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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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力に飲み込まれた男1

「目の前のことからコツコツと。まずは十八階だ」


 決意新たに塔に挑む。

 何か特別なことは何もなく、目の前の試練を乗り越えるだけである。


 シークレットも気になるところだけど、そちらは攻略しているような暇がない。


「リッチ討伐……さっさと済ませて次行くぞ!」


 数ヶ月という期間は短いが、ここまでのことを考えると攻略には十分な時間である。

 圭たちは準備を整えて、十八階までやってきていた。


 『リッチを倒せ!

  リッチ

  ―リッチナイト

  ―リッチマジシャン

  ―リッチガード クリア


 シークレット

 世界を浄化せよ』


 十八階の試練はリッチを倒せとなっている。

 表示からするに本体となるリッチがいて、リッチの配下であるリッチナイトやリッチマジシャンがいるのだろうと予想している。


 リッチガードについては前回倒した。

 あとはリッチマジシャンとリッチナイトである。


 倒すのにもまず相手を探さねばならない。

 圭たちは十八階を歩き回ってリッチを捜索していた。


「リッチガードの感じなら戦うのにも問題はなさそうなんだけどな」


 現れたスケルトンを切り裂いて倒す。

 リッチガードも決して弱い相手ではなかったけれど、フィーネに倒されてしまった。


 リッチマジシャンやリッチナイトがリッチガードと同程度の相手だと仮定して、リッチガードと同じくそれぞれ別で戦うことになるのなら意外と倒せそう。


「なんていうかさ……やっぱり塔ってちょっと楽だよね」


「楽ってことでもないけど……まあ、そうだな」


 これから外の世界では他の世界を滅ぼすようなモンスターが出てくる。

 それに比べて塔の中のモンスターには理不尽な強さはない。


 楽に攻略してくることができたなんてことはないけれども、倒せないモンスターが出てきたと思うようなことの方が少ない。

 この先どうなるのか分からないが、やはりクリアさせようという気概は感じる。


「そもそも塔に求めたのはドラマだからな」


「あれ、ヤタクロウ? いいのか出てきて」


 気づいたら圭の目の前にクルクルと回る黒い羽が飛んできていた。

 低い男性の声が聞こえてくる。


 ヤタクロウだとすぐに分かったのだけど、こんなに簡単に声をかけてきてもよかったのかと圭は驚く。


「本来は良くない。だが向こうも色々と手を出そうとしているらしく、そのせいで色々穴もできているのだ」


「そうなのか。手を出そうとしてるって大丈夫なのか?」


「今のところは、な。だがこれから先少し厳しくなるかもしれない。さっきも言ったがこの塔に求めたのはドラマだ。負けた世界……何かのきっかけがあれば本来助かったかもしれない、もしかしてというストーリーを秘めた世界を各階に配置している」


 塔の世界は少し特殊であった。

 勝ち組の世界は塔の中にほとんどない。


「塔の中という限定的な空間において、外の挑戦者が上手くやれば、世界が上手くいった場合の仮の状況を再現することができる……というのがゲームに参加する報酬みたいなものなのだ。お前たちが攻略して上手く終わりを迎えた物語は意外と人気なんだぞ」


「へぇ、そんな感じだったんだ」


 そんなルールで塔の世界が選ばれていたなんて知らなかった。

 そう言われてみれば十一階なんかその傾向が顕著であったことにも気づく。


「攻略そのものもドラマチックになるように、そしてシークレットクエストを通して世界の改変という内容も今のところ目新しくて面白く思ってくれているのだ。ただそのせいで攻略の難易度が低くなって今こうして焦っている神が出てきているがな」


 もちろんある程度の難易度も考慮に入れていたが、今回は見ている神々が楽しめることを優先にしていたのである。


「今日も警告しにきた。自分が稼いだポイントを浪費することも構わず、塔にも介入しようとしている奴がいる。厳しくチェックしているが、何かがすり抜ける可能性がある」


 塔という存在もまだ未熟なものだ。

 できる限り完璧なルールに仕上げて、神が介入できないようにしているけれど、何事も全く穴のない完璧などあり得ない。


 ここまででも他の神が塔に介入したこともある。

 何が起こってもおかしくないというのがヤタクロウの警告であった。


「だが期待している。お前たちがこのゲームを終わらせてくれることを。俺の世界を奪い去ってくれたクソみたいな神々に手痛い敗北を味合わせてくれ」


 黒い羽が煙のように消えていく。


「なんつーか結局のところ警戒しろってだけの話だよな」


 どんな脅威があるのか具体的な内容の話はない。

 警告はありがたいのだけど、何に対してどう警戒したらいいのかもわからない。


 カレンは盛大にため息をついてしまった。

 何が起こるか分からないから警戒しろって話なんだろうけど、何も分からないのに警戒しようもない。


「ま、確かにね」


「せめてもうちょっと具体的にこう危ないとか言ってくれんならさ」


 せっかくのヤタクロウの忠告もみんなには少し不評である。


「最終的には塔を攻略することに変わりはないからねぇ」


「ピピ! 前方に骨!」


「フィーネがんばれぇ〜」


 ヤタクロウの期待も背負いつつ、圭たちは地面から湧き出てくるスケルトンと戦い始める。

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