表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

814/837

リッチを浄化せよ5

「天地がひっくり返ったようだな」


 息も凍りそうな吹雪の中を進んでいくと気温が上がってくる。

 水蒸気の中に突っ込み、前後も分からないような白い世界を真実の目が映す黒い魔力のみを道しるべに進んでいく。


 そうすると視界が赤くなる。

 夜滝の魔法とアルトの魔法がぶつかり合う境目に来たのだ。


「ふう……」


 俺は一度息を吐き出すと、炎の中に突っ込んでいく。

 魔力を全開にして体を保護し、一気に突っ切る。


 夜滝の魔法とぶつかって威力はだいぶ削がれたはずなのに、それでも熱くて体が焼ける。

 体の何ヶ所かは火傷を負ったが、圭は炎のサイクロンの反対側から飛び出してきた。


 そこはアルトの目の前だった。

 黒い魔力はあるとの胸の真ん中に見えている。


 圭は黒い魔力を両断しようと剣を振り下ろす。


「はああああっ!」


『類い稀なる幸運の効果が発動しました』


 今度はバリアもない。

 大きな魔法を使うのに集中していたようだ。


 圭が感じていた背中の熱が消えた。

 炎のサイクロンを消して防御でもしようというのだ。


 だがもう遅い。

 圭の剣はアルトの頭を切り裂き、そのまままっすぐ胸の黒い魔力も真っ二つにした。


「……彼女に伝えて欲しい」


 半分になったアルトの体の右腕が動いた。

 圭の腕を掴んで、半分になった頭が圭の目を覗き込むように動く。


 見た目からは想像できない爽やかな青年の声が圭には聞こえた。


「すまなかった。約束を守ってあげられず……君のそばに…………いてやれなくて……悪かった…………そして、愛していた……と」


 炎のサイクロンが消えたせいか、一気に冷気が襲いかかってきた。

 火傷を冷やしてくれるような風にあおられて、アルトの体はバラバラと崩れてしまう。


『リッチを倒せ!

  リッチ クリア

  ―リッチナイト クリア

  ―リッチマジシャン クリア

  ―リッチガード クリア


 シークレット

 世界ヲ◽︎浄、化、◽︎ヨ クリア』


 目の前に表示が現れる。


「……伝えるよ。君の思い」


 リッチを倒した。

 ついでにリッチナイトも倒したことになっているので、ダンテが上手くやってくれたようだ。


 最後のほんの一瞬、アルトは自分を取り戻した。

 世界を守りたかった。


 そんな思いもあるのかもしれない。

 だけどアルトが最も守りたかったものは世界よりも何よりも、ただ一人の少女だったのかもしれない。


 後に残されたのは青い輝きを放つ大きな魔石。

 圭は魔石を拾い上げる。


「圭さん大丈夫ですか!」


 夜滝が魔法を止めて、みんなが駆け寄ってくる。

 肌が出ていた顔や手などに火傷を負っているのを見て薫が慌てて治療する。


「エルサント、これ」


「これは……」


「アルトが……残したものだ」


 圭はアルトの遺言をエルサントに伝える。

 エルサントは魔石を抱きかかえるようにして泣き崩れてしまった。


 アルトがいた場所も最後に浄化されて花が咲く。


「ありがとうございます……! これで彼も……静かに眠れるはずです……」


 特にお金なんかには興味ないのでアルトの魔石はエルサントが持っていればいいと思う。


「勇者様……」


「ああ、異世界の勇者様のおかげだ!」


 エルサントの仲間たちも集まってきて、圭に向かって膝をつく。


「ちょっ……」


「ありがとうございます、勇者様! このご恩は一生忘れません!」


 エルサントは魔石を抱えたまま、地面に額がつきそうなほどに頭を下げる。

 感謝はいいけど、勇者様はやめてくれないかなと思う。


「これで十七階を攻略したな。次は十八階……」


 だが喜んでいるエルサントたちの気持ちに水をさすこともできず、後で訂正しようと思いながらも圭はもうすでに次を見据えていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ