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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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ブラックドラゴン戦3

「訳わかんなすぎるな」


 今まで見ていた町の光景が夢だったのではないかと思えるぐらいに町は荒れてしまった。


「城に入るのはやめた方がいいな」


 これから入ろうとした城も半壊していて危険そう。

 中もだいぶ崩れているだろうし、何かのきっかけでさらに崩壊して生き埋めになってもおかしくない。


 安全を考えると城の探索はやめた方がいい。


「またしてもノーヒント……おおっ!?」


 何かありそうだった城が崩れてしまった。

 何もなかった可能性はあるが、そんな城が崩れてしまっては何かがあっても分からない。


 残されたのは荒れ果てた町。

 一番大きそうな町でこれなのにこれからどうしたらいいのかと困り果てていた。


 そんな時に、何かの声が聞こえてきた。

 大型のモンスターが咆哮する地響きのような声に、みんなはどこから聞こえるのか周りを警戒する。


「あっちだ!」


 カレンが城の向こう側を指差す。

 ちょうど城が崩れたところから黒い何かが飛び立っているところが見えた。


 大きな黒い翼を広げたそれは町から飛んで離れていってしまう。


「……ドラゴン?」


 その姿はドラゴンのように見えた。

 遠かったので確定ではないけれども、十八階の試練を考えると十分にあり得る。


「追いかけよう!」


 距離がある上に相手は空を飛んでいる。

 追いつけるはずはない。


 だがようやく見つけたこの世界の生命体に、圭たちは慌ててドラゴンが向かった方向に急ぐ。


「もう見えないか……」


 崩れたり潰れたりした家の間を抜け、がれきを乗り越えながら圭たちが入ってきたのとは逆側から町の外に出てきた。

 もうドラゴンの姿は見えなくなってしまっている。


「だけど山がありますね」


 ドラゴンを見失い、再三何のヒントも無くなった。

 ただドラゴンが向かっていたと思われる先には大きな山がある。


「……ハァ、向かうしかないか」


 何も分からないのに、流れに乗せられているような嫌な感じがずっとある。

 圭は不安を覚えてため息をつく。


「でも大丈夫なのかな?」


「何がだよ?」


「あれがドラゴンだとして、ドラゴンがあそこに向かったとする。じゃあ、あそこにドラゴンがいるってことだよね?」


「まあ、そうだな」


「その前に試練あったじゃん?」


 波瑠はまた別の不安を感じている。

 読めない試練部分はともかくとして、読める試練が一つあった。


 それは伝説の聖剣を手に入れろという試練だ。

 このまま行ってドラゴンと遭遇すると伝説の聖剣とやらを完全にスルーして、ドラゴンと戦うことになる。


 十一階のような扱い試練ならまだしも、ここまでで試練をスルーしてクリアしたことはない。

 それもまた大丈夫なのかと不安なのである。


「んー……どうなんだろな? 山行ってみれば剣あるとか?」


 順当にいけば試練が先にあるだろう。

 もしかしたら山に行ってみれば伝説の聖剣があるのかもしれない。


 圭たちは不安に顔を見合わせながらも、次は山に向かってみることにしたのだった。


 ーーーーー


「もう二週間……? いい加減にしてほしいよな」


「お風呂に入りたーい!」


 十八階にきて攻略を始めてからもう十四日が過ぎようとしている。

 こんなに長いこと同じ階層をうろつくのは初めてのことである。


 しかも戦闘もなく、なんのヒントもなく、ただただ広い十八階の中を移動しているだけ。

 食料など野営するためのものは十分に持ってきているが、風呂もシャワーもないのは女性陣にとって少し辛い。


 圭もフカフカのベッドが恋しく思っていた。

 キューちゃんのお腹を枕にして寝転がるのも悪くはないが、やはり寝るなら呼吸に合わせて上下しないベッドの方が良かったのである。


 ただその甲斐はあって、山は目の前に来ていた。

 こうなったら山に登ってみるしかない。


「トカゲが出るか……剣が出るか……」


 山はうっそうと木々が茂っている。

 てっぺんはだいぶ遠くに見えていて、山を進んでいくと緩やかに傾斜がキツくなっていく。


 時折風が吹いて枝葉が揺れるような音しかしない。

 何かの生き物の気配はいまだに感じられない。


「私……ここを攻略したらお風呂に入るんだ……」


「おい、そのフラグのような言い方やめろ!」


 何もなさすぎては雰囲気も悪くなる。

 波瑠が冗談を言ったりして、なんとか士気を保ちながら山を登っていく。


「あっ、私たちがいた町だね」


 ふと振り返ると木々の間から王城のある町が見えていた。

 相当上まで登ってきたようで広い世界が一望できている。


 遠くに見える王城のある町の他に、いくつか村のようなものがある。


「相変わらず町は荒れたままだな」


 細かい様子は離れすぎていて見えないが、王城が崩れていることは確認できた。

 圭たちが街を離れた時と状態は変わらないようだ。


「これは!」


「あの時聞いたのと同じ鳴き声だね」


 一切の生き物がいない奇妙な世界を眺めながら休憩していると、モンスターの声が響いてきた。

 それは王城の前で聞いたのと同じ声だった。


「山の上の方から聞こえたねぇ」


「……かなりヤバそうな気配がするな」


 鳴き声と同時に強い魔力も感じた。

 相当強いモンスターなことが鳴き声だけで分かってしまう。


 でも、行くしかない。

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