探索その3
「お兄さん、左を見て」
自転車をこぎながらよそ見するのは危ないんだけどなと考えつつ、目線だけを彼女の言うとおりにする。
僕の視線に映ったのは木造の校舎だった。
「ああいうの年期が入ってるっていうんだっけ?」
「レトロで僕は好きだけどね」
機会があればぜひ行きたいと思う場所の一つだろう。
「だったら伯父さんに聞いてみようか? ひょっとしたら許可もらえるかも」
それはありがたい提案だった。
「君はここの出身じゃないの?」
「私は伯父さんの手伝いできてるだけなんだ」
だから住んでるのは別のところなのだという。その割には周辺の地理に詳しいと思うのだが。
「夏はこんな風によく遊びにきてたから」
伯父さんに連れられて、よく遊んでいたということだった。
民家もまばらで人の行き来もあまり目に映ることがない。乗用車はたまにすれ違うくらい。
のどかな光景がどこまでも広がっているとさえ思える。
加えてこの容赦ない日差しだ。
先ほどの休憩でとった水分はもう汗ででてしまったのではないかと思うほど、汗が流れでている。
「ちょっと暑苦しい?」
僕の背中に密着していることを言っているのだろう。安全面から考えて彼女の行動は正しい。なにより――いや、なにも言うまい。
「大丈夫だよ」
これは強がりなどではない。
伯父さんの家についたのは、それから一〇分ほどこいだ頃だった。
家に着いたら、伯父さんは不在で少女の伯母にあたる女性がいた。
少女が伯母さんに事情を話したら、いろいろあって食材については運んでもらえるということになった。それと何か困ったことがあったら伯母さんに言いなさいとのことだった。
それとお客さんを巻きこんだことに対して咎められているようだった。
その後、伯母さんから家まで送っていこうかと申し出があったが、僕は辞退した。
すると少女も僕と一緒に帰るという流れになってしまった。
伯母さんは「若いねぇ」と関心をしていた。
僕としては探索も悪くないと思ったのだ。
僕は再び少女を自転車に乗せて、帰路につくことになった。
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