露天風呂
僕らは自転車を玄関前に止めて、家の中へ入った。
少女は僕を先に露天風呂に案内して、僕のカバンを開けていいかと聞いてくる。
どうしてかとたずねると、彼女は入っている僕の下着を持ってくるためだと言った。
「私は男性ものとかでも平気だよ。どうせ、いま履いてるのも私が洗濯するし」
少女はこういうことにまるで動じないわけで。単純に慣れているということかもしれないが。
少女について思ったのだか、世話焼きというよりは人の世話が苦にならないということではないだろうか。
「洗濯する服は脱衣所の入ったところにあるカゴに入れておいて。着替えは私が持っていくから」
これフェイスタオルとバスタオルと言って、渡されると少女はばたばたと奥へ行ってしまう。
僕はとりあえず脱衣所へ向かった。
服を脱いで、お風呂の洗い場で体を洗って、湯につかる。
お湯加減は熱すぎることはない。思わず間抜けな声が漏れてしまう。
すると脱衣所のほうから「着替え置いておくね」という少女の声が聞こえる。
「ありがとう」と言うと、少女ががらりと戸を開けて、中を覗きこんでくる。
「お兄さん、面白い声がでてたよ」
少女の顔はからかうようにニヤけていた。
「覗かれるのは男でも恥ずかしいんだけど」
「気にしないの。それより湯加減はどう?」
「いい加減だよ」
「それは私も楽しみだ」
少女はうんうんと頷いている。
「私も早く入りたいな」
「僕が出るまで待ってくれない?」
「もちろん。お客さんなんだからゆっくり入ってよ、私はお兄さんのあとに入りますので」
「ところでもう着替えたの? 風邪ひかないようにしないといけないよ」
「お兄さん、ありがと。私は大丈夫だよ」
そう言って少女は脱衣所から去っていく。
それから僕は温泉をじっくりと堪能した。
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