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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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フェンリルの恩返し 1

「太羽島のことも大変だよな」


 太羽島のゲートを攻略する緊急性が大きく高まった。

 もはや攻略せねばならないというところで意見の相違はないものの、より安全に、より確実に攻略するために他国の覚醒者の協力も募ることにした。


 ただ国内の覚醒者を動員するとしてもしっかりとした計画が必要であるのに、国外の覚醒者の力も借りるとなったら色々と準備に時間も必要となる。

 まず協力してくれる人を募らねばならない。


 インドなんかは協力してくれるだろうが、他の国はどうだろうか。

 多くの人がいればそれだけ討伐が成功する確率が高まるけれど、人が集まり過ぎれば成功した時の報酬や名声について揉めるような可能性もある。


 人を集めた後も役割や受け取れる物の分配、日程など決めておくべきことは山積していた。

 圭が頭を悩ませることではないが、覚醒者協会の職員は大変なんだろうなと伊丹の顔を思い浮かべた。


 何にしても太羽島の奪還攻略が実際動き出すのには時間がある。

 その間に何もしないわけにもいかない。


 圭たちは十三階の攻略を目指すことにした。

 例によって大海ギルドとヴァルキリーギルドが同行してくれている。


「それで……十三階はどんなところだったっけ?」


「ある意味で面倒なところだな」


 赤城は少しため息混じりに答えた。

 塔を登るに連れてモンスターも厄介になっていくので、今は十二階の時に一緒に攻略した限られたメンバーしかいない。


「敵のモンスターとしてはそんなに難しい階じゃない。むしろ拍子抜けなぐらいの階だよ」


 塔を登ってきて十一階。

 もはやだいぶ見慣れた町中を移動してお城に向かう。


「拍子抜け?」


「ああ、十二階ではボス三連戦だった。簡単な相手ではないし、次の回も激しい戦いになるのかなって思っていけばそんなことないんだよ」


「どういうことなの?」


「十三階はお使いみたいなもんだ」


「お使い?」


「あっちいけ、こっちいけとあちこち行かされて……それで終わりだ。道中モンスターは出てくるけど、ボスなんかはいない」


 ボスがいないならいいじゃないかと圭は思う。

 何でそんなに面倒そうなんだと不思議である。


「うちは攻略するのに二ヶ月かかった」


「えっ?」


「十三階、バカみたいに広いんだ。その上に次にやることのヒントが曖昧で分かりにくくて、移動した後も時間がかかった」


 だから面倒なんだと再びため息。

 十一階、あるいは十二階も全体で見ると世界はかなり広い。


 しかし十三階はそれよりもさらに広い世界となっている。

 ただその広い世界でやらされるのがお使いのような試練なのだ。


 どこそこに行けと言われて行ってみると、次はここに行けとまた移動させられる。

 近い場所ならまだしも広い世界をかなりの距離移動させられるのだった。


 移動だけでも時間がかかる。

 加えて試練の先に何が待ち受けているかというと、呆気ない終わりなのだ。


 モンスターとの戦闘はあるけれども、やるべきことはほぼ移動だけなので楽といえば楽である。

 ただ移動するだけが楽かといわれると少し微妙だ。


 二ヶ月といっても、毎日塔の中にいたわけではないので多少の誇張は入っている。

 それでもひらすらに歩いて移動していく試練は、忍耐力を試されているのかと赤城は思った。


「スケジュール押さえるのも大変なんだけどな」


 圭と夜滝は毎日塔に入ってもいい。

 しかしカレンにも工房の仕事があったり、波瑠や薫も学校がある。


 大海ギルドとヴァルキリーギルドも圭たちに合わせるのも大変だろう。

 一応どちらのギルドにも未攻略者は含まれているので、どちらのギルドにも利益はある。


 ちょっとした申し訳なさは感じてしまう。


「圭さん! もうお体大丈夫なんですか?」


「もう完全に大丈夫だよ」


 城に着いて、いつものようにクロノアたちと挨拶する。


「これ、お礼がわりに」


「あっ! 外のケーキですね! ありがとうございます!」


 圭が持ってきたのはケーキだった。

 十二階の攻略で圭は倒れて、少しの間十一階にお世話になった。


 お礼なんていいとは言っていたが、ちょっとしたお返しぐらいはしておくべきだろう。

 十一階の人は外に出ることができる。


 外の世界でメルシリアが特にお気に入りだったのがスイーツ類であった。

 十一階の世界観として中世ヨーロッパ的なところがある。


 甘いものがないわけではないが、外の世界ほど砂糖やなんかが流通しているわけではない。

 ケーキは日持ちしない生物だから、あまり十一階との交流で持ち込まれることもなく、メルシリアは嬉しそうな顔をして圭からケーキの箱を受け取った。


「わっ! いっぱい!」


「できるだけ色々持ってきたよ」


「ありがとうございます!」


 メルシリアはにっこりと笑顔を浮かべる。


「ここ数日処理することも多くて大変そうだったのでありがたいです」


「クロノアも食べてくれ」


「そうさせてもらいます。このまま上に行くんですか?」


「ああ、そのつもりだ」


「頑張ってくださいね。倒れても……怪我をしても生きていればきっとやり直せるので無理はなさらないでください。またここに休みに来てください」


「ありがとな」


 塔の中にも休まるところがある。

 友がいる。


 それだけでもだいぶ気分は違うものだと圭は思った。

 今回は軽い挨拶だけなのですぐさま出発して十二階に上がる。

こちらの作品も今日で投稿開始から丸二年が経ちました!

ここまで続けてこられたのは普段から読んでくださる読者の皆様のおかげです。


物語はまだ続きます。

よければお付き合いください。


もっとよければコメント、星評価やレビューなどくだされば嬉しいです。

それではこれからもよろしくお願いします!

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