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宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~  作者: 出雲大吉
第1章

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第021話 どっちもどっち ★


 静寂に包まれた空間にカツッカツッという足音だけが響き、その音が止むと、1人の兵士が余の前に跪いた。


「報告します。ゲイツの王都に密偵を放ちましたが、依然、レスター、エルシィ両名を発見できておりません。引き続き、調査に当たりますが、両名はゲイツ王国側と接触していないと思われます」

「わかった。引き続き、注視せよ。下がっていい」

「はっ!」


 報告を終えた兵士が下がっていった。


「大臣、どう思う?」


 横に控えている大臣に聞く。


「いくつか考えられます。まずはほとぼりが冷める時期を見計らっているのかもしれませんな。こちらが追っ手を出しているのは向こうも承知しているでしょうから。もしくは、レスターが本当はエリクサーを作れないので接触のしようがない、ということも考えられます」


 ふむ……確かにありうることだ。


「例のエリクサーの解析は?」


 あのバカが献上してきたレスターが作ったと思われるエリクサーのことだ。


「それがまったくわかっておりません。本当に未知の力らしいのです。確実なのは使ってみることですが……」


 使ったらなくなってしまう。

 1つしかない貴重なエリクサーがだ。


「使うのはなしだ。レスターの確保は現実的ではないし、現状、この国に1つしかない貴重なものだ。使う時は決まっている」

「しかし、毒の可能性もあります」


 バカ……


「エリクサーを使わないといけない場面は命に危険がある時だ。毒の可能性なんて気にしなくてよい」


 何もしなければ死ぬから使うのだ。

 毒なんか関係ない。


「それもそうですな……」


 ハァ……大臣もこれではこの国も危ういな……


「それよりも2人の居場所だ。ゲイツにいる可能性は高いと思うのだが……」

「王都にいないかもしれませんね」


 ありうるな……いや、待てよ……


「ゲイツにはいない可能性もあるにはあるか……」

「左様ですか?」

「うむ。奴らはランスにいた。そのままランスに留まっている可能性も十分にある」

「ランスは同盟国ですぞ? こちらが2人を重要参考人として指名手配し、それをランスに通達すれば2人はランスでもお尋ね者になります。レスターは賢い人間と聞いておりますし、そのくらいは考えつくかと……」


 余もそう思っていた。

 だから絶対に我が国の同盟国にいない、と……


「1つ失念していた。あやつらはいくら宮廷錬金術師だったとはいえ、所詮は庶民で金はそこまで持っていまい」

「それがどうしましたか?」


 ハァ……


「飛空挺は庶民の乗り物ではないし、そう何度も乗れるような金をあやつらは持っていないということだ。もし、持っていたとしてもそれだけの大金を使うのを躊躇するだろう」


 国を出たということはまだ働く場所も未定だろうし、そんな状況で大金を失うのは怖いだろう。

 ましてや、レスターには守るべき女がいるのだから。


「高い……ですかね?」

「高いんだよ」


 こいつ、飛空挺の料金を把握してないな?

 まあ、余も具体的な金額までは知らんが。


「そうなると、まだランスに留まっている可能性もありますな」

「その可能性も考えるべきだが、問題はランスに通達するかになるな…… 」


 うーむ……どうするか……


「通達して、ランスに捕らえてもらえれば早いのでは? こういう時のための同盟国ですぞ?」


 ハァ……この国の大臣のセリフか?


「ランスにレスターの確保を頼み、上手くいってレスターを捕らえたとしよう。しかし、レスターがその時にエリクサーのことをしゃべって命乞いをしたらどうなる? ランスは素直にレスターの身柄をこちらに渡すと思うか?」

「うーむ……渡さないでしょうな。たとえ、我らとの同盟にヒビが入ったとしてもエリクサーはそれだけの価値があります」


 その通りだ。


「もし、レスターがエリクサーを量産できたとしたらどうする?」

「と言いますと?」

「不死身の兵隊の誕生だ。これがどういうことかわかるか?」


 どんなに致命傷を負ってもすぐに回復する軍隊だぞ。


「それは……」

「わかるか? もし、レスターがエリクサーを量産できたとするとレスターを確保した者がこの大陸の覇権を獲る。あやつは世界の均衡を揺るがしかねない危険人物なのだ」

「確かに……我らのような善政を敷ける国が管理するなら大丈夫でしょうが、他の野心しかない国々の手に渡らせるわけにはいきませんな」

「そういうことだ。だから殺すべきなのだ」


 素直にウチで活躍すればいいものを……

 多少の自由と恋人との逢瀬くらいは認めてやるのに。


「しかし、そうなると、ランスに知らせる訳にはいきませんな。やはり刺客を送りますか?」

「それしかない。同盟国とはいえ、信用できん」


 同盟など所詮は利害が一致しているから結んでいるにすぎん。

 エリクサーというそれ以上のことがあればそちらを優先する。

 これは別にランスに限ったことではない。


「うーむ……レスター達がランスを出たがっているとすると、王都ではない……そして、金を使わずにランスを出るなら陸路になりますな。国境沿いの町に刺客を送りますか? ゲイツと合わせるとかなりの数になりますが」


 一言に国境沿いの町と言ってもランスは4つの国と隣接しているし、辺境の町は多い。


「仕方がない。すべては国を出たレスター、それを止めなかったエルシィ、そして、あのバカのせいだ」


 本当にあのバカが初動さえ間違えなければ……


「まったくですな。それではそのように指示いたします」


 ハァ……余がすべて指示せねば動けぬのか……

 まったく……この国はバカしかおらんな。

 余がしっかりせねば。


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飛ぶのは大金かかって大変だーまではわかっても そっから追えるだけの諜報力無いんか(´・ω・`) イラドから来た人間が別国に行った、だけでも相当絞れそうなもんだが 俺なら人海戦術で世界各国に航空で飛ば…
「確かに……我らのような善政を敷ける国が管理するなら大丈夫でしょうが、他の野心しかない国々の手に渡らせるわけにはいきませんな」 どの口が言っているんだかwww
敗因は主人公たちの胃袋を掴めない国家だったからでは? 登場人物の心を掴むには、まず胃袋からが鉄則だなと思えてしまった。。。 参考になるなぁ~。。。
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