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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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英雄軍師、フェンリルを呼び出す2

「ええと……これに魔力を込めるんだっけな」


 圭は手首を見る。

 そこにはメルリンからもらった腕輪がある。


 腕輪というにはややモコモコしていて気持ちいいが、他に表現のしようもない。


『フェンリルの証

 フェンリルのメルリンからもらったブレスレット。

 フェンリルの毛で作られたブレスレットにはフェンリルの力が宿っている。

 キューとケイを結ぶ力を持っていて、塔の中、及びゲートの中でキューを呼んだり戻したりすることができる。

 帰属性アーティファクトでありケイにしか使えない』


 フェンリルの証なる腕輪はアーティファクト、いわゆる魔道具というやつである。

 キューちゃんを呼び寄せられるという効果がある。


 というか、キューちゃんはキューという名前になってしまっているのだが、それでいいのかと圭はちょっと疑問だったりする。

 本人がそれでいいのなら口を挟むことでもないが、もうちょっといい名前をつけることもできたのになとは思った。


「よっと」


 圭は腕輪に魔力を込める。

 すると腕輪が広がって大きな輪っかとなる。


「おおっ!?」


「あれは一体なんだ」


 兵士たちがざわつく。

 腕輪の内側がゲートのように青白く光る。


『うおおおおん! 遅いよおおおお!』


「あれは……!」


「みんな落ち着け!」


 腕輪の中からキューちゃんが飛び出してきた。

 突如として現れたキューちゃんに兵士たちが警戒をあらわにしてざわつく。


 フェンリルだと知らなければ巨大な狼が突如として現れたようなものである。

 知っていたとしてもメルシリアやクロノアは驚いている。


 ディムバーラガンも多少の警戒はしつつも、圭がやっていることだからと信頼して兵士たちを制する。


『ぬおおおおん!』


「うわっ! コラっ!」


「え、英雄軍師殿が襲われたぞ!」


「大丈夫なのか!」


 キューちゃんは圭に飛びつく。

 ベロベロと顔を舐め回しているのだけど、周りからすれば圭が襲われているようにも見えた。


 十三階で別れてから十一階来るまで言うほど時間も経っていない。

 なのにもう寂しがっていたようである。


「キューちゃん、お座り!」


『はっ!』


 再び溺死の危機。

 圭はキューちゃんに指示を出す。


 キューちゃんは大人しく言うことを聞いてサッと座る。

 特に芸とかを仕込んでいるわけではないのだが、メルリンがやんちゃしたキューちゃんを怒る時に「そこに座りなさい!」と言うらしく、お座りと言われるとすぐに座ってしまうようなのだ。


 メルリンに教えてもらったお座りコマンドがなければ危ないところだった。


「これが……フェンリル。伝説のモンスターですか」


 ブンブンと尻尾を振っているキューちゃんに威厳はない。

 しかしディムバーラガンなど一部の強者はキューちゃんからただならぬ力を感じ取っていた。


「英雄軍師殿がモンスターを召喚したぞ」


「英雄軍師殿はモンスターも従えているのか?」


 事情を知らない兵士たちは非常にざわついている。


「ご事情をお聞かせいただいても?」


 何が起きているのか。

 ディムバーラガンが訳を聞きにきた。


「実は……」


 圭は軽くフェンリルのキューちゃんが仲間になったことやこの世界で預かってほしいことなどを説明した。


「あれがフェンリル……どうりで強い力を感じるわけです」


 フェンリルだから強い力を感じていたのかとディムバーラガンも納得してしまう。


「こちらで預かられるのですか?」


「恩人であるケイ様のお願いですからね。そのつもりです」


 こんなに大きいとは思っていなかったと思いながらも、想像よりも凶暴さはない。

 ディムバーラガンの質問にメルシリアは頷いた。


「聞け、皆のもの!」


 ディムバーラガンは振り返って兵士の方を向く。


「このモンスターはフェンリルだ!」


「フェンリル!?」


「フェンリルってあのモンスターか?」


「どうしてこんなところにフェンリルが」


 キューちゃんがフェンリルだと聞いて兵士たちのざわつきがより大きくなる。


「英雄軍師ムラサメケイ殿が召喚したものだ! しばらくここに預かることになった!」


「英雄軍師殿がフェンリルを召喚!?」


「さすが英雄軍師殿だ……」


 兵士たちはフェンリルという存在に困惑しつつも、英雄軍師たる圭ならばと話をすぐに受け入れてしまった。

 この場にはメルシリアもいる。


 国王であるメルシリアが受け入れている話ならば、兵士たちで文句を言うこともない。


「フェンリル様を英雄軍師ムラサメケイ殿だと思って接するように!」


「いや……そんな……それにそんなに英雄軍師連呼しなくても……」


 圭が積み上げた名声のためだろうか、思っていたよりもあっさりとキューちゃんの存在は受け入れられそうだ。

 ただここまでみんなに英雄軍師と広まっているとは圭も予想外で、少し気恥ずかしそうにしている。


「フェンリル様はこちらにお任せください。あとはまたケーキでもくだされば嬉しいです」


「また今度賄賂持って様子見に来るよ」


 どうやってフェンリルなど手懐けたのか。

 疑問はあるものの、メルシリアは聞かないことにした。


 ひとまずキューちゃんはしばらく十一階で過ごすことになったのだった。

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