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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第二章

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小嶋金融3

 何事もなく済めばよかったのだけどそうもいかなかった。

 部屋で渡部が大暴れしていたことは知っているので危ないこともあるかもしれないと思ってカレンと優斗には近くのホテルに泊まってもらった。


 少なくとも和輝が復帰して仕事などを再開して人目につくようになるまではと思ったのである。

 安い宿でいいと言っていたけどセキュリティの関係もあるので良いホテルに泊まっていた。


 その間に問題が起きたのである。

 まず工房に泥棒が入った。


 窓が壊されて家の中が荒らされていた。

 幸いなことに現金など家に財産を置いてはいなかったので盗まれたものはなかった。


 けれど地下の装備品を置いてある部屋も鍵がかかったドアが壊されて侵入されていたのに盗まれたものはなかった。

 警察もまるで何かを探していたようだと首を傾げていた。


 なので正確には泥棒だったのかも分からない。

 住居の侵入と窓などを壊した器物損壊はあっても特別盗まれたものがなかったから。


 心当たりは、と聞かれて頭に浮かんだのは小嶋金融であった。

 しかし小嶋金融が泥棒に入ってまで何を探しているのか見当もつかなかった。


 結局疑わしい相手もおらず、すぐに換金できそうなものがなかったから諦めたということになった。


「まさか泥棒が入るなんて……」


「ホテルに泊まっててよかったですね」


「その後だって……」


「あれは……どうなんでしょうね」


 八重樫工房に泥棒が入った件では被害も大きくなかったので地元紙の片隅に小さく載る程度だった。

 けれど泥棒騒ぎの後ニュースになるような大事件が起きた。


 正確には圭やカレン、八重樫工房が関わったものではない。

 犯人不明の大量殺人事件というのが新聞の見出しに載った。


 被害者は小嶋金融の社員たち。

 その中には渡部もいた。


 見出し通り小嶋金融の社員たち全員が虐殺されていたのである。

 やり方はグレーとはいえ一般の会社であり会社も街中にある。


 全員が虐殺されていたニュースはネットやテレビまでほとんどのメディアが取り上げた。

 どうやら犯人は防犯カメラの映像から覚醒者の指名手配犯で凶悪な人物のようであると報道されていた。


 犯罪者による突発的な犯罪や金融会社であるのでお金を借りようとして断られたことによる逆恨みなど色んな人が色んな憶測を立てた。


「関係ない……とは思うけど」


 理由は分からないが犯罪者による事件であることはほぼ確定なようだ。

 ならばそこに関して八重樫工房は関係があるはずがない。


 そう思いたいのだけどこんなタイミングで起きたことなので何も関係ないだろうと楽観的に考えられないのもまた事実であった。

 多少の関わりがあっただけに後味の悪さを感じてしまう。


「小嶋金融が襲われた件は別にしても泥棒は多分そうでしょうね。何か狙われるような心当たりは?」


「なんもないよ。お金だって返したばかりなんだからないの分かってるはずだろ?」


「確かにね」


 泥棒は小嶋金融だと思う。

 タイミング的にも状況的にもそれしか考えられない。


 近所で他に泥棒に入られたところはない。

 確実に八重樫工房を狙っている。


 にも関わらず盗まれたものはない。

 狙っていたものや理由があるはずなのだけどカレンは全く分からなかった。


「以前一度言われたことがある」


「爺さん?」


「最初借金について話を持ってきたときに言われたんだ。『ものでもいい』ってな」


「もの?」


「てっきり俺は商品となってる装備品でいいのかと思ったんだが見せても違うって言われてな。今思えばアイツらの狙いはアレだったのかもしれないな」


「アレってなんだよ?うちにそんな高価なものあったか?」


「……価値は分からん。それに正確にいえば俺のものでもない」


「どういうことだよ?」


「少しばかり昔のことだ。俺がまだ動けた時、覚醒者として活躍していたことがある」


 和輝は第二期覚醒者と呼ばれるかなり早い段階で覚醒者となった人であった。

 当時からもうすでに若いとはいえなかったが腕っ節には自信があったので今のように刀匠として仕事をするかたわらに覚醒者としても活動を行なっていた。


「その時に威勢のいい若いのがいてな。可愛がっていたんだ」


 まだ法律も整備されておらず、体系的な活動もようやく模索されてきたような状況だった。

 その中で和輝は若くて人のために危険な状況にも突っ込んでいくとある覚醒者に目をかけていた。


 無謀なこともするが困っている人を放っておけないような真っ直ぐな人であった。


「あるゲートを攻略することになってな。俺とそいつも一緒だったんだ」


 攻略は順調だった。

 顔を知っている人も多く、連携もそこそこ取れていたのでボスのところまで被害も少なくたどり着くことができた。


 だがそのボスはなかなか曲者だった。

 注意を引こうとするタンクを無視して後衛を狙う狡い知恵を持っていた。


 なんとか死傷者が出ないように戦ってボスを追い詰めた。


「けれどそいつは最後の足掻きだろうが後衛に突っ込んで自爆しようとしやがった。それでそいつはみんなを助けようと突っ込んでいってな。なんとか自爆を止められたのだけどそいつを手助けしようとして俺はケガを負った」


 足を大きくケガした和輝。

 すでにみんな満身創痍で簡単な止血程度にしか治療ができなかった。


 時間が経つとケガは完全に治せなくなる。

 ゲートを出た時には和輝のケガは完全には治せなくなってしまっていたのであった。

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