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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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フェンリルの恩返し5

「これ気持ちいい」


「ホントだ」


 圭を助けよう。

 そう思ってシャリンとフィーネが動いていた。


 二人はキューちゃんを引き剥がそうとガバッと掴みかかった。

 しかしふわふわっとした毛はとても気持ちが良かった。


 洗い立てのようなふわふわ感、そしてなんだかふわっといい香りとする。

 思わず力を抜いて二人して毛皮に体を埋めてしまう。


『こら、キュー。やめて差し上げなさい』


『キュー……』


 怒られてようやくキューちゃんは圭を舐めるのをやめた。

 圭はすでに上半身がヨダレでビチョビチョになっていた。


「死ぬかと思った……」


 あとちょっと止めるのが遅かったらヨダレで溺死していたところだった。


「タオル使うかぃ?」


「ありがとう……」


 夜滝がタオルを取り出して圭に渡す。

 一回お風呂に入った方が早いのでは思うけれど、とりあえず顔を拭く。


「キューちゃん……でいいんだよな?」


『うん、そうだよ!』


 キューちゃんは舌を出してヘラリと笑う。

 シャリンとフィーネは毛皮に埋まったままである。


「無事だったんだな」


 圭は目を細めてキューちゃんに手を伸ばす。

 キューちゃんは耳をたたんで頭を下げる。


 そっと頭を撫でるとキューちゃんも目を細める。


「いぃーなぁー! 私もキューちゃん可愛がったのになぁ〜!」


 微笑ましい光景。

 モンスターと人が仲良くしているという珍しい姿をみんなは感動的だと見ていた。


 しかし波瑠は不満そうに口を尖らせる。


「私も可愛がってたのになぁ〜」


『覚えてますよ、波瑠』


「えっ!? 私の名前、覚えてくれてんの!」


『はい、もちろんです』


「キューちゃぁん!」


 目をうるりとさせて波瑠がキューちゃんに抱きつく。

 これで波瑠の機嫌は直りそうである。


「キューちゃんがフェンリル……ということはあなたも?」


 圭はもう一体のフェンリルを見る。

 キューちゃんよりも一回りほど大きなフェンリルは優しい目をして圭たちのことを見ていた。


『そうです。私はその子の母親です。メルリンとお呼びください』


「塔の試練……クリアにしてくれたのは」


『私です。娘を助けてくれた恩返しはしなければなりませんからね』


 キューちゃん、メスだったのかと圭は思った。


『このゲームは……私に選択を強いた。あなたのことは聞いています。どうかこのゲームを終わらせてください』


「……努力はします」


『それでいいのです。それとこれを差し上げます』


 メルリンが尻尾を振ると黒い何かが飛び出してきた。

 圭の手首に何かが巻きついた。


「なんだ……これ?」


『それがあればキューを呼び出すことができます』


「キューちゃんを!?」


 それな聞き捨てならないと波瑠が顔を上げた。


『ただし塔の中限定です。私の貢献が足りず……外には出してあげられないのです。ですがあなたたちのお力になると思いますし、どうか……一緒に連れて行ってあげて欲しいのです』


『私も圭を手伝うよ!』


 キューちゃんが圭の頬をペロリと舐め上げた。


『できれば人と会わせてあげて欲しいのです。もっとできれば……つがいに』


「なんて言いました?」


『いえ、なんでも』


 メルリンはジッと圭のことを見ている。


「ゴホン……えーと今の話をまとめると、お前たちがこいつを助けたから、十三階はクリアしたことになったってわけか?」


「大体そんな感じだな」


「それでついでに……そいつも仲間になった……ってことだな?」


「そうらしいな」


 赤城がざっくりと話をまとめてくれる。

 おそらくシークレット報酬扱いなのだろうと圭は思う。


 十三階のクリアとキューちゃんを呼び出せるというところが報酬として与えられたのだ。


「まあ塔を登るって目的からするとありがたい話だな」


 下手すると数ヶ月かかる十三階の攻略が一瞬で終わってしまった。

 フィーネから始まり、シャリン、そしてキューちゃんと人以外の仲間も増えていく。


「……次は十四階だな」


 戦力は大きくなっていくがそれでもまだ先がどうなるのか分からない。


「……とりあえずよろしくな」


『うん、よろしく!』


 それでも前には進んでる。

 そして、これからも前に進んでいくのだ。

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