隠れた。
「あなたは良い奥さんになりますよ……」
ウェンディが呆れていると、ゴブリンがこちらに向かって駆けてきた。
「キモッ……」
「せんぱーい、どーんとやっちゃってください」
「よし。食らえ!」
手を掲げると、火の玉を出し、駆けてくるゴブリンに向かって放つ。
すると、火の玉が勢い良くまっすぐ飛んでいったのだが、あまりにも直線的すぎたのでゴブリンにステップされて躱されてしまった。
ゴブリンが勝ち誇ったように気持ち悪い笑みを浮かべ、再び、駆けてくる。
「あ、まっすぐすぎましたね」
「ふっ、そうでもない」
「んー? あれ?」
避けられて飛んでいった火の玉は上空に浮き上がると、弧を描くように戻ってきて、ゴブリンの頭上に落ちた。
「ギャッ!? グギャッ!」
死角から直撃を食らったゴブリンは一気に燃え上がり、じたばたと転がっていたが、すぐに動かなくなり、黒炭となる。
「おー……もうここまでコントロールできるとは……レスターさんは本当に天才ですね」
「先輩、すごーい! かっこいい!」
「まあな……」
黒炭になったゴブリンを見ていると、なんか嫌な感じがした。
「あれ? 先輩?」
「気持ち悪いな……」
黒焦げになったゴブリンから嫌な死臭がするし、けっして気持ちのいいものではなかった。
「吐きそうです?」
エルシィが手を取りながら聞いてくる。
「いや、そこまでのことじゃない。単純に慣れていなかったからショックを受けただけだ」
もう大丈夫だ。
たいしたことじゃない。
「そうですか? まあ、さっさと採取をして帰りましょう」
「そうするか。今、何枚だ?」
「私は50枚ってところです」
結構集まったな。
「俺は60枚だし、あとちょっとだな」
「はい。じゃあ、続きをやりましょう。ウェンディちゃんもお願いね」
「任せてください」
俺達は再開することにし、薬草を採取していく。
そして、すぐに数を集め終わったので森を出て、町に戻ることにした。
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