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記録29 過去の思い出したくない思い出

新たな登場人物なし。

「えぇ!?」その場にいた幸子、七奈美、直也は驚いた。

それもそのはず、Aさんとは、動画投稿サイトではかなり有名で、投稿すると、一週間で再生回数5万回は行くからである。

なので、インターネットをしている人にはすぐに分かることである。


「……まさかとは思うけど、嘘ついてない?」七奈美が聞く。

「そんな事ないです!本当ですって!」智美が言う。

「それなら、歌ってみて。」幸子が言う。

「わかりました。」智美はバーチャルアイドルが歌っている曲をほんのワンフレーズだけ歌った。


「……本物だな。」勇輝が言う。

「……そうだね。」幸子が言う。

「本物がここに………」直也が言う。

智美は満面の笑みを見せる。

「信じて貰えた?」智美が言う。

全員はうなづく。



一方、リビングにいる遥と夏海は、たわいもない雑談をしていた。

「大原さんって彼氏とかいたんですか?」夏海が言う。

「“いた”って何で過去形………」遥が言う。

「別にそこはスルーしてくださいよ!」夏海が言う。

「ごめんごめん。もちろん今まで誰もいないよ。」遥が言う。

「そんなわけ無いじゃないですか。そのスタイルで。」夏海が言う。

「いないって~。それじゃあ、そっちは?」遥が言う。

「え?え!?」夏海は突然聞かれたので慌てる。

「………今は片思いですかね。」夏海が照れくさそうに言う。

「へぇー、意外。」遥が言う。

「生きていればですけどね。」夏海は軽く笑う。

「生きてるって!そう信じれば生きてるって!」遥は夏海の背中を叩く。


バシッ


「いたっ………強すぎですよ~」夏海が言う。

二人は笑う。

しかし、いきなり遥の頭の中で誰かが言う。

(殺せ!)

「え?」遥が言う。

「どうしました?」夏海が聞く。

「今何か言った?」遥が聞く。

夏海は首を横に降る。

(気のせいか。)遥はひとまずそう思うことにした。

しかし、すぐにまた聞こえてきた。

(殺せ!裏では何を考えてるか分からねーぞ!)

そして、昔の事が思い出される。



遥が教室の端で、女子の数人に囲まれている。

「あんた、良い子ぶってムカつくわね。」一人の女子が言う。

「生徒会長にもなって更に調子に乗ってるんじゃない?」更に他の女子が言う。


ドゴッ


「うっ!」遥は腹に蹴りを喰らった。

他の生徒は関わりたくないのか、知らんぷりだった。

その場にうずくまる。

「次は………閉じ込めない?」一人の女子が提案する。

「良いねぇ!丁度後ろにロッカーあるじゃん!」女子が言う。

「早く入りなよ!」女子が急かす。

遥は立ち上がり、首を横に降る。


ドゴッ


今度は腹にアッパーを喰らう。

遥はにらむ。

「おー怖い怖い。反撃するならしてみなさいよ。すぐに退学にするから。」女子はそう言うと爆笑している。

それでもなお、クラスの男子や、混ざっていない女子は全員無視である。

遥はしぶしぶ入ることにした。いや、入る事しか選択肢がなかった。

ロッカーは掃除用具を入れておくもので、中はかなりの臭いがする。

遥は入る。


ガシャン


すぐに扉が閉められた。

外では女子達が爆笑している声が聞こえる。

(怖いよ。暗いよ。怖いよ!誰か助けてよ!)遥は心でそう思った。

しかし、誰も助けてはくれない。

自然と、遥の目から涙が落ちていく。

(もう嫌だこんな世界……………皆殺したい…………消えて無くなれば良いんだ。)






「どうしたんですかっ!」夏海が遥の両肩を持って揺らしている。

遥は我に帰る。

「………大丈夫。………ちょっとトイレ行くね。」遥は立ち上がり、トイレに向かった。

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