第103話 色々な形
しばらく待っていると、ウェイトレスがワインとグラスを持ってきてくれたので3人で乾杯する。
そして、軽く飲んでいると、ステーキとサラダ、ライスがやってきた。
「おー……美味しそうですー」
「適度な脂身……これは良質のお肉と見ました」
2人が注目するステーキはほどよく焼き目が入っており、脂身は控えめで非常に美味しそうに見えた。
「食べるか」
フォークとナイフを持ち、ステーキを切ると簡単に切れた。
一口サイズに切ったステーキを口に運ぶと、しっかりとした噛みごたえの中に肉本来のコクと甘みがじんわりと広がっていく。
余分な脂のくどさがなく、噛むたびに広がる旨味が非常に心地良かった。
「美味しー!」
「実に上品です。星3つ!」
2人も満足そうに食べている。
「ワインとも合うな」
脂がすーっと取れ、芳醇なぶどうを感じる。
「良いお店ですねー。やっぱりおすすめを聞くのが一番です」
「白ワインと魚介の組み合わせも良かったですけど、お肉と赤ワインの組み合わせも最高です」
「確かにな」
俺達はその後も肉やワインなんかを堪能していく。
すると、徐々にお客さんが増えだし、2階にも家族連れなんかの客がテーブルにつきだした。
「明日は観光ですねー」
どうしてもフリオの奥さんが頭に浮かぶ。
「オフェリアか……どう思った?」
「可愛らしい方ですね……」
そういう意味じゃない。
「お前の方が可愛いから安心しろ」
「ですよねー!」
はいはい。
「そういうことじゃなくて、オフェリアって庶民に見えたか?」
「いえ。多分、貴族の方でしょうね。その割にはアパートに住んでおられましたし、家を出たってところじゃないですか?」
貴族令嬢が庶民と結婚することはほぼないからな。
この国のことは知らないが、イラドではそうだった。
「あー……それでフリオさんが敬語を使っているってことですか?」
ウェンディが聞いてくる。
「俺にはそう見えた。それとフリオが商人に見えなくてな」
あいつ、俺の金貨を見て、買い取ろうとしなかった。
それどころか他国で売った方が良いとまで勧めてきた。
商人なら儲けを考えて、口八丁でごまかして安く買い取る場面だ。
「あの方は騎士様じゃないですかね? 騎士様と貴族令嬢の許されない恋です」
エルシィが祈るようなポーズを取り、目をキラキラさせた。
「あ、この前、本で見ました!」
なんか船で読んでたな。
「まあ、騎士っぽくは見えたな」
ターリーではフレンドリーな人間が多かった。
それと同じでこの国はああいう人間が多いのかもしれないが、やけに姿勢が良かったし、言葉遣いもかなり丁寧だった。
「あの2人がどういう関係なのか、どういう経緯で結婚したのかはわかりませんが、まあ、良いんじゃないですかね? あまり詮索も良くないですし、明日は普通にしましょうよ」
それもそうだな。
詮索されたくないのは俺達も一緒だし。
「なあ、ウェンディ。ちょっと聞きたいんだが、俺達って違和感があるか?」
「はい? どういう意味です?」
ウェンディが首を傾げる。
「いや、フリオとオフェリア夫婦の敬語にちょっと違和感があったからな。俺達も怪しまれないかと思って」
「どうでしょう? 私は特に御二人を見て、違和感なんてないですけど……それに今まで出会った方々も別に違和感を覚えたって感じではなかったと思いますよ。ツッコむこともなかったですし、普通でしたもん」
店の人間は違和感を覚えても立ち入ってくることはない。
となると、イレナ、ニーナ、カルロ、クラーラ……誰もエルシィの敬語にツッコんではないか。
「そんなものか」
「エルシィさんは小柄ですし、レスターさんと一緒にいると、凸凹コンビ感がありますからね。それでじゃないですか?」
あとエルシィはいつもウェンディを抱えているから子供感があるというのもありそうだ。
「違和感がないならいい。怪しまれるかもって思っただけだから」
「いっそエルシィさんの敬語をやめさせてみれば?」
うーん……
「エルシィ、ちょっと普通に話してみ?」
「普通に話してるよー。レスター君とは出会ってからずっと敬語だったからそれが普通なのにぃー」
うーん、違和感がすごい。
「ウェンディ、どうだ?」
「そもそもエルシィさんってしゃべり方が甘えた感じであざといですから敬語で良いんじゃないかなと思います。男に貢がせる系女子です」
いや、エルシィは優秀な錬金術師なんだぞ。
宮廷錬金術師はエリート中のエリートなのだ。
「人を詐欺師みたいに……ウェンディちゃんも敬語をやめて普通にしゃべってみてよ」
そういやウェンディも敬語だな。
「無理だよぉ……ウェンディ、敬語しかしゃべれないぃ」
ウェンディが目を両手で覆いながら甘い声を出す。
「お前もそっち系じゃん」
というか、一人称が名前かい……
どこに凛々しさがあるんだよ。
「ウェンディちゃん、あざといね」
「エルシィさんにだけは言われたくないです」
どっちもどっちだろ。
「私は先輩が喜ぶからしてるだけ。ねー?」
なんで俺に振ってくるんだろ?
「喜んでいるか?」
「喜んでますよー」
そうなのか……
「そうだな……まあ、違和感がないならいい。そろそろ混んできたし、帰るか」
周りの席は埋まっているが、下を見ると、新しい客が来ていた。
「そうしましょー」
「美味しかったですね」
「確かにな」
肉料理も美味かったし、2人が満足そうなら良かったわ。
俺達は会計をすると、店を出た。
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