親子の再会2
「のぅ、それを見せてくれ」
使い道も分からないなと思っていたらダンテの胸ポケットからルシファーが顔を出した。
「これをか?」
「ふむ……これは使えそうだ」
「使えそうって……何に使えるんだ?」
ジロジロと人形のことを見たルシファーは大きく頷いた。
ルシファーの中では用途が見えているようだが、圭にはなんのこと変わらなくて眉をひそめてしまう。
「忘れたのか?」
「何をだよ?」
「シャリンのことだと」
「もちろん忘れてなんか……あっ、まさか……」
ハッと気づいたような圭の顔を見て、ルシファーはニヤリと笑う。
「これならばシャリンの力にも耐えられるだろう。降臨の依代とできる」
圭たちは人形を求めていた。
それはシャリンのためである。
魔界に連れ戻されてしまったシャリンを、再び現世に連れてくることはほとんど不可能だ。
仮に連れてきたとしても、また連れ戻されてしまう可能性の方が高い。
だがルシファーはこうしてここにいる。
それは人形に意識を宿す降臨というもののためであった。
本来人の体なんかに降臨するものだが、悪魔の力を受け止められるならものにも降臨できる。
シャリンがせめてみんなといられるように、ルシファーと同じく人形に降臨させようとしていた。
「じゃあこれにシャリンを?」
「うむ。見た目は多少メタリックだが、降臨して馴染んでいけばシャリンっぽくもなるだろう」
人形というかロボ感もあるけれど、降臨して馴染んでいくと降臨した悪魔の姿に人形も影響を受けて変化していく。
見た目がどうあれみんなといられるならシャリンも文句はないだろうと思った。
「なんか先になっちゃったな」
人形を探すために黒岩の娘を助けようとしていた。
なのに黒岩の娘を助けたら、ついでに人形も手に入れてしまった。
悪いことではないのだけど、想定していた流れを追い越してしまった感じがある。
「ピピ……シャリンとまた会える?」
「ああ、会えるかもしれないな」
フィーネがキラキラとした目で圭のことを見ている。
悪魔と異世界のゴーレム。
不思議な二人だが、なんとなく波長があっていて親友である。
再会を心待ちにしているフィーネは嬉しそう。
「他にも少し準備が必要なものはあるが、用意はできるだろうな」
「やったー!」
「とりあえず塔を出ようか」
フィーネは両手を上げ、クルクルと回転して喜びを爆発させている。
何はともあれ塔を出なければいけない。
黒岩の娘を助けることに成功した。
古代遺跡を抜けたのなら大きな危険もない。
圭たちは降りていって塔を出た。
一応黒岩の娘は塔内で見つけた覚醒者を助け出したということで処理をして、外に運び出した。
黒岩の娘はブラックマーケットの方でなんとかするらしく、圭たちは軽く話だけ聞かれて解散することとなったのである。
「ピピピピ……シャリン、待ってて!」




