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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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フェンリルの恩返し3

「みんなは?」


「私たちもクリアになってる……」


「こっちもよ」


 夜滝や波瑠たちだけでなく、かなみを含めた大海ギルド、ヴァルキリーギルドもシークレットこそ現れてないものの、十二階の試練がクリアになっていた。


「なんだ? ……一体なんでこんなことに」


「分からない」


 赤城も黒羽も初めてのことで困惑している。


「まさか……キューちゃん?」


 波瑠はハッとした顔をして銅像を見上げる。

 思い当たる節といえば一つしかない。


 十三階には何かしらの形でフェンリルが関わっている。

 キューちゃんが何かしたのかもしれないと波瑠は考えた。


「そうかもしれないな」


 圭は圭でシークレットを見ていた。

 “可愛いあの子を探して”というクエストであり、なんのことなのか今はすぐに分かる。


 可愛いあの子とはキューちゃんのことだろう。

 すでに見つけてあるのでクリアになってると考えれば辻褄も合う。


「あっ、圭君、圭君!」


「なんだよ?」


 波瑠が圭の服を引っ張った。

 表示を眺めて油断していた圭がふらつきそうになるほどの力で、怪訝そうに波瑠を見る。


「あれあれあれ!」


 波瑠が指差しているのは銅像。


「あれ……あれっ?」


 圭が銅像を見ると目があった。

 不思議な感じがして銅像をよく見ると、銅像の形が明らかに違っている。


 空を見上げるような形で設置されていた銅像が、いつの間にか圭たちのことを見下ろしていた。


「みんな、待って!」


 異常はだいたい危険である。

 動き出した銅像に赤城やかなみが警戒をあらわにして攻撃しようとした。


 しかし銅像から攻撃してくるような気配は感じず、波瑠がみんなを止める。

 

「ついてこい……って言ってるのかな?」


 銅像が台座から飛び降りる。

 圭たちの方には来ず、少し離れていく。


 だがそのままどこかにいくことはなく、後ろを振り返って圭のことを見ている。

 なんとなくついてくるように、と視線を送っているようだと波瑠は感じた。


「……行ってみてもいいか?」


「どうせスケジュールは数日空いてるんだ。構わないだろ」


「圭君がしたいようにしたらいいわよ」


 圭も波瑠と同じように感じた。

 銅像についていってもいいかと圭は赤城やかなみに尋ねる。


 十三階が広いことは分かっていた。

 流石に一ヶ月も塔に籠るようなことはしないが、数日はかけるつもりだった。


 クリアになってしまったなら時間は有り余っている。

 圭が銅像を追いかけたいというのなら拒否する理由もない。


 赤城とかなみと何が起きているのかは気になっていた。


「キューちゃんに会えたらいいなぁ」


 圭にばかり懐いていたけれど、中でも波瑠が一番キューちゃんを可愛がっていた。

 ちゃんとしたお別れもなくキューちゃんはいなくなってしまった。


 最後はボスレッドフォックスとキューちゃんが戦った。

 無事だとは思うけれど、本当に無事だったのか、あるいは自分の居場所に帰れたのかなど多くのことが気になってしまう。


 追いかけると銅像は一定の距離を保って、圭たちの速度に合わせて歩いていく。

 圭たちが立ち止まると銅像も止まり、ジッと圭のことを見つめる。


「暗くなってきたな……」


「ちなみにこの階は一日三十時間で外と違うから少し注意が必要だな」


 ただ一日では着かない距離だったようで、気づいたら日が落ちてきた。

 十三階にも昼夜の概念がある。


 けれども少し特殊なのは十三階の一日の長さは塔の外と違うのだ。

 十一階では一日の長さも外と同じだった。


 なのに十三階は一日三十時間と六時間も長いのだ。

 実際歩いていると昼が長くても意外と気づかない。


 だが普通の活動時間を気にしながら動くようにしないと体調も悪くなってしまう。

 しっかりとしたスケジュール管理も求められる階だった。


 塔の中では少し薄暗くなってきたぐらいだが、外ではもうすっかり夜である。

 圭たちは野営して休むことにした。


「最近のテントは設置しやすくていいねぇ」


 圭たちは亜空間の収納袋なんて便利なものがある。

 大きめのテントを持ってきていたので立てたのだけど、あまり難しいこともなくて感心してしまう。


「便利ねぇ」


 収納袋に入れてきたのはテントだけじゃない。

 野外で使うバーベキューコンロや燃料となる炭も持ってきていた。


 魔法で炭に火をつけてワイワイと調理する。

 女性が多くて光景としては非常に華やかであると圭は思った。


「ん?」


 鉄板で作ったやきそばを食べていると足に何か触れた。

 視線を落としてみるとそこに銅像がいた。


 かなり精巧に作られた銅像はまるで命が宿っているかのようだ。


「食べるか?」


 圭は焼きそばのお肉を箸で持ち上げて銅像に差し出してみた。

 銅像は首を振る。


 単にいらないのか、銅像だから食べられないのかもしれない。


「……触るのはいいみたいだな」


 圭は手を伸ばして銅像の頭に触れてみる。

 硬い手触りをしている。


 銅像だから当然だけど、拒否する様子もない。

 なんとなく気持ちよさそうにしているような気もした。


「あっ、ずっこい!」


 圭が銅像を撫でていることに波瑠が気づいた。


「あー……」


 波瑠が近づいてくると銅像は離れていってしまう。


「そんな顔するなって」


「……まあ、これはこれで」


 しょんぼりとした顔の波瑠の頭を圭が撫でる。

 銅像に逃げられたのは残念だが、圭に撫でてもらえるならちょっとプラスかなと波瑠は思ったのだった。

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