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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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リッチを浄化せよ4

「おおっ……カッコいいな」


 圭が炎に飲み込まれた。

 一瞬ヒヤッとする光景であったが、炎が切り裂かれて中から圭が飛び出してくるとカレンは思わず声を漏らしてしまう。


「ふぅ……」


 呼吸するのも苦しいほどの熱が迫り、視界が全て赤くなった。

 それでも圭は無事だった。


 剣に魔力を込めて魔法を切り裂いた。

 燃えてしまいそうな熱量があったけれど、全身に魔力をみなぎらせて燃えることを防いだ。


 髪の先は少し燃えてしまったが、それぐらいなら被害とも言えない。


「はああっ!」


 リッチといえど大量の魔法を使いながら、全くのクールタイムもなく次の魔法を放つことはできない。

 圭はリッチに向かって剣を振り下ろす。


『類い稀なる幸運の効果が発動しました』


 視界の端で類い稀なる幸運が発動した表示が現れていた。

 いまだにこれがどんなタイミングで現れて、どんな効果をもたらすのか圭はわかっていない。


 しかし邪魔になっているものではないということだけは確かである。

 剣がアルトのバリアに衝突する。


 ガラスが割れるような音が鳴り響き、何層にも重ねられたバリアが砕け散っていく。


「くっ!」


 圭の一撃はバリアを破壊し切った。

 けれど剣の威力が完全に殺されてしまって、アルトの肩の骨に僅かに剣が食い込んで止まる。


「うっ!」


 痛みも感じないアルトは杖を圭の前に突き出した。

 まるで壁にでもぶつかったような衝撃に襲われて圭は大きく吹き飛ばされる。


「圭さん!」


 全身に鈍い痛みを感じるが、薫がすぐさま治療を始める。

 骨折などの重傷もないのですぐに痛みが治っていく。


「させないよぅ!」


 圭に水と岩の塊が飛んでくる。

 夜滝が氷の柱を生み出してアルトの魔法に対抗する。


 氷の柱が突き上げて軌道が変わった岩の塊が圭の頭をかすめた。


「あっ、ちょっとギリだったねぇ」


 少し危ないところだったと夜滝は目を細める。

 圭は無事だったので結果オーライだと思っておく。


「私を忘れちゃ困るよ!」


 圭の攻撃にアルトの魔法の狙いが乱れた。

 波瑠は魔法の間を縫うように飛行して、後ろからリッチにナイフを突き出した。


「ほーら!」


 圭への攻撃を優先してバリアの再生が間に合っていない。

 今度は二枚突き破るだけでアルトにナイフが届く。


「おおっとぉ!?」


 ナイフから伝わってくる手応えは軽い。

 波瑠はそのままナイフを下に降ろしてアルトのローブを切り裂いて、後ろに下がった。


 波瑠がいたところに雷が落ちる。

 地面が雷で焼け焦げた。


「チッ……」


 リッチの体もスケルトンと同じ骨である。

 突き出したナイフはたまたま骨と骨の間に入ってしまった。


 振り下ろすべきだったと波瑠は小さく舌打ちしてしまう。

 だがバリアがどこまで戻っているのか分からなくて、突いた方が突破できそうだと思ったからしょうがない。


 背中部分のローブは大きく裂けた。

 骨の体が露出していて、次はナイフでの突きでも攻撃を外さない。


「相手も本気だな」


 アルトの周りに炎が渦巻き始めた。

 瞬く間に真っ赤な炎は大きくなっていき、ただのつむじ風のような炎が赤々と燃える巨大なサイクロンとなってしまった。


 魔力と熱を感じる。

 せっかく生えた草花も炎のサイクロンが発する熱で萎れてしまう。


「……止められるかねぇ」


 魔法で対抗できるのは夜滝しかいない。

 シャリンの本体がいたらどうにかなったのかもしれないが、ないものを考えてもしょうがない。


「上杉かなみにも負けないというところ……ここで見せておこうかね」


 夜滝は杖に魔力を集中させる。

 まるで炎のサイクロンに対抗するように夜滝の周りの温度が下がっていく。


 魔法を使うモンスターで最上級のリッチに対抗するのは簡単なことじゃない。

 それでもここまで自分を引っ張ってきてくれた圭のために、全身全霊の魔法をぶつけようと夜滝は魔法を展開する。


「全てを凍らせてみせるよ」


 夜滝がカッと目を見開く。

 杖を前に出すと極寒の風が巻き起こり、夜滝の足元が凍りついて広がっていく。


 氷の嵐が吹き荒れる。

 炎のサイクロンと氷の嵐が衝突して、水蒸気が周りを白く染め上げていく。


 圭と波瑠は少し下がって魔法のぶつかり合いの行先を見守る。

 熱いと思えば冷たくなり、冷たくなったと思えば熱くなる。


「祝福を……少しでもお力になれば」


 エルサントが魔法を維持する夜滝の肩にそっと触れる。


「ふおっ!?」


 温かい力が夜滝の中に流れ込んでくる。

 氷の嵐の吹き荒ぶ力が強くなり、圭も風に飛ばされないように踏ん張る。


 熱さを感じなくなり、寒さばかりが強くなっていく。

 ただ真っ白な水蒸気に包まれてどうなっているのか直接確認もできない。


「雪? 氷……?」


 周りの水蒸気がキラキラとし始めた。

 水蒸気に含まれる水が凍りつき始めている。


「……チャンスだ」


 夜滝が押している。

 圭はそう判断した。


 冷たく感じる空気の中で真実の目を発動させる。

 見抜きたいものはアルトの場所。


 キラキラ光る水蒸気の中で目を凝らしていると、黒い魔力が見え始めた。


「いける……今止めてやるからな」


 悲しい結末を変えてやる。

 圭は剣を握りしめて黒い魔力に向かって走り出した。

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