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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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ずるい時間稼ぎ

「もう一ヶ月だよ!」


 波瑠がテーブルを叩きつける。

 イラついてはいるけれど、力加減はしているのでテーブルはギリギリ無事だった。


「まあ、そんなに怒るなよ」


 圭が波瑠のことを宥めるけれど、気持ちは分かる。


「リッチどこいったの!」


「本当に見つからないねぇ」


 相変わらず圭たちの塔攻略は十七階に留まっていた。

 なぜならリッチが見つからないから。


 世界の滅亡が近づいていることから塔攻略の頻度を引き上げた。

 疲労が溜まって動けなくなってはいけないので適度に休みも入れるが、これまでと比べもにならないほどに塔に入っている。


 塔入り口の検問職員と仲良くなりそうなほどである。

 しかしそんなに頻繁に塔に入っているのにいまだに十七階に留まっているのは、いくら探しても立地が見つけられないからだったのだ。


 理由は分からない。

 数日かけて十七階の世界をグルグルと歩き回ったのに、リッチどころか、残りのリッチナイトすら見つけられない。


 世界の滅亡まで時間がないのに、ひたすら骨を倒して回るだけではイライラが募るのも無理はない話だ。


「まさか私たちから逃げ回ってる?」


 なんで見つからないのか分からない。

 数日ぐらいなら何かの入れ違いで見つからなかったと考えられるが、一ヶ月も探して見つからないのは明らかにおかしい。


 リッチガードとリッチマジシャンが比較的簡単に見つかったことを考えても、やはり異常であるとしか考えられなかった。


「時間稼ぎ……してるんですかね?」


「その可能性はあるねぇ」


 何が原因なのか考えた時に、やはり世界の滅亡が迫っていることが理由だろう。

 ゲームに勝たせないために、強い敵を出して圭たちを倒すのではなく、そもそも圭たちに攻略させないという妨害に出た可能性は考えられる。


「せっっっっこ! 神様がそんな妨害するぅ!?」


 実際どうなのか分からないが、今のところ圭たちに攻略されたくない神たちの妨害という線が濃厚だ。


「リウ・カイの妨害が失敗したから……次の手なのかもな」


「ムカつくぅ」


 妨害するならせめて正面から挑んでこいよ、と波瑠は思う。

 リッチを隠して戦わせないというのは、すごく器の小さい妨害方法だ。


「でも探し回るしかないしな……」


 無理矢理リッチを引きずり出すような手段もない。

 圭たちにできるのは歩き回ってリッチを探すことだけである。


「あそこまで行くのも楽じゃないのにね」


 十七階までなると移動だけでもめんどくさい。

 十一階に泊まることで移動の時間を短縮はできるが、塔の中にいることでどんな妨害をしてくるのか予想もできない。


 なかなか塔の中に留まるというのも勇気がいる選択肢なのだ。


「そういえば青龍ギルドから返事は来たの?」


「ああ、カイ本人だったらしい」


 圭はカイから回収したネックレスと胴体の一部を青龍ギルドに送っていた。

 覚醒者ギルド経由に連絡を入れて、カイを倒したので確認をと伝えておいた。


 胴体の一部はカイだと上手く判別できればなと思ってのことである。

 ネックレスはカイがずっと持っていたもので、それだけでも圭たちの言葉の信憑性は高かった。


 加えて胴体の一部からカイのDNAが検出されたらしく、カイは圭たちに倒されたと認められた。

 圭は呼び出されて話と聞かれたりと少し大変だったりした。


「人をモンスターにして戦わせてくる……もしかしたらこれからもあるかもしれないな」


「だとしたら……結構気の重い戦いになるよな」


 カイは望んであのようになったわけではなさそうだった。

 こちらの世界の人がモンスターにさせられて、妨害に使われるとしたら許せない話であり、圭たちとしても戦いにくい相手になる。


「ゲートの出現率も上がってるんだろ?」


「新聞とかニュースとかでもそんな話やってるね」


 ゲームの進行は確実に早まってきている。

 たった一ヶ月であるが、世界に発生したゲートの数は爆発的に増えていた。


 高難度のゲートは少なく混乱するまでには至っていないが、このままゲートが増えていくと世界の情勢は悪くなるだろうと警鐘を鳴らす人が出始めている。


「とりあえずリッチを探すしかないな」


 空気が重たい。

 塔を攻略したいのに出来ないというもどかしさと確実に迫ってきているゲームの終わりに焦りを覚える。


「こんなずるい事するやつなんか大したことないに決まってるよ! 倒してやろ!」


「……そうだな」


 相手もなりふり構っていられない感じが出てきた。

 塔の攻略が先か、世界が滅びるのが先か。


 圭の胸には重たい不安が渦巻いていたのであった。

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