表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

710/837

塔外の問題

「太羽島攻略会議を始めたいと思います」


 中年の職員が覚醒者協会の会議室を見回した。

 会議室には協会長であるタケダを始めとして、五大ギルドのギルドマスターや日本の中でも有力ギルドの関係者が集められている。


 さらにはモニターには韓国の覚醒者も映し出されている。


「今回多くの方にご出席いただきましてありがとうございます」


「そりゃ緊急と聞いて呼び出されたらならな」


 腕を組んで椅子に座る若い男の覚醒者が軽くため息をつく。

 軽く声をかけてみんなを集めたわけではなく、集まってほしい、緊急であると集めたのである。


 ちなみになぜなのか、圭も呼ばれている。

 かなみと赤城に挟まれる位置に座らされていて、ちょっと落ち着かない。


「いいから話を進めてくれ」


 北条が話を促すと男は不愉快そうに眉をひそめた。


「太羽島において大きな動きがありました」


「大きな動き?」


「先日太羽島に新たなゲートが出現しました。奪還区域ではないため正確なことは分からなかったのですが、遠距離での魔力測定で推定B級だと見られていました」


 大きなモニターに一つのゲートが映し出される。

 以前攻略したB級ゲートの位置にも近い。


 ゲートの隣には崩れたビルのようなものが見えている。


「こちらのゲートですが、我々も手を出していなかったためブレイクを起こしました」


「……それが大きな動きってやつなのか?」


 せっかく一つ攻略したのにまたB級ゲートが現れたとなると確かに大きな問題ではある。

 しかし緊急と銘打って人を集めるほどかは微妙なところである。


「いいえ、これは始まりに過ぎません」


「始まり?」


「ゲートブレイクによって出てきたモンスターはこちらです」


 映像が移り変わる。

 上空から撮ったもので、ゲート前に一つ目の巨人型モンスターがいた。


「サイクロプス。B級相当のモンスターで、やはりゲートとしてもB級と見ても間違いありませんでした。しかし……」


 中年の職員はさらに映像を次に進めた。


「ん?」


 多くの人がすぐに違和感に気づいた。

 同じくドローンか何かで上から撮った映像には崩壊したビルが映っている。


 同じ画角なのでゲートを映し出したものと同じだと気づく人は多いのだが、その映像にゲートの姿はなかった。


「こちらの映像の方が最新のものになります」


 ゲートが無い映像はゲートが現れる前のものではない。

 少し前に撮られたものであり、ゲートが現れた後の最新の映像と言ってよかった。


「ゲートは……」


「攻略したのか?」


 ゲートが無くなっている。

 自然消滅することなどあり得なく、となると誰かが攻略したということになる。


 だが現在の太羽島はアラクネの影響でかなり危険であり、奪還区域維持の他に活動はしていない。

 危険区域に入ってこっそりゲートを攻略するようなイかれた人はいないだろう。


 だからといって、覚醒者協会が特定の大型ギルドに声をかけて攻略してもらったなどという雰囲気もなかった。


「誰も攻略していません」


「どーいうことだよ?」


「モンスター同士の争いによって敗北したのです」


 映像が切り替わって会議室に大きなざわつきが広がった。

 映し出されたものはサイクロプスが白い糸に巻かれて倒れている光景だった。


「アラクネとナワバリ争いが勃発。結果的にサイクロプスはボス個体まで含めて全て倒されてしまい、ゲートはそのまま消失しました」


「モンスター同士が争ってゲートが消えたというのか!」


 これは衝撃的な話だった。

 太羽島におけるモンスターの生態系はかなり独特なものとなっていた。


 モンスター同士の争いが起きないわけではなかった。

 けれども相手を駆逐してしまうほどに戦うことはなかったのである。


 ましてモンスター同士の戦いで、ゲートが消滅するなど世界でも類を見ない話なのだ。


「サイクロプスはかなり力が強く、アラクネでは厳しい相手であったかもしれません。けれども……こちらをご覧ください」


「なんだあれは!」


 次にモニターに出たのはサイクロプスと戦うモンスターの姿であった。

 アラクネゲートのモンスターはアラクネがボスであり、それ以外の通常モンスターが大きな蜘蛛である。


「人型の……クモ?」


「うへぇ、気持ち悪いわね……」


 映し出されたモンスターは人のような姿をしていた。

 アラクネは進化して人に近い容姿をしていて、ところどころにクモのような特徴を残している。


 こちらのモンスターは人のように二足歩行の姿をしていて、クモに近い人であるようだった。


「何体かこちらのモンスターが確認されました。……アラクネだけでなく、一般モンスターも進化しているものと思われます」


「これが大きな動き……か」


 北条が渋い顔をしている。


「アラクネの変化だけでも大きなものでした。しかし一般モンスターまで進化して強くなるとしたら……いよいよ太羽島の状況を静観しているわけにはいかなくなりました」


「どうするつもりだ?」


「これについては私から提案しよう」


 北条の質問をタケダが引き取る。


「やはり太羽島の攻略は必要だ。そこで日本と韓国の合同で総力を上げて攻略するが……今回は他の国にも協力を要請しようと思う。超大型ゲートの件があって他国の協力というハードルもだいぶ下がっている」


 太羽島のモンスター進化の件はもはや日本や韓国だけの話では無い。


「今この場で意見をまとめて動き出そうと考えている。この場に集まったみんなにも協力を要請したい。どうか……頼む」


 立ち上がったタケダは深々と頭を下げる。

 本格的に太羽島と向き合う時が来た。


 簡単な戦いにはならなそうだと圭は思ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ