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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十三章

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意外と近かった3

「フィーネー?」


「いるよー」


 ゾンダの処理は赤城に任せて圭は再び崖下を覗き込む。

 声をかけるとフィーネから返事がある。


 とりあえず平気そうなことは確かだ。


「どうにかして下に降りるか……」


「私が行こうか?」


「ああ、確かに波瑠なら……おっ?」


 波瑠に引き上げてもらえばいい。

 そう思った瞬間だった。


 低くて鈍い音が響き、圭の視界が急に斜めになった。


「ヤバッ……」


 崖の付近は脆そうだということは分かっていた。

 だから警戒はしていた。


 けれども圭が下を覗き込んでいたところが大きく崩れてしまい、動き出そうにも圭はもう体を空中に投げ出されてしまっている。

 

「また落ちるのかよ!」


 頭から落ちればいかに覚醒者といえど死んでしまうかもしれない。

 圭はなんとか空中で体勢を変えようとした。


「圭君!」


「おおっと……助かったよ、波瑠」


 圭はガシッと抱きかかえられ、落下する感覚が止まった。

 顔を上げると笑顔の波瑠がいた。


 圭が落ちてすぐ、波瑠も翼を広げて崖を飛び降りた。

 最初は一人で飛ぶのも大変だったのに、今や圭を抱えて飛んでも波瑠は安定している。


「こういうのって逆だと思うんだけどな」


 波瑠は圭をお姫様だっとしたままゆっくりと降りていく。


「よいしょっと」


「ピピ! マスター再会!」


 下ではフィーネが待ち侘びていた。

 圭がきて嬉しそうに両手を上げて駆け寄ってくる。


「けーい!」


「こっちは無事だー!」


 まさか自分が下から返事をすることになるなんて思いもしなかった。

 圭は苦笑いを浮かべる。


「やっぱり波瑠に一人ずつ……いや、まとめて引き上げて……」


「マスター!」


「ん? おわっ!? なんだそれ!」


 ちょんちょんと圭の脇腹を突いたフィーネは妙なものをかぶっていた。


「骨? なんの骨だ、それ?」


 フィーネが被っているのは何かの頭の骨であった。

 人の骨ではない。


 フィーネが被れるほどに大きい。

 形も人ものではなく、何かのモンスターの骨だろうと思った。


「どこにあったんだ、そんなもの?」


 なんで骨があるのかとか疑問が色々と湧いてくる。


「あっち」


 フィーネが骨を被ったまま走っていく。


「ああ、あれか」


 よく見ると近くに何かの骨が転がっている。

 上から見た時にはフィーネしか見ていなかったけれど、よく見れば上からでも気づいただろう。


「なんの骨? ゾンダではなさそうだね」


 波瑠も骨を見て首を傾げている。

 ゾンダの骨にしては小さい。


 これまで十四階で倒してきたモンスターはどれも大型で、それらのモンスターに比べるとやや小さめなサイズのような感じがしている。


「頭の骨もちょっと砕けてるみたいだしね」


 フィーネが被っている頭の骨と思わしきものも割れているところがある。

 まるで何かに押しつぶされてしまったようだ。


「……まさか、な」


 何か踏みつぶされたモンスターの骨。

 圭には一つ心当たりがあった。


「地形的には似てる。あり得ない話……じゃない……のか?」


 圭を殺そうとしたヘルカトはゾンダに押しつぶされて死んだ。

 頭を含めた上半身部分が巻き込まれてしまっていたのである。


 フィーネが見つけた骨がヘルカトの骨だとしたら説明はつけられる。

 ただ本当にそんなことがあり得るのか、圭には分からない。


 十四階に出現する他のモンスターは死体も残らない。

 時間が経つと消えてしまう。


 けれどもヘルカトの死体は残っていた。

 ヘルカトは本来十四階にいる存在ではないイレギュラーなものである。


 死体が残っていてもおかしくはないのかもしれない。


「ねね、向こうにある洞窟から来たのかな?」


「洞窟? あっ……」


 ヘルカトの骨のさらに奥。

 崖にぽっかりと穴が空いている。


 暗くて奥が見通せないそれは中まで続いているようだ。

 圭はヘルカトかもしれないと考えているが、波瑠は穴の奥から来たモンスターのものかもしれないと考えたのである。


「洞窟……こんな話を赤城からは聞いてないな」


 洞窟がある、洞窟でモンスターを見つけたという話は赤城からはなかった。


「何してるんだー?」


 上から声がかかる。

 崖上から覗き込んでも洞窟のことは見えないだろう。


「こっちに何かあるんだ!」


 崖は高くて声を届かせるためには結構張らなくてはならない。


「……見えなかった」


 圭はヘルカトに襲われた時のことを思い出す。

 落ちた直後はなんとかトラックから這い出てきた。


 それからヘルカトが降ってきて、ゾンダも降ってきた。

 洞窟の穴があったとしても崖の側には常にトラック、ヘルカト、ゾンダと何か大きなものがいて、洞窟の穴があったかどうか見えていない。


 こんなものがあったのかどうか記憶には残っていないのである。


「下に洞窟がある?」


「ピピ、どう?」


「かっこいい!」


 圭は波瑠に抱えてもらって崖上に戻った。

 今度はお姫様抱っこではなく後ろから抱きしめるような形だった。


 崖下に洞窟のようなものがあることをみんなに説明する。

 フィーネは下から持ってきたヘルカトと思われる頭蓋骨をシャリンに自慢している。


「もしかしてそれが噂の古代遺跡ってやつか?」


「可能性はある」


「まぁーたお手柄ってわけか?」


「まだ分からないよ」

 

 古代遺跡を見つけたとしても攻略しなければ意味はない。

 今は十四階そのものの攻略が目的であるので、見つけてもあんまり嬉しくはない。

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