表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

805/837

力に飲み込まれた男5

「圭、足元だ!」


「うっ!」


 夜滝は地面に強い魔力の塊を感じた。

 圭が飛び退いた瞬間に、大きな爆発が起きて土埃が舞う。


 カイは戦いながら地面に魔力を埋め込んでいた。

 地雷のような魔力の爆弾は、カイの意思一つで爆発させることができる。


「みんな、少し離れておくれ!」


 魔力としてはかなり力強いが、地面の中に巧みに隠してある。

 魔法使いタイプで魔力に敏感な夜滝にしか、明確な位置は分からない。


 このまま戦い続けるのは危険である。

 圭たちはカイの周りから下がる。


 夜滝が氷の槍を作り出す。


「ふっ!」

 

 何十本という氷の槍を一瞬で作り出した夜滝は、杖を振り下ろす。

 氷の槍がカイに降り注ぐ。


 カイは両手を振り回して爆発を起こして氷の槍を防ぐ。


「うわっ!?」


 ただ夜滝の目的はカイを攻撃するのみではない。

 地面に突き刺さった氷の槍が次々と爆発を起こしていく。


 氷の破片が飛んできて、空中にいた波瑠は慌てて回避する。

 正確にいえば爆発したのは夜滝の氷の槍ではない。


 カイが地面に忍ばせていた魔力が爆発を起こしたのである。

 夜滝はカイを攻撃しつつ、地面に隠されていた魔力の塊に氷の槍を突き刺した。

 

 氷の槍に刺激されて、カイの魔力が爆発を起こしたのだ。


「ぐ……が……」


「はあっ!」


 武器もなく腕を振り回すだけで相手の攻撃を防ぐのはなかなか大変だ。

 キョンシーとして知能が落ち、生前の戦闘センスだけで戦っていたカイも氷の槍は防ぎきれていなかった。


 肩に氷の刺さったカイは掠れるような呻き声をあげている。

 その隙を狙って圭が斬りかかる。


 カイは振り下ろされる剣を腕を出して防ごうとした。

 しっかりと魔力を込めた剣はカイの腕を斬り落とす。


「なっ!」


「そうはさせないぞ!」


「私もいくよ!」


 カイは斬り飛ばされた腕を圭の方に伸ばす。

 爆発が起こる瞬間に、カレンが間に割り込んで盾を構える。


 同時に圭とカレンの逆側からは波瑠がカイに斬り込んでいた。


「残念だったな!」


「またしても腕もらい!」


 カレンはカイの爆破の衝撃に耐え切った。

 波瑠はもう一本の腕を斬り飛ばした。


「お前にやられたこと……ちゃんと覚えてるぞ!」


 カレンはあの時のお返しとばかりにカイの頭をメイスで殴りつける。

 ゴキリと鈍い音がしてカイの首が半回転してしまう。


 人間ならば確実に死んでいるダメージ。

 フラフラとカイは後ろに下がり、体をブルブルと震わせる。


「お札が……」


 カレンの一撃で、カイの顔に貼ってあったお札がひらりと落ちる。


「クソが……」


 カイはいまだに再生しない腕で頭を挟むと、無理矢理回転させて前に戻す。


「俺に何が……」


 カイの腕がまた生えてくる。

 肩に刺さった氷の槍を引き抜き、カイはどす黒く染まった目で周りのことを見回す。


「俺に……何があった!」


 カイが叫ぶ。

 口から黒い血が噴き出し、声はかすれている。


「なんだ?」


「クソクソクソクソ!」


 カイが急に喋り出して圭たちは動揺する。

 全身をかきむしるカイの様子は明らかにおかしくて、手を出すにもあまり近寄り難い雰囲気がある。


「やめろ……くだらないことを言うな……俺の頭から出ていけ! ぐうっ!」


 カイは頭を押さえて膝をつく。


「俺が望んだことはこんなことじゃない……もう遅いだと? 勝手に俺をこんなことにしてタダで済むと……うあああああっ!」


 何かと会話しているような様子のカイの頭がボコリと膨らんで、痛みにうめくように叫んだ。


「クソが……やるならやってみやがれ……」


「何と戦ってるんだ……?」


「さあ……ただなんか……すごく怖い」


 カイの目からは黒い血の涙が流れている。

 状況が分からず圭たちはただただ困惑するしかない。


「おい……」


「うわぁ……こっちくるよ」


 カイはよろけながらも立ち上がると、圭たちの方にゆっくりと歩き始めた。

 カレンが盾を構えて警戒するも、カイの足取りは弱々しい。


「お前……」


「お、俺?」


 カイは圭のことを指差した。


「殺せ……俺を殺せ!」


 カイが叫ぶとその度に口から黒い血が飛び散る。

 突然の指名に圭は驚く。


「俺は…………こんなもの望んでいない。頭の中で声がする。お前を殺せと、声がする。だから俺を殺せ」


 瞳孔が開き切った目を圭に向け、カイはカレンの盾を掴むと押しのける。


「俺はこんなコエに、従わない。ムカつく。お前を殺せというなら、オレ、がお前に殺されてヤル」


 昔からそうだったとカイは思った。

 周りが何かを自分に望んできた。


 一番であることを望み、自分たちにとって都合のいい人形のように動くことを望まれてきた。

 だから全てに反抗する。


 人が持つものを望み、他人の望みは叩き潰した。


「オレ、は、誰にも従わない……オ! れは……」


 カイの頭がぼこぼこと膨れ上がる。


「ハヤク、コロ、せ……コロして、くれ……」


「圭君……」


「なんだか分からないけど……解放してやるよ」


 カイは何かに抵抗している。

 そして抵抗して、苦しみを受けている。


 何が起きているのか分からないけれど、なんだかすごく胸が苦しい気分になった。

 終わらせてやらねばならない。


 そんな思いにさせられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ