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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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力に飲み込まれた男6

「クソが……俺の人生…………こんなんばっかだ!」


 カイは吠えた。

 兄弟と比較されて役立たずと言われ、力を手に入れれば嫉妬にさらされた。


 力で押さえつければ家を追い出され、生きるために悪事に手を染めれば家から追われた。

 クソ喰らえな人生だった。


 それなりに楽しくやってきたけれど、何者でもなくただ平和に過ごす自分に憧れたことがないと言えば嘘になってしまう。

 もはや短絡的に目の前の欲を満たし、そして満たされない日々を過ごしていた。


 仕事を受け、人を殺し、金を受け取り、湯水の如く使い、どこかに満たされる心の穴を再び自覚する。

 せっかく良い武器を手に入れたって穴は埋まらない。


 嫌な予感を覚えながら受けた仕事で武器も腕も奪われた。

 それでも死にたくなくて、どこからか聞こえた声に応えた。


 力を与えられるはずだった。

 この世界を滅ぼして、別の世界で頂点に君臨するはずだった。


「俺はこんなものを望んでいない!」


 なのに気づいたらカイは人ですらなくなっていた。

 顔からお札が剥がれるまでの記憶はない。


 だが自分の体がもはや自分のものでなくなった感覚がある。

 意識が覚醒した時になかった腕が生えてきて、逆を向いていた首が元に戻った。


 腕や武器どころじゃないものを失った。

 もうカイに残されているのは、カイであるというプライドだけである。


「殺せ! 俺は俺のままで死んでやる! そして全員を呪ってやる! 俺をこんなことにしたやつも、お前らも……世界も全部!」


 カイの頭が不自然に膨れ上がり、目や鼻、耳から黒い血が流れる。


「頼む……殺してクレ」


「分かった。リウ・カイ……安らかに眠れ」


 結局何だったのかは圭たちにはよく分からない。

 今の状態がカイの望んだものではないことだけは分かる。


 だから、呪詛を吐き出しつつも殺してくれというカイの言葉に応えてやることにした。

 もはや精神的にも不安定なことは見て分かっていた。


 圭は剣を持ち上げ、一気にカイの首をはね飛ばす。


「せめてあいつに殺されるのはやめろと言ったな……だから殺されてやった」


 カイはどこでもないところをみて、凶悪な笑みを浮かべた。


「ザマァみやがれ!」


「うわっ!?」

 

 直後、カイの頭は大爆発を起こした。

 黒い血と黒い肉片が飛び散り、カイの体は倒れてそのまま動かなくなった。


「もしかして……これが神の介入ってやつ……?」


「そうか……外の世界の存在を連れてくるのは難しいから……こちらの世界の人を利用した……ということか。ひどく残酷なことをするものだねぇ」


「同情できないようなやつだけど……何だかかわいそうだな」


 最悪の人物が最悪の死に方をした。

 何となくカイの死に方に不憫さを感じた。


「でもさ、ゲートボスっぽかったよね」


 もしかしてこのまま圭たちに倒されることがなかったら、ゲートのボスになっていたかもしれないなんて波瑠は思った。

 不思議な人型キョンシーモンスターとして、ゲートの中で出てきてもおかしくない感じがあった。


「こんな感じで他の世界も滅んで……ゲームの中でゲートや塔の一部として出てきているのかもな」


 ゲートの成り立ちをちょっと見たような気分になった。

 圭たちがそんなことをしている間に、ダンテはリッチマジシャンを倒してくれていた。


 勝ったけど、後味が悪い。

 それでも前に進まねばならない。


「特に遺品になりそうなものは……ネックレスか?」


 せめてカイを倒したと証明できるものはないかと思って、黒ずんだ遺体を探る。

 カイは首から何かのネックレスのようなものを下げていた。


 なので圭はそれを持っていくことにしたのだった。

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