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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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女神を倒して得たもの

「やあっ!」


「……えっ?」


 気づいたら座っていた。

 円形のテーブルを前にして、ふかふかの一人がけソファーに圭は腰掛けていたのである。


 大きな円形のテーブルの反対側には少年が座っている。

 白髪でグレーの目をした不思議な雰囲気の少年は、ニコニコとした顔で圭のことを見ている。


 ぼんやりと周りのことを見るとどこかの洋室のようだった。


「初めまして。ムラサメケイだね」


 テーブルは大きく、意外と圭と少年の間には距離がある。

 それでも少年の声はよく聞こえてきた。


「君は……それにここは……」


「疑問はいっぱいあると思うけど答えられることに制限があるんだ。僕は君たちが神々のゲームと呼んでいるものの管理者の一人だよ。気軽に話しかけてくれ」


「かん……りしゃ」


「こうしてプレイヤーに会うのは初めてだ。非常にイレギュラーなこと……僕にとっても貴重な経験だね」


 神々のゲームの管理者という言葉に圭は驚く。


「このゲームは……」


「ああ、ダメ。君の疑問に答えるためにここに呼んだわけじゃないから」


 色々と聞きたいことがあると口を開いた圭を少年は手で制する。

 妙な圧力があって、圭は言葉を飲み込んだ。


「君を呼んだのは君が世界を手に入れたからさ」


「世界を……?」


「君たちが住んでいる世界のことじゃないよ。君が倒したロンダルシアが所有していた世界さ。ウィナーテイクオール……勝者たる君が彼女が持っていた世界を手に入れることになったのさ」


 そんなことが可能なのかと圭は眉をひそめた。


「このゲームにおいて普通なんてはないよ。分体を参加させるならともかく本体で参加して、のこのことやられてしまった。彼女は消滅してしまって、世界の所有権は君に移ったんだ」


 十二階で攻略した三つの世界はロンダルシアのものだった。

 しかし圭がロンダルシアを倒したことで所有者のいなくなった世界を圭が手に入れることになった。


「ただ問題がある。世界を所有するためには神格が必要なんだ。つまりは神である必要があると言い換えてもいい。君は神じゃない。だから世界を所有する資格はないんだ」


「所有する資格がないのに所有しているというのか?」


 なんだか矛盾している。


「そうだね。君には使えない宝物を持っているようなものだ。だから君のことをここに呼んだのさ。このままでは困ったことになる」


「困ったって?」


「管理するもののいない世界がどうなると思う? 放置された広い庭のようなものだ。草が生え、荒れ果てた挙句、きっと崩壊してしまう」


「俺にどうしろと……」


「世界を誰かに渡してほしい。そのお願いをしにきたのさ」


 圭が世界を管理できないのなら管理出来る神に渡せばいい。

 ただ圭に世界を所有しているという自覚もなければ、何も知らないのに世界を神に渡すこともないだろう。


 だから圭に説明するために圭は呼び出されたのだった。


「君は同意してくれるだけでいい。こちらで全て処理をしよう。もちろん君にも利益はある。中立派を説得してあげよう」


「…………どういうことだ?」


「君は今非常に微妙な立場にある。君は神を殺した。そのことはゲームの参加者、見学者に大きな衝撃を与えた。危険だと君を排除しろという声もあれば、逆の意見もある。神がゲームに介入できない以上は限界はあるが……ロンダルシアがゲームの限界を超えていたことも間違いはない」


 少年の灰色の瞳が圭のことを見つめる。


「僕としては彼女のことは面白いけどあんまり好きじゃなかった。ゲームをかき乱してくれるけど、いいとこ取りをして掻っ攫っていってしまうことがあったからね。そして君のことも応援してる。ゲームにおける台風の目……どうなるのか予想もつかないよ」


 少なくとも少年は圭に対して敵対的な感情を抱く神ではないなさそうだ。

 だからと言って応援しているというのも味方というより、ただゲームの中で奮闘する姿を楽しんでいるだけにすぎないだろう。


「世界を欲しいという神は多い。君が世界を引き渡す代わりに君に肯定的な立場になってくれるような神々もいる。おまけに何かもらえるかもしれないし……肯定する立場の神が増えれば、君への干渉も抑えられる」


「……今この場で同意すればいいんだな?」


「決して悪いようにはしない。無駄に世界が荒れて消えることは僕も望まないからね」


 こんなゲームなんてものを始めておきながらよくそんなことを言えるなと圭は思ったが、口には出さない。


「好きにしてくれ。俺は他の世界なんてものに興味はないから」


「君ならそういってくれると思ったよ」


 少年はニッコリと笑う。


「ゲームも佳境に近づいている。君たちがどんな選択をして、どんな戦いをするのか……僕は見ているよ」


「へっ?」


 ガタンと圭の座るソファーの下の床が開いた。


「こんな……終わり方……うわあああああっ!」


「バイバイ。この世界は……どんなゲームの終わりを迎えるのかな」


 圭はソファーごと落ちていく。

 周りが暗くなり、圭の意識も黒い中に飲み込まれていったのだった。

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