何かの研究所3
「確かに……音が違う…………かも?」
カレンがメイスで軽く床を殴る。
言われてみればアルファが立っていたところ周辺の音が違っている。
「カーペット剥がしてみようか」
見た感じカーペットというよりもカーペットの下だろう。
カーペットを剥がすくらい時間がかかることでもない。
圭たちはカーペットを引っ剥がしてみることにした。
特に固定されているわけでもないカーペットは端に手をかけると簡単に剥がすことができた。
「扉……かな?」
カーペットを剥がして端に寄せてみると、床に金属の扉のようなものがあった。
「うーん、開けられそうな感じではないな」
手をかけられるような取っ手なんかはない。
「脱出用の扉がねぇ?」
外から開けられないようになっている。
出入り口というよりは出口かもしれない。
「まあ開けられないか試してみようか」
圭は剣を抜いて床との隙間に差し込む。
「ふっ!」
グリグリと少し奥まで入れて、テコの原理で持ち上げて開けようと試みる。
「フィーネもやる!」
圭の服の中から飛び出してきたフィーネが人型になる。
そして右腕を薄くして圭の真似をして差し込んだ。
フィーネの方が剣よりも薄くできるので奥まで差し込める。
「ぬぬぬ……」
「少し動いたな」
フィーネと圭の二人力で扉が少し浮き上がる。
「よい……しょ!」
「おっ、これぐらいなら……」
二人でさらに力を込めるとさらに扉が浮いて、指が入れられそうなほどに隙間ができた。
カレンはメイスの先端を差し込んで、安全を確保すると手を入れて扉に力を込める。
「私もやるよ」
「手伝おう」
波瑠とアルファも手伝って扉を持ち上げる。
分厚い金属の扉が少しずつ持ち上がっていく。
「あとちょっと……!」
数人がかりでようやく扉を開けることに成功した。
「はぁ……階段か……」
開けてみると下には階段があった。
「中はどうなって……」
「みんな、伏せるんだ!」
階段を覗き込んでいると、ダンテとベータが家の中に飛び込んできた。
素早く察した圭たちは家の玄関から見えない位置に隠れる。
外から重たい足音が聞こえ、丸ゴーレムが家の前を通り過ぎていく。
「……行ったようだな」
「こわぁ〜」
「夜滝……何してんだ?」
「隠れるのにスペースがなくてねぇ」
夜滝はちゃっかりと圭に抱きついていた。
別に隠れるスペースがないということはない。
「とりあえずここ、降りてみようか」
せっかく苦労して開けたのだから、入らない選択肢はない。
本来開ける場所ではなかっただろうということは、罠がある可能性も低いと考えられる。
圭たちはカレンを先頭にして階段を降りていく。
並んで通れるほどのスペースがないので一人ずつ縦に並ぶ形になる。
「方角的には研究所の方に向かっているねぇ」
ある程度降りると通路になっていた。
暗いので懐中電灯を出して先を照らしてみるが、廊下は長くて先までは分からない。
方向的には研究所の方に伸びている。
廊下はそれなりに広く、他にも上に向かっている階段も下りたところの近くにはあった。
まずは試しに他の階段を登ってみたところ、また金属の扉が上にあったのだった。
下から一人で押し上げることは無理そうなので諦めて、廊下を進んでいくことにした。
「この程度の広さならゴーレムはいないかねぇ?」
廊下は二、三人同時に横並びになれるぐらいの広さはある。
だがゴーレムが戦うには少し狭いだろう。
廊下ギリギリになってしまうし、この分なら外にいるようなゴーレムがいない可能性は高そうだ。
「ただそうなると……何がいるって話だよな」
研究所の中に敵がいないのなら、罠があったとしても先に入っていった覚醒者が帰ってこないなんてこともないだろう。
何かの敵はいるはずだ。
「おっ、扉があるぞ」
少し先に扉が見える。
「これは……開いてるみたいだな」
押してみると扉は簡単に開いた。
「おっ?」
『左に向かい、三つ目の右側の部屋にあるキーを持っていけ』
「どうした?」
「急に目の前に表示が……」
今度は左右に伸びる廊下に出た。
圭の前に突如として表示が現れて、圭はのけぞるようにして驚いてしまった。
「何かの試練か?」
古代遺跡に関しては次の行動を指示するような試練は現れていない。
やらねばならぬことと考えると面倒だが、試練に沿って動けば進んでいけるので楽といえば楽である。
対して古代遺跡はどうしたらいいのか分からないので、そこらへん面倒であった。
「うーん……試練ではなさそうだけど……何かのヒントみたいだ」
古代遺跡に関することではあるだろう。
ただ試練として次にやることの指示というよりも、圭にだけ特別に教えられたヒントのように見える。
「左いって、三つ目の右の部屋にキーがあるってさ」
「こりゃまたご丁寧なもんだな」
こんなの初めてだなと圭は思った。
「……ありがとうございます」
誰がこんなヒントをくれたのか知らないけれど、悪意を感じるものではない。
何かしらの味方だろうと思ったので、口に出してお礼を言っておく。
罠ということもあり得るが、どの道左右どちらにいくのかの指針になりそうなものもない。
表示に従って左に行ってみることにする。




