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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第十二章

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四番目、本当の騎士7

「これは……」


「神聖強化……まあ、あるよな」


 アダシックスの体が光を放ち始めた。

 肩の傷が塞がっていき、より強い圧力を圭と薫は感じていた。


「ピィッ!」


「フィーネ!」


 大きく横に振られたアダシックスの剣を、フィーネは槍を太くして防御した。

 だが閃光のような斬撃が同時に放たれた一撃にフィーネは吹き飛ばされてしまう。


 反対側の壁まで勢いよく飛ばされて激突する。

 大きく壁が崩れてフィーネの姿が見えなくなる。


「……こりゃピンチかもな…………」


 圭の位置はいまだに壁に近い。

 逃げるような場所は少なく、ここまでも回避や防御はギリギリだったのにこれ以上強くなられたらとてもじゃないが対処できない。


「でも諦めてたまるか……」


 純粋な能力で見た時にもはや勝てる相手ではない。

 しかし諦めてやられてやるつもりもない。


「何をするのよ!」


 圭が剣を構えた瞬間ロンダルシアの苦しそうな声が聞こえてきて、アダシックスがサッと振り向いた。

 ダンテがロンダルシアの首を掴んで持ち上げている。


 ロンダルシアは苦悶の表情を浮かべて抵抗を見せるものの、ダンテが手を放すような気配はない。


「目が黒くないですか?」


 何が起きているのか圭たちもアダシックスも呆然としていた。

 ふと薫がダンテの目が真っ黒に染まっていることに気づく。


「私のものに手を出すとはいい度胸しているな……」


「くっ……貴様……何者だ……」


 ーーーーー


 圭たちがアダシックスと戦っている間、ダンテもなんとか動けないかと抵抗していた。

 しかし不思議な力に拘束されたダンテは身動きが一切取れないでいた。


「どうしても私のものになるつもりはなーい?」


 ロンダルシアは指先でダンテの顔を撫でる。


「触るな」


 ダンテは不愉快そうに顔を歪めてロンダルシアを睨みつけるけれど、ロンダルシアは睨まれても全く意に介した様子もなく指を動かす。


「私のものにならないなら……どうしようかしら?」


「ふっ、どうするつもりだ?」


「あなたの中身をぜーんぶ吸い出して剥製にしちゃおうかしら?」


 ロンダルシアはニヤリと笑う。

 歪んだ性癖を持っているなとダンテは軽く舌打ちする。


 視界の端で圭の奮闘が見えている。

 あまり状況としては良くない。


 圭には大きな恩があり、こんなところで見ているだけなんてもどかしくてたまらなかった。


「でもそんなに強いのにただの剥製もったいないわ……あなたが望むなら世界をあげる。力もあげる」


「そんなものいらない」


「全てが手に入るのにどうしてそんなに頑ななのかしら?」


「俺にはもう決めた相手がいる」


「ふぅーん? 恋人?」


 ロンダルシアは目を細める。

 見た感じ恋愛にうつつを抜かすような人に見えないのに意外だなと思った。


「恋人などではない。全てを捧げると決めた尊いお方だ」


 もちろんダンテにそんな相手などいない。

 だがダンテには全てを捧げて仕えている相手がいる。


 それはルシファーである。

 今は女性の姿をしているが、別にルシファーの姿は女性と限らないので恋愛の対象ではない。


 恋愛の対象ではなく崇拝である。

 いってしまえば女神と信者の関係と変わらないのだ。


「そう……あなたは私を見ていないのね」


 目の前にいるのにダンテの目には自分が映っていないとロンダルシアは察した。


「なら私を見てもらうしかないわね」


 ロンダルシアはダンテのアゴを掴んだ。

 瞳の縁がうっすらと輝きを増して、ダンテの目を覗き込む。


「何を……」


「ふふふ、私に身を任せればいいの。本当はあなたから従ってほしいけど、ダメなら私があなたを私の色に染めてあげるわ」


 ダンテの体から力が抜ける。

 ロンダルシアの目を見つめていると吸い込まれそうな気分になっていく。


 頭がぼんやりとして、何も考えられなくなる。


「これは……」


 危険だと思ったが、もう遅かった。

 ダンテの頭の中に霧がかかったように全ての思考が奪われていく。


「そう、そのままでいいの。次に目が覚めた時には私があなたの主となるの……うっ!」


 完全に落ちた。

 ロンダルシアはゆっくりと顔を寄せてダンテにキスをしようとした。


 次の瞬間ダンテの手がロンダルシアの首を掴んだ。


「な……なに……」


 拘束は解いていない。

 それにダンテはロンダルシアの術にかけられて、もはや抵抗の力などないはず。


 なのに拘束を振り切ってロンダルシアの首をものすごい力で締めている。


「お主……何に手を出そうとした?」


「あなた……一体」


 ダンテが顔を上げてロンダルシアの目を見つめる。

 目が全て黒く染まっている。


 瞳も白目も全て漆黒を移したかのようで、ロンダルシアは異質な力を感じていた。


「何をするのよ!」


 ロンダルシアが叫ぶ。


「私のものに手を出すとはいい度胸しているな……」


「くっ……貴様……何者だ……」


 ダンテではない。

 何かがダンテの中にいる。


「こやつは私のものだ。他人のモノに手を出すのはいけないことだ」


「ぐっ……がっ……」


 抵抗も虚しいほどの強い力で首を握り締められてロンダルシアの顔がだんだんと赤くなる。


「あれは……ルシファー?」


 黒くなった目を見て圭はダンテに何が起きたのかうっすらと察する。

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