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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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暗黒竜撃退戦2

「とりあえず勇者様を解放します。地下牢にいますよね?」


「ええ、まだ閉じ込められていると……見張りの兵士は後ろの方々が?」


「彼らは勇者様のお味方よ」


 なんとなく苛立った雰囲気のロンデルシアについていく。

 ロンデルシアや圭たちに気づいたような人もいるが、立ち止まることなく足速に移動していれば止めるような人もいなかった。


 そのまま地下に降りていく。

 秘密の通路と違って、ちゃんと作られているので揺れてもすぐには崩れなさそうだが、信用はしきれない。


 現に振動するたびにパラパラと何かが天井から落ちていた。


「何をしている! ここは立ち入り禁止だ!」


 階段を下っていき、一番下まで行くと数人の兵士がいた。

 ロンデルシアを見て、険しい顔をして槍を向ける。


「お願いします!」


 素直に通してくれる雰囲気はない。

 圭とウェイロンは剣を抜いて見張りの兵士と戦う。


「こいつら……!」


「悪いな!」


 ただ仕事をしているだけの可能性もあるが、勇者を逃さないようにする以上見張りだって暗黒竜派であるはずだ。

 それでもできるだけ相手は殺さない。


 突き出された槍を弾き飛ばして、圭は見張りの兵士を拳でぶん殴る。


「つ、強いですね……」

 

 最初に戦った兵士と同じく、見張りの兵士たちもさほど強くない。

 圭とウェイロンの二人だけでも追加で現れた兵士も含めて倒してしまった。


 ロンデルシアについてきたメイドは、二人の強さに目を見張るようにして驚いている。


「勇者様はきっと奥に」


 助けを呼ばれても困るので、兵士たちを空いていた牢屋に放り込んで奥に向かう。


「姫様……このようなところで何をしているのですか?」


「……デュプロフ。同じ言葉をあなたに返すわ。外では騒ぎになってるのに、あなたがこんなところで何をしているのかしら?」


 進んでいくと地下牢の通路のど真ん中に、槍を持った一人の兵士が仁王立ちしていた。

 同じような鎧を身につけて、ヘルムをかぶって顔も分からないような量産型の兵士たちと違って、デュプロフは顔を出していて鎧もやや豪華、肩がけのマントも身につけている。


 年齢としては三十代ぐらいの男性で、ロンデルシアと睨み合っている。

 名前が出てきたことも考えるに、このゲートの中でも強者だろうと圭は感じた。


「混乱に乗じて、ここを誰かが通っては困りますからね」


「表で暴れてるのは暗黒竜よ? あなたたちが救世主だと騒ぎ立てているはずの。この期に及んでまだ暗黒竜が助けてくれると思ってるのかしら?」


「……知らないさ。俺はただ命令に従うだけだ」


 ロンデルシアの言葉にデュプロフは一瞬返事をためらった。

 しかしそんな迷いを振り払うように、デュプロフは槍の先をロンデルシアに向ける。


「…………忠義は結構でも、あなたの後ろには王も捕えられているのですよ?」


「俺が忠義を尽くしているのはミレイン様だ」


「こんな事態を招く間抜けな宰相に忠義を尽くすなんて、あなたも間抜けね」


「誰であろうとミレイン様を侮辱するのは許さないぞ」


 デュプロフの顔に怒りが滲む。

 どうやらこのような状態を招いたのは宰相であるミレインという人らしい。


 そしてデュプロフは王ではなく、ミレインに忠誠を誓っていて勇者を牢屋から出させるつもりがないようだ。


「叶わぬ野心だと気づきながら盲目的な忠誠を捧げるのはおやめなさい」


 命の危機を感じながらもロンデルシアは堂々と言葉を返す。

 ここまで王の娘、つまり王女や姫であるということをあまり感じなかったが、今はなんとなく人の上に立つような雰囲気がある。


「この……!」


 返す言葉もなくて、デュプロフがロンデルシアに襲いかかる。


「はっ!」


 圭が前に出てデュプロフの槍を受け止める。

 いかに言われようとも丸腰の女の子に襲いかかるのはいかがなものか。


「貴様……勇者の味方だな! ここは通さない!」


 地下牢の通路はさほど広くもない。

 通行に不便はないが、戦闘にはやや狭い。


 槍を武器として戦うのは大変だろうが、デュプロフはそこらへん上手く戦った。

 狭くて動き回れないことを逆手にとって、圭を近づかせない。


 槍の先を常に圭に向けるような形で距離を保つ。


「くっ!」


 圭は突きをかわす。

 目の前を通り過ぎる槍が持つ破壊力はここまで戦ってきた兵士たちのものとは比べ物にならない。


 だが圭に焦りはない。

 デュプロフの攻撃はよく見えていて、防御したり回避できないものじゃない。


 狭い通路を生かして戦うためにデュプロフもほぼ突きしかしてこない。

 負けない戦いをしているのかもしれないが、長く戦うほどにパターンが読めてしまう。


「なっ……!」


「いい加減飽きてきたよ」


 圭は頭を傾けて槍をかわした。

 耳のすぐ横を通り過ぎた槍を無造作に掴んだ。


「くっ!?」


 圭が槍を引き寄せる。

 片腕の力だったが、圭の方が強くてデュプロフは堪えきれずに引っ張られた。


 狙いは槍を持っている手。

 剣を振り下ろして無効化しようと思った。


「……くそっ!」


 槍にこだわって斬られるわけにはいかない。

 舌打ちしながらデュプロフが槍を手放した。


「だがそれでどうするつもりだ?」


 槍を手放したデュプロフは圭から距離を取るけれど、もはや勝負は決まったようなもの。

 武器を失ったデュプロフは眉間に深いシワを刻んで圭のことを睨みつける。

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