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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十四章

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影と戦って

 十五階は自分との戦いであった。

 懐かしく、抗いがたい温かさにも負けずに前に進むことを選択せねばならないのだ。


 十五階が自分の心との戦いであるというのなら、十六階は自分自身との戦いである。

 十六階に上がると、目の前には十五階と同じく扉がある。


 そこを抜けると一緒に入ってきたはずの人はおらずに自分一人だけになってしまう。

 そして気づくと目の前に影の人が立っているのだ。


 その影は自分と全く同じ能力を持っていて、襲いかかってくるのである。

 影を打ち倒すことが十六階の試練だ。


 単純であるが、決して簡単な試練ではない。

 同じ能力の相手なので、能力におけるに優位性は全くない。


 むしろ戦いにおいては苦戦を強いられることの方が多いのだ。

 なぜなら、影の自分は自分の能力を最大限活かして戦ってくるからである。


 正直自分の能力を最大限に活かして戦っているような人の方が少ない。

 特に圭たちはもともとの能力を活かして戦ってきたのではなく、成長してきたという側面がある。


 自分の能力の全てを知る前に強くなってきてしまった。

 どこまで力を出せるのか、どんな動きができるのか、どこまで耐えられるのか。


 常に上限が上がっていってしまったために圭たちはそれを理解していないのである。

 だから十六階の試練は圭たちにとってとても苦労するものとなった。


「くっ……この!」


 圭は剣を振る。

 しかし影の圭は軽く回避する。


 油断すれば己の影に殺される。

 けれども十六階は見方を変えれば成長の場としてもふさわしいのであった。


 自分がここまでできる。

 こんなふうに戦えるのだと命懸けで学んでいく。


 能力によっては決死の戦いになることも少なくないのだけど、圭のスキルは戦闘向けのものではない。

 上手くやれば戦いから離脱して十五階に戻ることもできる。


 十六階に足止めされること数日。

 圭は自分と戦い続けていた。


 時に逃げて休みつつも、自分の動きというものを理解していっていた。

 だが学んだということを影も学んでいて、入り直すたびに少し影も強くなったりしている。


 つまり圭も成長しているのだ。


「だんだん楽しくなってきた気がするよ……」


 危ない場面は何度かあった。

 自分が攻撃スキル持ちではなかったことを、感謝するような時もあるほどだ。


 和輝に習っていた剣を自然な形で繰り出していて、こんな動きができるのだと気づきを得た時もあった。

 少しずつ圭と影の圭の力が拮抗し、長く続く戦いになり始めている。


 体と能力の使い方を分かっていなかった圭も、自分の力の使い方というものを理解し始めていた。


「どうしたらお前を超えられる?」


 剣を構えた圭は影の圭に疑問を投げかける。

 自分と同じ能力を持つ相手を倒さねばならない。


 このまま戦い続けて拮抗状態が続くだけで倒すことはできない。

 影の圭の方が体力に底がない分、圭の方が不利である。


 倒すには影の圭を越える必要がある。

 その一手が分からない。


「俺にあって、お前にないもの……」


 鍔迫り合いをしながら影の圭と睨み合う。


「はっ!」


 グッと体全体に力を込めて、影の圭のことを押し退ける。

 シャリンのためにも早く十七階に行きたい。


 これ以上ここで足止めされているわけにもいかないのだ。


「シャリンのためにも…………シャリン……」


 影の圭が圭に斬りかかる。

 特別なことはないけれど、鋭くためらいのない一撃は圭にも繰り出せる攻撃なのである。


 けれども圭は一つ、影の圭との違いを見つけた。


「そうだな……俺には友がいる。共に戦う……仲間がいる」


 影の圭には影の圭しかいない。

 しかし今の圭には仲間がいる。


 十六階の攻略を待ってくれているみんながいるのだ。

 仲間のため。


 仲間を守るため。


 『スキル導く者が発動しました。

 守るべきものを守るため眠っていた力が一時的に解放されます』


 仲間のためだと思った瞬間、圭のスキルが発動した。


「はあっ!」


 圭の剣が、影の圭の剣を弾き返す。

 導く者というスキルがなんなのかいまだに分からない。


 ただ導く者を発動させるためには強い思いが必要だ。

 影にそんな思いはない。


 体に力がみなぎり、これまでにないほど気力が溢れてくる。

 もはや互いの手の内は分かっている。


 ならば純粋な思いの強さが相手を上回る鍵となる。


「はあああっ!」


 圭が剣を振り下ろし、影の圭を切り裂いた。


「はぁ……はぁ……」


 長い戦いだった。

 でもすごく実りある戦いだったとと思う。


「ピピ……終わった?」


「ああ、終わったよ」


 おそらくフィーネに助け立ちしてもらうという方法を持ったなら、簡単に終わったのだろう。

 フィーネは圭と一緒にいられた。


 さらに影の圭は出たが、影のフィーネは出てこなかった。

 フィーネが圭と一緒に戦えばサクッと終わったのだろうけど、自分で乗り越えなきゃいけない気がして圭は一人で戦った。


 ようやく乗り越えた。


「行こうか。次は十七階だ」


「シャリン! シャリン!」


「ああ、きっと会えるさ」


 いつの間にか黒い扉が現れていた。

 圭は扉を開けて十七階に向かっていったのである。

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