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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第一章

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風の始まり6

「まあでも夜滝ねぇには夜滝ねぇの良いところいっぱいあるから」


「取ってつけたように!」


「本当だって。今こうして生きていられるのも夜滝ねぇのおかげだもん」


「圭は一々ズルい言い方をするね……」


「本当のことだからね」


 圭を気にかけて雇ってくれたのは夜滝である。

 料理ができるできないなんかより大切な優しさを持っている。


 会話に一区切りがついて圭と波瑠は視線を交わした。


「なんだい?」


 ちょっとした緊張感が空気に混じり夜滝が怪訝そうな顔をした。


「実は……」


 圭は自分が相手の能力や強くなりそうなことが分かるスキルがあることを夜滝に説明した。


「それは本当なのかい? 本当なら凄いことだよ」


「本当だよ。ただ……この能力のことがよく分かっていないから夜滝ねぇにも秘密にしていたんだ」


「ふむ……いや、それは正しいことだね。相手の能力が見えるスキルか。未だに覚醒者の能力に関しては謎が多い。それが分かるのだとしたらとんでもないことだ。活用する方法も多くあるし、悪用する方法も同じくある」


 イスに深く腰掛けて夜滝は思考を巡らせる。


「物についても見えるのだろう? ならいわゆる鑑定スキル系統の最上級のものと考えてもいいだろう。…………ちなみにどうして波瑠に私より先にそれを言ったんだ?」


 夜滝はちょっとだけ拗ねた顔をして唇を尖らせた。

 真実の目について相談するならどう考えても自分の方が先だろうと思う。


「実はそのことでも相談があって。波瑠はすごく強くなれる潜在能力の持ち主かもしれないんだ」


 本当は元々波瑠が覚醒者になれる可能性があったことは知っていたのだけどそれを言うとそれを込みで近づいたみたいになる。

 なので波瑠から覚醒したと言われて真実の目で見てみると今の能力は低いけど強くなれる潜在能力があることが分かったことにした。


 しかし今のままではG級でしかないので未来が潰れてしまうだけになる。


「強くなれるといってもどうしたら強くなれるんだ? 覚醒者の能力に多少の増減はあっても明確に強くなった例は今のところないはずだ」


「それについても……」


「まだあるのかい!?」


 こちらは実体験でモンスターを倒すと自分の能力が上がったことを伝える。


「…………圭、君の言っていることは公表すると大騒ぎになりかねないことだよ」


 圭自身は自分がレベルアップできるのだぐらいに考えていた。

 けれど一度覚醒して能力が固定されてしまうと考えられているのが今の常識である。


 仮に強くなれるのだとしたら常識を覆す世紀の大発見といってもいい。


「何でもっと早く言わない!」


「そ、そんなこと言われたって……」


 真実の目に関して圭にも分かっていない。

 その上仕事をクビになったり、新しい仕事に慣れたり、レベルアップしたり、モンスターに襲われたりと色々なことがあった。


 立ち止まって改めて考える余裕もなかった。


「しかし圭にしか分からないというのも厄介だな。立証するのも難しい。私は圭だから信じるがそんなことを他の人から言われても信じられない話だ」


「俺だって変な話だと思うよ。もうちょっと強くなって自信を持って言えるようになったら夜滝ねぇにも相談しようと思ってたんだ」


 今のところ圭の能力は未だにG級と変わりない。

 これが1つ等級が上がるなど分かりやすく力を示せる形で現れれば夜滝にも話しやすいと考えていた。


 夜滝は腕を組んで考える。

 このことは非常に繊細で難しい問題である。


 最近のゲート事故を考えれば覚醒者が強くなれるということは早めに公表すべきである。

 だが何の実証もされていない時点で情報を公開することは世界を混乱させてしまう。


 さらにはその情報源がどこなのか世界は知りたがるはずで圭の身の安全も保証できなくなる可能性が大きい。


「今はまだ秘密にしよう!」


 圭が優先。

 圭が大事。


 焦ってこのことが他に漏れてしまうと大騒ぎになる。

 今ここにいる3人だけの秘密にする。


「本当なのかどうか確かめていこう。こちらで出来ることをして確かそうならRSIの覚醒者の研究チームに協力してもらってもいいかもしれないね」


 やれることをして圭の能力が本当であるとデータを集めていく必要がある。

 焦らずに上手くやれば圭の発見は世界を変えるかもしれないのである。


 しっかり考えて冷静に考えてくれる。

 夜滝に相談してよかった。


「ちなみに夜滝ねぇも結構強くなれそうだよ」


「なに!? そんなことちなみに、なんて言うんじゃない!」


「圭さんはそんなスキル持ってるけど強くなれないんですか?」


「俺もそこそこは強くなれそうかな?」


「そこそこですか」


「うん……俺も正確にどこまで強くなれるか分からないから」


 筋力や速度などはきっと文字通りで能力が上がれば強くなれることは言うまでもない。

 夜滝の魔力も強くなれば強い魔法を使えるようになるということなので間違いなく強くなれる。


 一方で圭の能力で特筆すべきは幸運というステータスだ。

 こちらのステータスを正面から受け取ると運が良いということになるのだけど運が良くなるとは何なのか。


「ほんとに圭は私の思いがけないことをしてくれるね」


「圭さんって不思議な人ですよね」


 まあでも運がいいといえばいいのかもしれない。

 夜滝と波瑠という協力者も得られたのだしこれから理解していけばいいやと圭は思った。

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