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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十三章

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何かの研究所5

「そこは心配いらない」


 ほんのちょっとだけ重くなった空気の中でアルファが口を開いた。


「何かあるんですか?」


「彼女はアーティファクトを持っている。身に危険が迫った時に発動するもので、効果は絶大だ。その代わりに……危機が去るまで一切動けなくなるという特徴がある」


「そんなものが……」


「じゃあ……生きてるけど動けない状況になってる可能性があるってこと?」


「そうだ」


 まがりなしにもブラックマーケットのボスの娘である。

 様々な物が流れてくるブラックマーケットには有用なものも流れてくることがある。


 黒岩の娘は、身を守るためのアーティファクトを持たされていた。

 高い防御性能を誇るアーティファクトで、持ち主に命の危険が迫ると勝手に発動する。


 一方で守る代わりに身動きが取れなくなってしまうというのが弱点ともいえるものだった。

 アーティファクトが発動していれば、黒岩の娘の命は無事だろう。


 だがいまだに近くに脅威があるとアーティファクトは発動し続けるので動けない可能性がある。


「まあ、一度限りの発動だから脅威がなくなってアーティファクトが解除され、再び危機に晒されるようなことがあれば分からない」


「結局生きてるかは分からない、ということだね」


 帰ってこないにも関わらず生きている可能性はいくらか出てきたが、相変わらず死んでいる可能性もある。

 なかなかモチベーションも難しい。


「……ねぇ、あれ大丈夫かな?」


「ちょっと怪しいな……」


 進んでいくと廊下にゴーレムが立っていた。

 人型のゴーレムで、腕が床につくほどに長い。


 今のところ離れているために動かないけれど、動かないゴーレムなのか、今はまだ動いていないだけなのか分からない。


『研究所用守衛ゴーレム

 研究所の中を守るために作り出されたゴーレム。

 広くない通路でも戦えるように小型化されているが燃費が悪い。

 予算の都合上素材は普通のものしか使われていない。

 魔石はいいもの使っているが、ゴーレムに組み込まれたせいか味が平坦になっている』


 一応鑑定してみるとただの人形ではなく、ゴーレムはゴーレムだった。


「これが使えるか試してみよう」


 圭は懐から先ほど入手したキーを取り出す。

 カレンに前に立ってもらって慎重にゴーレムに近づいていく。


「おっ! 動いたぞ!」


 ゴーレムの目が赤く光る。

 体は動かず目だけを動かして圭たちの方を見る。


「〜〜〜〜」


「……なんだって?」


 ゴーレムが何かをしゃべった。

 赤い目が再び光を失って、ゴーレムは動かなくなる。


「ブリガード、承認」


「っていってたのか?」


「ピピ、そう」


 どうやらキーの効果がちゃんとあったらしい。

 念のため警戒しながらゴーレムの前を通ったけれど、ゴーレムはそのまま動くことがなかった。


 さらにそのまま進んだ圭たちは大きな扉に突き当たった。

 手をかけて開くようなところもない扉で、押したり引いたりしても開かなそうである。


「あれに、それを近づけてみたらどうだい?」


 扉の横には四角い出っ張りがあった。

 圭はそこにキーを近づけてみる。


 すると出っ張りの真ん中が開いて、ゴーレムの目のように赤く光るものが現れた。

 キーが反応を見せて青く光ると扉がスーッと横に開いた。


 ゴーレム避けになるだけじゃなく、ちゃんと扉も開いてくれるらしい。


「うわっ……なにここ……」


「急にSFチックになったな……」


 扉の先は異様な光景が広がっていた。

 ガラス張りの大きな円柱形の柱が何本も並んでいる。


 そしてガラスの中には薄緑色の液体が満ちていて、液体の中にゴーレムのようなものが浮かんでいる。


『生体ゴーレム357789

 世界の終わりを乗り越えるために肉体をゴーレムとして再構築しようとしたモノ。

 形はそれっぽくなったが中身のないただの人形となってしまった。

 元の体の持ち主は父親の跡を継いでパン屋になる夢を持った少年だった』


「………………」


「圭、どうしたんだい?」


 ふと立ち止まった圭に、みんなも立ち止まる。

 真実の目を使って一つゴーレムを見てみた。


「……いや、なんでもないよ」


 短い説明文だが、この世界の残酷さを垣間見た気になった。

 ここにあるゴーレムはヒトで作られている。


 なんとも言い難い事実に衝撃を受けた圭だったが、わざわざそれをみんなに伝えることはない。

 圭は曖昧に笑ってまた歩き出す。


 広い部屋の中には多くのゴーレムがある。

 これら全てがヒトを使ったゴーレムだとしたらかなりエグい話である。


 だがよく見ればかなりヒトっぽいものもあれば、ゴーレムの大きさもそれぞれで、子供のようなものもある。


「研究って……こんなことを研究していたのか?」


 避難所、となっていたのも今から思えば怪しく感じられてきた。


「人を使って研究……実験していた?」


 なんだか途端にこの場所が嫌なものに感じられてきた。

 早く黒岩の娘を探し出して帰りたい。


 圭はそう思ったのだった。

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