表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

836/837

暗黒竜撃退戦1

「どっちでもいい! とりあえず脱出するぞ!」


 不定期に揺れ、天井からパラパラと土が落ちてくる。

 地震ではなさそうな不自然な揺れなのは分かるが、今重要なのはここが地下であるということだ。


 周りは比較的しっかりしているが、現代のようにコンクリートで固められたトンネルというわけではない。

 振動の衝撃が加わると崩れてしまいそうな雰囲気がある。


 何が起きてるとか、地下牢までどちらが近いかとか考えているような暇もない。

 地下が崩れる前に移動しなきゃ危険だと圭は感じた。


「出口に近いのはキッチンの方です!」


「みんな行くぞ!」


 圭たちは走って脱出を図る。

 今のところ目立って崩れる兆候はないが、天井から顔に土が降ってきて煩わしさを感じる。


「ハシゴだ!」


 多少の曲がり角はあったものの、一本道なことに変わりはない。

 そのまま進んでいくと先に上に伸びるハシゴがあった。


「ほっ!」


 誰が先に、とか考えている暇はない。

 ハシゴはどうしても一人ずつ上がっていくしかない。


 先頭を行っていた圭がハシゴを登っていく。

 軋む木のハシゴを登って、上にあった金属の扉を腕で押し開ける。


「ここは……」


 キッチンと聞いていたけれど、出てきたのは暗い小部屋だった。

 ただ周りの状況を確認している暇もない。


「ここはどこなんだ? キッチンじゃないのか?」


 次に上がってきたのはロンデルシアだった。


「キッチンですよ」


 圭がどうなっているのだという目を向けると、ロンデルシアは膝についた埃を払いながら平然と答える。


「これのどこが……」


 周りには何もない。


「ええと……ここら辺」


 ロンデルシアはナイフを取り出す。

 みんなはハシゴを登ってきていて、ロンデルシアの行動は見ていない。


 圭は一人、そっと剣に手をかけて警戒する。


「この辺りなんですけど……」


 ロンデルシアはナイフの柄で壁をコンコンと叩く。


「あっ、ここですね」

 

 何をしているかと思ったら、壁のあるところを叩くと他のところよりも軽い音がした。

 小さく頷いたロンデルシアは、レンガのような長方形の石が組まれた壁をもうちょっと強くナイフで殴る。


 そのままナイフで殴っていくと、壁の石が一つ押されていく。


「よいしょ!」


 殴り続けると壁の石が向こう側に落ちて、ゴトンと音がする。

 四角い穴からは光が差し込む。


「手伝ってください」


 ロンデルシアが穴に手をかけて壁を引っ張る。

 圭もロンデルシアを手伝って壁を引っ張ると、壁の一部がゆっくりと開いていく。


「ここがキッチンです」


「……なるほどな」


 小部屋が人でいっぱいになって狭くなってきた。

 何人かで協力して壁を開くと、そこはキッチンだった。


 出てすぐ横にかまどがある。

 キッチンの裏に隠し部屋があったのだ。


「何が起きてるんだ?」


 ちょうどキッチンには人がいなかった。

 しかしそこからは大きな爆発音のようなものと人の悲鳴のようなものが響き渡っていた。


「……あれは」


 圭が窓から外を確認する。

 空中に巨大なモンスターの姿が見える。


 ブラックドラゴンだ。

 十八階で戦ったものと同じ姿をしたドラゴンが空を飛んでいた。


 町の方に視線を向けるとモンスターが町を荒らしていた。

 レッドスキルオーガの姿も見える。


 ドラゴンが赤い炎の火球を放ち、いくつもの家がまとめて吹き飛ぶ。

 地下で感じていた振動はこれだったのかと圭は顔をしかめる。


 キッチンに人がいないのも、こんな状況で料理を作っていられないからだった。


「あんなのと戦えというのですか……?」


 同じくドラゴンを確認したウェイロンも顔をしかめる。

 流石にドラゴンを相手にするとは聞いていない。


「まずは勇者を助けましょう」


「……そうすればチャンスが?」


 こんな状況で地下に行くなんてリスクが大きい。

 しかし圭がそう判断するのには、何か理由があるのかもしれないとウェイロンは感じた。


 もちろん理由はある。

 この世界は確実に十八階と同一の世界だと言える。


 ドラゴンが暗黒竜として君臨する魔王であるのなら、対抗する力となるのは圭たちではなく囚われている勇者である。

 今またドラゴンと戦っても勝てないことは目に見えていた。


「ロンデルシア、地下牢に案内してくれ」


「分かりました」


 ロンデルシアは力強く頷き、キッチンを出ていく。

 圭たちはロンデルシアについていく。


「ひ、姫様!?」


「騒がしいわね。状況は?」


 城の中は人が忙しなく行き交っている。

 しかし兵士っぽい人はおらず、メイドなんかの使用人のような人ばかりがウロウロしている。


 そんな中をいく圭たちは異様な集団であるものの、外の緊迫している状況のためか止めるような人もいない。

 ズンズンと城内を進んでいると、ロンデルシアに気づいたメイドがいた。


「暗黒竜が攻めてきて……モンスターも引き連れてきたので今町はてんやわんやの状況です」


「忌々しい宰相は?」


「どこにいるのか知りません……」


「アイツが望んだ暗黒竜なのにね」


 メイドは半ば走るようなロンデルシアの後をついてきた。

 やはりドラゴンのせいで城内も町も大騒ぎになっているようだ。


 兵士もそのせいで城の中にいない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ