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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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神々の争い1

「また見つからないな」


「あー! もうムカつく!」


『怒らないでぇ』


「別にキューちゃんに怒ってるわけじゃないよぅ」


 再び十七階を攻略しようとしているのだが、相変わらず状況は進展しない。

 リスクを承知で十七階で寝泊まりして、攻略もすでに三日目になってしまった。


 波瑠が怒るのもしょうがない。

 ちょいちょいスケルトンは出てくるものだから、それもまたイラつく原因となっていた。


「どうしたらいいんだ……?」


 これだけ十七階を巡ってもリッチどころか、何のヒントもない。

 シークレットクエストを進めてみたらどうだろうかと考えたこともある。


 ただシークレットクエストの方も浄化しろなんて抽象的な内容である上に、こちらもヒントとなりそうなものもない。

 敵が現れなければ戦いようもない。


 八方塞がりの状況と言わざるを得なかった。


「ヤタクロウからの連絡もないしな」


 こんな状況で頼れそうなのはヤタクロウである。

 しかし一ヶ月以上もリッチがいない塔に通っていて、いまだに連絡がない。


「あれ見てください!」


 一度撤退して休もうか。

 そんなことを考えていたら空に何かが打ち上がった。


 花火のように何か白いものが飛んでいき、圭たちは警戒する。

 前に戦ったリッチマジシャンの巨大火球のこともまだ覚えている。


 巨大火球は危険な一撃であった。

 またあのような強い魔法な可能性もある。


 だが同時に状況の変化にみんなもほんのりと期待を抱いていた。


「何かが起こる……」


 空高く打ち上がった白い塊がカッと光を放ち始めた。


「うおっ!?」


 白い塊から何かのエネルギーのようなものが放たれた。

 まるで衝撃波のようにエネルギーは広がっていき、圭たちを飲み込んで、そして通り過ぎていった。


 攻撃ではない。

 敵意も感じなければ、エネルギーによって何かのダメージがあったわけでもない。


 まるで一陣の風の圭の頬を撫でていっただけだった。


「わっ!?」


「な、なんだこれ!」


 圭たちにはなんの影響も及ぼさなかった。

 しかし周りは大きく変化していた。


 十七階の世界は殺風景だった。

 黒っぽい地面が広がり、立ち枯れた木はあるものの植物なんかもない寂しい光景が続く。


 空はうっすらと曇り、なんとなく死を感じさせるような重たい空気感が常に漂っていた。

 そんな世界が一変した。


「花畑に……一瞬で……」


 白い塊から放たれた衝撃波が通り過ぎた後の地面には花が咲き始めた。

 一つ二つという話ではなく、地面が見えなくなるほどに足元は花で埋め尽くされてしまった。


 薄曇りだったら空は明るくなり、空気の重たさが一気に吹き飛んでしまった。


『リッチを倒せ!

  リッチ

  ―リッチナイト

  ―リッチマジシャン クリア

  ―リッチガード クリア


 シークレット

 世界ヲ◽︎浄、化、◽︎ヨ クリア』


 何が起きたんだと思っていたら目の前に表示が現れた。


「なんだこれ……文字化け?」


 圭の表示にはシークレットクエストが見えている。

 以前に見た時には世界を浄化せよと書いてあったはずなのに、


 今はところどころ読めなくなっている。

 ただクリアにはなっていた。


「圭君! 誰か来るよ!」


 圭が表示を小難しい顔をして眺めていると、白い塊が打ち上がった方から何者かが接近していた。

 十人ほどの人が圭たちの方に向かって来ている。


「スケルトンじゃない。……人?」


「この間のリウ・カイみたいなキョンシーでしょうか?」


「いや、顔にお札なんかついているようには見えないし、肌も普通の人っぽいねぇ」


 圭たちは武器を構えて警戒しながら相手が何者なのか見極めようとする。

 今の状況で一番出てくる確率が高いのはスケルトンである。


 ただ相手はどう見ても骨には見えない。

 リッチやリッチナイトでもなさそう。


 一応人に見える。

 となると思い出されるのは前回戦ったリウ・カイである。


 圭たちの目の前に現れたカイはモンスターにされていた。

 ただ皮膚が黒ずんでいたり、動きや様子がおかしなところがあった。


 キョンシーらしく顔にお札が貼られていたりもしたが、今迫って来ている人たちにそんな異常は見られない。


「普通の人……に見えるな」


 今の所ただの人のように見える。

 一番前を歩いているのは少女のようだった。


 目に布を巻きつけ、手には大きな白い杖を持っている。

 肌は陶磁器のように白くて黒ずんでいるところなどない。


 まだ距離はあるものの、敵対するような雰囲気は感じられなかった。


「おい! あんたたち何者だ!」


 メルシリアなど十一階の例もある。

 塔の中に現れるからといって敵であるとは限らない。


 交戦距離に入って来たと言っていいほどに相手が近づいてきた。

 カレンが盾を構えて声をかけると、相手はその場で止まる。


「…………なんだよ?」


 相手の方は何も答えず沈黙する。

 せっかく花が生えてきて周りの雰囲気が柔らかくなったのに、今は睨み合うような妙な緊張感に包まれている。


「コホン……異世界の勇者様。貴方様のことをお待ちしておりました」


 しばしの沈黙の後、目に布を巻いた少女がゆっくりと口を開いた。

 鈴のような声で発された言葉は圭たちにもわかるものであった。

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