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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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次世代のアラクネ3

「‘早く……誰かに助けを……’」


 後ろから悲鳴、サンジュンに助けを求める声が聞こえてくるが、サンジュンは振り返りもせずに走る。

 今この場において逃げ切れる可能性が一番高いのはサンジュンである。


 自分が助かるため、あるいは他のためにも逃げ切らなきゃいけない。


「‘なっ……!’」


 もう少しで林を抜ける。

 そんなところでサンジュンは倒れた。


 見ると足に白い糸が絡みついている。


「‘マズイ……!’」


 サンジュンは剣で糸を切ろうとする。

 けれども剣は糸にくっついてしまう。


「‘くそっ! こんなところで死ぬわけにはいかないんだ! 切れろ……切れろよ!’」


 糸はくっつくだけでなく柔軟で丈夫。

 剣をノコギリのように動かして、ようやく少しだけ切れるぐらいだった。


「‘……こっちに来るな’」


 林の中から血に塗れたアラクネがサンジュンのことを見つめていた。

 もう仲間たちの悲鳴も聞こえない。


「‘誰か!’」


 恐怖。

 サンジュンは剣を落として林の外に顔を向ける。


 情けなくてもいい。

 後で笑われようとも今は助けが欲しいと声の限り叫ぶ。


「‘頼む、誰でもいい!’」


 林の周りにドレイクが現れにくいことは分かっている。

 そのために他の人はあまり林に近寄らない。


 近くに人はおらず、遠くでドレイクと戦っている覚醒者の姿が見える。


「‘頼む……誰か…………うわああああっ!’」


 サンジュンの声は届かない。

 糸に引きずられてサンジュンは林の奥に消えていく。


 異常事態はひっそりと始まっていた。


 ーーーーー


「‘ゲートの中は静かだな’」


 ハン・ジェヒョンは顔をしかめた。

 一回目から太羽島の攻略に参加している韓国のA級覚醒者である。


 中国、欧州連盟のA級覚醒者と共に少数精鋭のチームで、ボスの討伐を目的としてドレイクゲートに入ってきていた。

 ここまでは順調。


 ボス討伐チームはドレイクと戦うこともなく、力を温存したままゲートに辿り着くことができている。

 少しおかしいとジェヒョンは思っていた。


 ドレイクの数が少なかった。

 空を埋め尽くすほどに多くはないが、それでも何回か戦う覚悟はしていた。


 なのに戦わずに済んでいるし、他の覚醒者たちにも多少の余裕があるぐらいである。

 楽に済むからいい。


 そんな風に楽観的にはなれなかった。

 そしてゲート中の様子もまた静かすぎるぐらいでおかしいと感じている。


 外のドレイクの数なら中にドレイクがいくらかいてもおかしくないのに、ゲート中は何もいないかのように平和である。


「‘なんでもいい。さっさと終わらせよう’」


 中国は華山ギルドのA級覚醒者ナムグン・シンは興味なさげにため息をつく。

 政府からの命令で参加を決めたが、本来ならめんどくさくてこんなところに来たくはなかった。


 ゲートがあるのはどこかの山の中で、まだ調査もされていないのでボスとなるドレイクを探さねばならない。

 ドレイクが少ない原因を考えても何もわからないので、ジェヒョンも動き出すことにした。


「‘奴らの巣がどこかにあるはずだ’」


「‘空から捜索しよう’」


「‘しかしそれでは……’」


 何かを探すのに上からというのはありがちな話である。

 飛べるなんて人も少ないので今はドローンを使うことも多い。


 ただドレイクに狙われる可能性が高いので空から捜索することはあまりいい作戦とは思えなかった。

 しかし中国の覚醒者は念動力のような力を使って、ふわっと浮かび上がった。


「‘向こうに何かがあるぞ!’」


 高く飛び上がってもドレイクの姿は見えない。

 代わりに山あいに大きな城のようなものを見つけた。


「‘ドレイクは?’」


「‘いない。今の所姿が見えない’」


 一抹の不安を抱えながらもジェヒョンたちは山あいに見えたという城に向かう。


「‘ここはなんだ? 滅びた町……か?’」


 山を降りてくると町があった。

 石で作られた古い時代の町並みが広がっているが、人が住まなくなって長い時間が経ったかのように荒廃している。


 綺麗に舗装されていたのだろう石畳の道は下から雑草が生えてきていて、建物は崩れていたり植物に覆われてしまっている。

 町の中心に大きな城がある。


 こちらも至る所が崩れていて、人の気配はない。


「‘ドレイクが巣穴として使っていてもおかしくはないな’」


 大きくて丈夫なお城はドレイクが使うにも悪くはない。

 ジェヒョンたちはお城の前までやってきた。


「‘ひどいものだな’」


 近づいてみると、遠くで見ていたよりも荒廃具合がひどかった。

 壊れた城門を乗り越えて中に入る。


「‘しかしここまできてもドレイクはいない……’」


「‘ここじゃないのか?’」


「‘こんな怪しい場所があってか?’」


 いまだにドレイクはいない。

 それどころか鳴き声すら聞こえてこない。


 お城といういかにもな場所があって、一体のドレイクもいないのは流石に変である。

 巣穴でないにしてもちょっとぐらいモンスターがいるものだ。


「‘おい、見てみろよ、あれ’」


 城の中を進んで、先頭を歩いていた覚醒者が崩れた壁の向こうを覗き込んで何を見つけた。

 緊迫した声色に他の覚醒者たちも同じく覗き込んだ。


「‘なんだこれは……’」


「‘糸? まさかこれは……アラクネの?’」


 部屋の壁に白いものが見えた。

 それはクモの糸のようだと思った。

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