探索その1
「そこを左に曲がって」
僕は土地勘のない道を少女の案内で進んでいた。
たから、どこを走っているかなんてわからない。
「私も二人乗りはじめてなんだ」
だから、とても楽しいと背中に声が静かに響く。
少女は自転車から落ちないよう、僕のお腹に両手をまわして、その細い腕で掴んでいる。
だからこそ、背中から感じる存在感の大きさに自然と意識が高まる。
少女はいまどんな顔をしているだろうか。
進んでいくと、いつの間にかあぜ道はとぎれて、舗装された道に変わる。
二車線の広い道路だけど、クルマとはほとんどすれ違わない。
「伯父さんの家まで、あとどれくらい?」
「う〜ん。このペースならあと二〇分くらいかな」
……結構遠いな。いままでかかった時間を想定したら合計で三〇分くらいかかる計算になる。
どうして少女が僕を誘ったのかとか、電動アシスト自転車があるのかがわかった気がする。
しばらく走っているとコンビニのような店舗の姿が左側に見えた。
「ちょっと休憩していこ」
あの店に入ろうということのようだ。
店の前は大型トラックなんかが止まる想定のためか、それなりに広い。
この店の名前を僕はよく知らないが、コンビニには間違いなさそうだ。周辺でこういう店は少ないだろうから貴重なことに違いはないだろう。
少女は僕に「店の外で待ってて」と言って、店の中に入っていく。
それからドリンクコーナーに駆け寄って、ドリンクを二本手に取ると、レジで購入していた。
僕はその動作を何するでもなく目で追っていた。
店員から飲み物を預かるとき、少女は一瞬だけちらりと僕へ視線をむける。
それから両手にペットボトル飲料を抱えて、ワンピースのスカートヒラヒラさせながら駆け寄ってくる。
その姿は微笑ましいものだ。
「はい、お兄さん」
飲み物、私と一緒のにしちゃったと、悪びれた様子もなく右手で差しだしてくる。
「ありがとう」
僕はそう言ってペットボトルを受け取った。
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