夜は更ける
僕と少女は相変わらず同じ寝室で寝ている。スイカを食べてからしばらくして寝てしまった。
時計は深夜の一時。そういえば少女と観ていた映画で深夜の一時に登場人物が襲われるシーンがあったなと思い出す。
寝る前にトイレへ行っておけばよかったと後悔しても仕方ない。僕は起きあがろうとすると、グイッと浴衣の裾が引っ張られる。
「……どこ行くの?」
こんなことができるのは少女しかいない。
「えっ――と、トイレ?」
自分でもなぜかわからないが、疑問形で答えてしまう。
「私も行く」
少女は寝ぼけまなこをこすりながらむくりと起きあがる。なるほど、少女もいまになってということか。
「先は譲ってあげる」
縁側をでてトイレの前に来ると少女が言った。とてもありがたい申し出だった。
「ありがとう」
僕が用を足して出てくると少女が入れ替わる形で入る。
「待っててね」
扉を閉める際、顔を半分だけ僕を覗きながら念押ししてくる。前と一緒だ。
もちろん置いていくつもりはない。大人しく待っていることにした。
「寝る前にスイカはやめた方がいいね」
ため息つきながら少女が出てくる。それはたしかにそうかもしれない。
トイレから寝室まではわずかな距離だ。それでも少女は下を俯いたまま、僕の浴衣の裾を離さなかった。
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