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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第五章

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闇に包まれた孤児院2

「村雨さん!」


「圭さん!」


 カッパを着た梅山と薫が教会から出てきてくれた。


「とりあえず中に入りましょう!」


 風と雨が激しくて大きな声を出さなきゃ聞こえない。

 車を降りて教会に入る。


「うひゃー、すごいね」


 車が揺れるぐらいの風が吹いていたけれど実際降りてみると想像よりも外は酷かった。


「わざわざこのような天気の中ありがとうございます」


「圭さん、ありがとうございます」


「こちらこそ連絡してくれてありがとね」


「まさか停電するなんて」


「そうだね。教会も停電しているなんてね」


 急いで出てきたので車には覚醒者装備も積んであった。

 ゲート攻略用に荷物に入れてあった懐中電灯も持ってきて照らす。


「防災ラジオを聞くとどうやら広く停電のようですね」


「子供たちは大丈夫ですか?」


「ええ、今はみんなで集まって大人しくしています」


「とりあえず穴が空いているところはどこですか?」


 まずは状況確認を行う。


「まあそんなに大きな穴じゃなさそうだね」


 薫の案内で向かったのは孤児院部分の二階。

 子供たちが遊べるようになっているホールになっているところの天井に穴が空いていた。


 工事を知らせる看板が突き刺さっている。

 これが飛んできて屋根に穴を空けてしまったようである。


 それほど大きな穴ではないが雨の勢いが強くてもうホールはビチャビチャになっていた。


「どこか屋根の上に上がれそうなところはある?」


「ええと……」


 流石に覚醒者といえど屋根の上に上がるのは簡単ではない。

 雨風も強いので安全に上がれそうな場所があるならその方がいい。


「教会にある尖塔の窓から屋根の上に出ることができます」


「じゃあそこから出ましょうか」


 安全に出られそうなところがあったのでそこから出ることにした。

 圭たちは車から買ってきたビニールシートなどを教会の中に運び込んだ。


「うおっ……夜滝ねぇお願い」


「ほいよ」


 すぐ横が屋根になっている尖塔の窓を開けると一気に風が吹き込んでくる。

 このまま外に出ると風に押されて屋根から落ちてしまうかもしれない。


 荒れている中で作業するのは素人には危険である。

 けれども対策はちゃんと考えてある。


 夜滝が杖を持ち上げて魔法を発動させる。

 外を流れる水が動き、集まり始めた。


「おおっ、すごいですね!」


 水が形を変えていき、中が空洞となっているトンネルのようになった。

 圭が外に出てみると水のトンネルに囲まれているために雨や風が当たらない。


「これなら大丈夫そうだ」


 夜滝の魔法で屋根の上に水のトンネルを生み出してもらった。

 この中を通っていけば雨や風の影響を受けないで済む。


「さっすが夜滝!」


「えへん!」


 夜滝トンネルを通って穴が空いているところまで向かう。


「カレン、そっち持ってくれ」


「こうか?」


「そのままゆっくり抜くぞ」


 圭とカレンで穴を広げてしまわないように看板を引き抜く。

 そして買ってきたブルーシートを使って穴を塞ぐ。


「大地の力!」


 さらにはここでもさらに覚醒者の力を使う。

 防水テープでとめて重石を乗せたのだけど、それだけだけでは少し不安なので買ってきた土を乗せてカレンのスキルで固めてしまう。


 ここまですれば完全に水漏れも防ぐことができるだろう。

 雨が止んだら土はまたどければいいのである。


「助かりました!」


 梅山は深々と頭を下げた。

 素人の作業ではあるが土まで被せて固めたのでただのブルーシートの応急処置よりもかなり安心できるぐらいに塞ぐことができた。


 ホールを濡らしていた雨水も夜滝が大体を魔法で集めて窓から外に投げ捨てた。

 残った水分を拭き取れば雨漏りの処理も終わりと言っていい。


 こんなに早く安心できるレベルで処置ができて梅山も圭たちには感謝しかなかった。


「そんなに穴も大きくなくてよかったです」


 本当に看板分ぐらいの穴だった。

 あまり大きいと困っていたかもしれないがとりあえずで塞ぐことができるぐらいだったから助かった。


「けど停電は直んないな」


 ずっと孤児院は真っ暗である。

 停電し始めてから相当時間が経っているはずなのに未だに復旧しない。


 それどころかまた停電範囲が広がってすらいるようだった。


「このままお帰りになるのは危ないかもしれません。こちらに泊まっていってはいかがでしょうか?」


 町中の状況がどうなっているのかは知らないけれど確かに停電している中移動するのは危ない。

 もう時間も遅いし梅山の言葉に甘えさせてもらうことにした。


「薫君はどうして?」


 ちょっと疑問に思っていた。

 こんな天候になる前に、それどころかこんな天候になるのだから今日はボランティアを休んでもよかったはずである。


「えっと……僕、テレビとか見なくて……午前中晴れてたからこんなに荒れるって知らなかったんです」


「あー、なるほどね」


 言われてみればこんな荒天になる前は気持ちいいぐらいの天気だった。

 普段からニュースや天気予報を見ない人なら天候が悪くなるだなんて思わないのも理解はできる。


「気づいたら天気荒れてて。帰れないので神父様が泊まってけって言うので」


「そしたら雨漏りか」


「そうなんです。圭さんがいてくれて助かりました」


「急に助けてくれって連絡がきたから何事かと思ったよ。頼ってくれて嬉しいし、助けになれて何よりだ」


「圭さんってカッコいいですね」


 少し頬を赤くして薫は笑う。

 人のために駆けつけてくれた圭の姿はとてもカッコよかった。


「僕も圭さんみたいな大人になりたいです」


「可愛いこと言ってくれるな!」


「へへっ、圭さんがお兄さんだったらな」


 純粋に褒められて圭も気分が良くなった。

 わしゃわしゃと頭を撫でてやると薫も嬉しそうにしていたのであった。

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