第017話 満喫
俺達はその後も王都の観光名所を見ていく。
歴史ある街並みということで昔ながらの建築物が多く、中には1000年以上も昔のものまであった。
俺達の出身であるイラドはどんどんと新しいものに建て替えていく感じなのでこういうのはあまりない。
なので見ていて楽しかった。
昼になると、定食屋でパスタを食べる。
クリーム系のパスタは濃厚であり、非常に美味しかった。
なお、おしゃれな店だったのだが、ウェイトレスや周りの客はパスタを食べるウェンディを見て、目が点になっていた。
そして、午後からも王都を見て回り、最後にこれまた歴史がありそうな城を見上げる。
「大きいですね」
「だな」
まさしく城だ。
「さすがにこの辺りは長居しない方が良いでしょうし、そろそろ宿屋に行きませんか?」
「そうするか。宿屋って結構あったよな? どこにする?」
これまでに何度か宿屋を見た。
観光地だし、王都なだけあって飲食店も含めてそういう店が多かった。
「この旅行雑誌にそういうおすすめも書いてありますよ。『とにかく贅沢したい』、『まあ、泊れればいいや』、その2つの中間がありますけど、どうします?」
「中間でいいだろ」
贅沢はやりすぎだし、泊まれればいいやは怖い。
「では、そうしますか。こっちです」
俺達は早々に城から離れると、飲食店や宿屋が多い繁華街にやってきた。
まだ時刻は夕方の4時を過ぎた辺りだが、すでにそこそこの数の人が歩いている。
「賑わっているな」
「ですねー。あ、あそこです」
エルシィが指差した先には白を基調とした清潔感がある宿屋があった。
看板には【赤い炉の宿屋】と書いてあった。
「良さそうだな」
「でしょ」
宿屋に入ると、清潔感が漂う空間が広がっており、温かみのある色合いの木材が落ち着いた印象を与え、居心地は良さそうだった。
「いらっしゃーい」
奥にある階段の近くにある受付に十代後半くらいの黒髪の女の子が座っていた。
「こんにちはー。泊まりたいんですけど、空いてますかね?」
声をかけてきた受付の女の子のもとに行くと、エルシィが聞く。
「空いてますよ。1部屋2人分で朝夕の食事付きで12000ゼルになります」
ちょっと高いがこの店のクオリティと地価が高い王都であることを考えればそんなものだろう。
「夕食は外で食べるから大丈夫です」
「そう? じゃあ、10000ゼルでいいや」
安くなったな。
「じゃあ、それで」
「はーい。朝食は奥にある食堂か、サービスのモーニングコール付きで部屋でも食べられますけど、どうします?」
サービスの良い宿屋だな。
「部屋が良いですよね?」
エルシィが聞いてきたから頷いて返した。
理由はもちろん、ウェンディがいるから。
「じゃあ、朝食は部屋で食べます。あ、3人分、お願いします」
「3人分? そんなに食べるの?」
「私が食べるんでーす」
腕の中にいるウェンディがふよふよと動き上がる。
「お、おう……え? 人形じゃあ……?」
さっきまで満面の笑顔だった女の子の顔が引きつった。
「こう見えても使い魔なんだ」
「どこが? 人形にしか……あ、いや、すみません。では、3人分を用意させていただきます」
「じゃあ、これが料金です」
エルシィが受付に金を置く。
「は、はーい。お部屋はそこの廊下を進んだ7号室になります」
女の子は左の方の廊下を指差し、鍵をカウンターに置いた。
「わかった」
鍵を取ると、廊下を進み、7号室と書いてある扉を開け、部屋に入った。
部屋の中は白を中心とした全体的に落ち着いた色調であり、安らぎのひとときを感じられるような温かい部屋だ。
広さも20畳はあり、大きなベッドが2つもある。
さらには暖炉まで設置されており、雰囲気のある部屋だった。
「良い感じの部屋だな」
「私の慧眼です」
エルシィは俺と違ってセンスがある子だからな。
「わーい」
ウェンディは早速、ベッドの方に飛んでいき、ダイブすると、ゴロゴロと転がる。
「エルシィ、夕食は外って言ってたけど、行きたいところでもあるのか?」
窓際にあるテーブルにつきながら聞く。
「良い感じのお店を見つけたんですよ。お酒も美味しいらしいので行きましょう」
「じゃあ、そうするか」
俺達は朝から歩いていたので夕食の時間まで休憩した。
そして、日が沈み始めたぐらいで宿屋を出る。
すると、さっきよりも多くの人が歩いており、かなり賑わっていた。
「すごいな」
「そうですねー」
俺達が歩いていくと、川沿いにある店にやってきた。
「ここか?」
「ええ。入りましょう」
店の中に入ると、すぐにウェイトレスが出迎えてくる。
「いらっしゃいませー。2名様ですか?」
「はい。2階のバルコニー席が良いです」
「どうぞー。こちらでーす」
ウェイトレスが近くにある階段を昇っていったので俺達も続いた。
そして、2階に行くと、近くの扉を開け、バルコニーに出る。
バルコニーにはいくつもの丸テーブルがあり、すでに数組のお客さんが外の方を眺めながら飲食を楽しんでいた。
それもそのはずであり、ここからは夕日で茜色に染まった川が一望でき、すごく神秘的なのだ。
「すごいな」
「でしょ。おすすめスポットって旅行雑誌に書いてありました」
よく見ると数組のお客さんはどれも男女の2人組だ。
「こちらにどうぞー」
ウェイトレスに勧められたので席につく。
すると、ウェイトレスがメニューをテーブルに置いた。
「どれにしますかねー? まずは飲み物ですか?」
ウェンディをテーブルに置くと、すぐにメニューを開き、吟味しだす。
もちろん、それを見たウェイトレスが固まり、目をぱちぱちさせた。
「あ、人形のように見えますが、使い魔なんです」
エルシィがこれから先、ずっと言うんだろうなーと思うセリフを言う。
「そ、そうですか……」
ウェイトレスの混乱がものすごく伝わってくるな。
「俺はワインでいいぞ」
「私もー」
「じゃあ、そうしますか……えーっと、何を食べようかなー?」
ウェンディは楽しそうにメニューを見ており、非常に微笑ましい。
でも、俺達にも見せて欲しいなって思った。
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