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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第五章

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薫姫を探せ!3

「あれ、消えた?」


 追いかけていたクオルカンティカートが急に姿を消して波瑠は足を止めた。


「波瑠、どうした?」


 明かりをあちこちに向けてみるけれど追いかけていたクオルカンティカートの姿は見えない。


「急にあのモンスターの姿が見えなくなって……」


 波瑠も困惑している。

 しっかりと同じ距離を保って追いかけていたはずなのに急にクオルカンティカートがいなくなってしまったのだから訳がわからない。


「消えた? そんなわけないよな」


「あれじゃないかい?」


 みんなで周辺を見回す。

 夜滝が地面に懐中電灯を向けて照らしている。


「穴……?」


「なんでこんなところに穴が空いてんだ?」


 懐中電灯を向けた先にはポッカリと穴が空いていた。

 離れたところからでは光が入り込まなくて中の様子も見えない。


 確かに位置的にはクオルカンティカートが消えたぐらいの場所になる。

 盾を構えたカレンを先頭にして穴に近づいていく。


「自然発生の穴じゃないな」


 近づいてみると穴は四角く空いている。

 急に陥没したものとかではなく、人工的な形に見えた。


「ハシゴ……」


 中を照らしてみるとまず下に降りていくためのハシゴが見えた。

 次に床が見える。


 下までそれほど深くはない。

 土ではなくコンクリートの床でやはり人工的な地下空間のようだった。


「夜滝ねぇ」


「オッケー」


 見たところ敵はいないがどんな危険があるか分からない。

 雨漏りを直した時のように夜滝が地下に向かって水の壁を作り出す。


 一応安全を高めて下に降りた。


「ここは地下室……」


「どこかの家が壊される時に地下室をそのままにしてしまったのかもしれないねぇ」


 襲撃もなく降りてくることができた。

 下に降りて改めて見てみると何かの地下室のようだった。


 以前はこの辺りにも家があった。

 モンスターの襲撃で人が住まなくなった家は壊されてしまったけれど地下室は見逃してしまったのかもしれないと夜滝は思った。


「きっとこれに入ったんだな……」


 そして地下室の奥にはゲートがあった。


「なんかちょっと……黒くない?」


「確かに」


 普通のゲートは青白い色をしている。

 しかしこのゲートは少し黒っぽい青色である。


「やっぱりあのサルが出てきたのはこのゲートみたいだねぇ」


「どうして?」


「ゲートってのは放置されてブレイクを起こすと少しずつ黒くなっていくのさ」


 ゲートは攻略されないでいると魔物が中から出てくるブレイクを起こしてブレイキングゲートとなる。

 そしてブレイキングゲートはその状態で放置されると段々とゲートの色が黒くなって行くのである。


 これぐらいの黒さならまだブレイクを起こしてそれほど日は経っていないと夜滝は見ている。


「よし、入ってみよう」


 薫を助け出す。

 可能なら薫を助け出してゲートも閉じてしまいたい。


 圭たちはゲート中に入った。


「森……」


「ジャングルみたいだな」


 ゲートを通り抜けた瞬間ムワッとした空気が頬を撫でた。

 ゲートの中は鬱蒼と木々が生えているジャングルの中であった。


 湿度が高く雨で濡れた服も乾かなそうな空気をしている。

 なんとなくサルがいそうな雰囲気のある場所ではあった。


「……とりあえず進んでみるしかないか」


 水が滴る服を軽く絞って圭たちはひとまずジャングルの中に足を踏み出した。


「ジメジメとしてやな空気だぜ……」


 全身濡れているので余計にそう感じる。

 カレンのため息混じりの呟きにはみんなも同じ気持ちだった。


 孤児院でも残念ながらお湯は出なかったのでお風呂も入っていない。


「ピピピ、マスター、クルヨ!」


「あれ、フィーネ?」


「テキガクル!」


 バレたらお留守番させられるかもしれない。

 こっそりとついてきていたフィーネはここまで黙って気配を殺していた。


「んなことより、フィーネは正しいみたいだぜ」


「ビンゴだな」


 木の枝から木の枝へと飛び移ってクオルカンティカートが圭たちの方に向かってきていた。

 ここがクオルカンティカートのゲートであることは間違いないようだった。


「数は二体! 迎え撃つぞ!」


 ここまでで戦った感じ単体ではそれほど強くはない。

 力や素早さもそこそこで、攻撃は腕を振り回したり噛み付いてきたりと今のところベーシックである。


 ただ仲間をフォローするような動きを見せたりカレンの挑発を切って近くの圭に注意を向けたりと知能の高さは見せている。

 単体の戦闘力よりも集団での動きを警戒すべきかもしれないと圭は思っていた。


「カレンと波瑠で一体を、もう一体を俺と夜滝ねぇでやる!」


 ただ二体だけなら引き離してしまえばいい。

 カレンが魔力を調整して一体だけを上手く挑発し、その間に圭がもう一体に向かう。


 少しは圭も戦いなれたものでクオルカンティカートが爪を立てて振り回した腕を軽くかわして、逆に素早く腕を切り落とす。


「ピピ!」


「あっ、フィーネ」


 圭の方からフィーネが飛び出した。

 腕を切られて叫び声を上げるクオルカンティカートの頭に乗っかったフィーネ。


「ピ、グルン!」


 ゴキンと音が鳴った。

 足の先を変形させて尖らせたフィーネはクオルカンティカートの頭を鷲掴みにしてそのまま180度回転した。


 クオルカンティカートの首はフィーネの力がねじれて折れた。


「フィーネスゴイデショ?」


「あ、ああ……すごいよ」


 思わぬフィーネの力に圭も驚いてしまった。

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