多重ゲート1
急遽中国に行くことになった。
新しく現れた高難度のゲートを攻略させてもらえることになったのだ。
そのゲートが試練にあったゲートなのかも分からないが、とりあえず一つ攻略の許可が青龍ギルドに降りた。
圭たちは青龍ギルドに同行するという形で、攻略に参加させてもらえることになっている。
「向こうの意図は正確には分かりませんが……おそらく攻略に失敗したのでしょう」
中国に渡って青龍ギルドと合流した。
かなり急な話で、困惑しているのは青龍ギルドの方も同じだった。
ただなぜ急にゲートの攻略の許可が出たのか、ある程度の予想はできる。
「ゲートの出現位置は成都にも近い。攻略が急がれる場所にあります。攻略すればギルドのアピールにもなるのに、我々に任せるということは上手くいかなかった可能性が大きいです」
今回攻略してもいいと言われたゲートは大きな都市の近くに発生していた。
もし攻略できずにブレイクしてしまったなんてことになると大問題となる。
逆にちゃんと攻略すれば地域を支配するギルドとしてアピールするポイントになりうる。
それらのことから総合的に考えて、唐門ギルドが攻略に失敗して青龍ギルドにやらせようとしていると推測ができた。
青龍ギルドが攻略したと公表しない秘密保持契約まで結ばされたのだから、大きくは間違っていないだろう。
「相手もプライドがありますから……攻略に失敗したとは口が裂けても言えないでしょう」
「なるほど……わざわざ攻略の同行までありがとうございます」
本来なら圭たちだけで攻略するつもりだった。
だが今回は青龍ギルドに攻略権が明け渡された都合上、青龍ギルドに混じって攻略することになる。
むしろに一緒に攻略してくれるらしい。
「ですが……気をつけてください。向こうからのゲートの情報提供も一切ありません」
唐門ギルドはゲートの攻略に失敗していない。
あくまでもまだ攻略しておらず、青龍ギルドが攻略したいなら譲ってやるというスタンスである。
攻略失敗でも多少ゲートの中の情報はあるはずだ。
なのに今回は一切の情報がないと言い切られていた。
ゲートに全く触れていませんよというアピールなのだろう。
「本来なら近くで一泊したいところですがね……」
その他の条件も厳しい。
圭たちは大型バスでゲートに向かっていた。
体調を整えるということを考えると、近くにある大都市の成都でホテルなりを取って休みたい。
しかし成都に青龍ギルドが降り立つことはやめてほしいとまで言われている。
なんとしてでも青龍ギルドが攻略したことを隠して、手柄は自分たちのものとしたいらしい。
すごい大きなプライドが見えるものだと圭もため息を漏らしてしまう。
「もうすぐ着きますね。準備はこちらに任せてください」
近くの町で休めないのだから野営するしかない。
そこは流石の青龍ギルドで、野営のための道具や設備も最新のものを備えている。
ゲートに到着してみると、周辺は目隠し目的で簡易的な柵が建てられている。
その中に入って、青龍ギルドが野営の準備をする。
同時進行でゲート調査の準備も進める。
今時の中国はすごく進んでいる。
ドローンを飛ばして中の状態を確認することはもはや当然なのだけど、AIを搭載していてゲートの外から飛ばして、中の様子を記録して勝手に戻ってきてくれるのだ。
「高そう……」
「そうですね……これぐらいの金額に」
「ええっ!?」
ビル一棟買えてしまいそうな金額に波瑠は驚く。
武器は搭載していないが、モンスターの攻撃にもある程度耐えられて、逃げられるような速度も出せる。
カメラだけじゃなく、気温や気圧を始めとしたあらゆる環境データを記録集計できるようになっているドローンは、お高いなんて言葉じゃ済まない。
「ビルが飛んでる……」
大きなドローンがゲートの中に入っていく。
あとはしばらく待つだけで自動で中の情報を持ち帰ってくれる。
ただ青龍ギルドが誇るのはドローンだけじゃない。
大きな立派なテントも青龍ギルドの人たちによって張られている。
さらには大型バスに乗せてきた魔石を使って火を起こすコンロなんてものまで下ろされて、料理の準備を始めている。
外なんだけど、下手なホテルよりも快適に過ごせそう。
「ちなみにうちの料理人は上海出身なので、四川料理になんか負けないものを作りますよ」
ヤンの言葉にちょっとしたプライドを感じた。
確かにちょっとだけ本場の料理というものを期待していたところはある。
なんというべきか、料理でも多少のバチバチ感はあるようだった。
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「中は森林地帯。モンスターは確認できていません」
ドローンが無事に戻ってきて、解析班がドローンからの情報を元にしてゲートの中を解析する。
環境としては森林が大きく広がっているようで、入る分には危険な場所でないようだった。
ただモンスターの姿は確認できていない。
森もかなり生い茂っているタイプで、大きなドローンでは地上の様子を確認するのも容易ではないのだ。
立派なドローンにもこうした弱点があった。




