寄り道その1
少女の提案で、帰りは別のルートを走っていた。
先ほどと違って、舗装された道はすぐなくなり、あぜ道がずっと続く。
稲が青々と茂り、生温かい風に揺られてなびく。
ここも伯父さんの私有地なのだろうか? と質問を投げかける。
「ここは違うんじゃないかな」
いくらなんで広すぎるよというのが少女の言である。
自転車で舗装されていない道を走ると案外揺れる。そのせいでお尻が少し痛い。
それでも田舎道をこんな風に走るのは気持ちのいいものだった。
途中、古ぼけた鳥居の前を通る。
「ここ神社だよ」
今日は通りこすだけだが、ここもくる機会があるのだろうか。
「ちょっと休んでいこ」
コンクリートでできた古めの橋にさしかかったところだった。
少女から休憩の提案がでる。
僕が自転車を止めると、少女はお尻を少しさすっている。
さすがに痛くなったか。
「もう少し乗ることになると思うけど、大丈夫そう?」
思えば知らぬ間に少女に対して、フランクに接している自分がいる。
「運転するの代わる?」
少女から冗談ともつかない提案をされる。
少し想像してみるが、絵図らとしては僕がなんだか情けない。この場合、僕が少女の体に掴まらないといけないし。
少女は軽い足取りで、橋の下に下りていく。川まで傾斜はそれなりにあって距離もまあまあある。慣れているという印象だった。
「お兄さん、こないの?」
少女は振りかえるときになびく髪をおさえて、横顔だけを僕に向ける。
「すぐ行くよ」
僕は少女のあとに続く。彼女のように軽やかな足取りには到底かなわなかったが。
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