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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第二章

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蛇と呼ばれる男、虎と呼ばれる男7

「クソッ……簡単に終わるはずだったのに」


 ここまではかなり単純だった。

 密入国することも小嶋金融に命じて仕事をさせることもその後監視をしてきた連中を潰すことも簡単だった。


 和輝だけ生かして他を殺して鉄鋼竜の心臓の場所を聞き出せばそれで終わる話だったのにとカイは怒りを覚える。

 ともかくここから逃げねばならない。


 それどころかここまで騒ぎが大きくなってしまえば国から脱出する手段も早急に必要となる。


「なんだ……?」


 急に空が暗くなった。

 状況を把握しようとカイが立ち止まって空を見上げた。


「……チッ」


 空に青が広がっていた。

 青空よりも濃いブルーの膜のようなものが広がりながら下りていく。


 広く球体を描くように広がる膜はドーム状に大きな範囲を包み込んだ。

 そのドームの中にはカイもいた。


 ドームの中は薄暗いが完全に光を遮断しているわけではなくうっすらと明るさはある。

 あれが何なのかとドームを見つめていると表面はまるで水のように揺れていた。


「あの女か」


 カイの脳裏に憎たらしく笑うかなみの顔が浮かぶ。

 このようなこと北条にはできるとは思わず、自分の魔力をさらに強い魔力で抑えつけるなどという馬鹿げた手段を取ったかなみならば可能であろうと考えた。


 周りの気温が下がったような気がする。

 同時に本能が危険を告げている。


 このドームの中にいてはダメだと。


「見つけた……」


 どこからか声がした。


「なっ……」


 次の瞬間カイの脇腹に水の槍が突き刺さっていた。

 どこから攻撃されたのか分からなくてカイは周りを見回すけれどかなみの姿はない。


 ドームが覆い始めた頃から周りの魔力が一気に濃くなった。

 魔力を感知しようにも魔力の濃さによって上手く感知できない。


「何かのスキルだな」


 集中力を高めてほんのわずかな魔力の揺らぎを感じ取って次の槍を回避した。

 狙いはやや甘い。


 どこからか見ているのではなくこのドームが何かのスキルによるもので離れたところからカイの存在を感じ取って攻撃しているのだと察した。

 ドームを作り出しているかなみを見つけ出して倒すかドームの範囲内から抜け出すか、対策は二つに一つ。


 今からかなみのところに戻っても北条もいるし倒すのはほとんど不可能。

 となると逃げるしかない。


 カイは再び走り出す。

 逃げる最中もあらゆる方向から魔法が飛んでくる。


 直前まで察知できなくて回避が難しくカイに細かな傷が増える。


「ムカつく……」


 反撃もできずただ一方的に攻撃される状況に苛立ちが募る。

 おそらく後ろから追いかけてきているしかわしながらでは逃げる速度も落ちてしまう。


「仕方ない……こんなところで使うつもりはなかったけど」


 このままでは逃げ切れない。

 カイは懐から小さい袋を取り出した。


 その中から黒い石を取り出して握りつぶした。


「低級ゲートだが少しは役に立つだろう」


 カイはニヤリと笑った。

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