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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第五章

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闇に包まれた孤児院1

「ピピ……」


 フィーネが窓の外を眺めている。

 打ち付ける雨が激しく音を立て、近くで雷が落ちる音がしている。


「ヒカッタ!」


 窓の外が光って一際大きな音が鳴る。

 フィーネは雷が光るのを楽しんでいて、ピカピカとする度に嬉しそうにしていた。


「珍しく荒れてるねぇ」


 夜滝が濡れた髪をタオルで拭いている。

 爆弾低気圧の接近に伴って天候は荒れに荒れていた。


 RSIから寮まで非常に近いのであるがそれでも多少歩く時間は発生する。

 風も強くて傘も意味を成さないような荒れ模様だったので走って帰ってきたけれど、それでもびしょ濡れになってしまったのだ。


「明日も続くんだろ?」


「うん、天気予報ではそう言ってるねぇ」


「明日土曜日でよかったよ……」


 テレビをつけてみるとどこでも爆弾低気圧による荒天の情報が流れている。

 夕方に雨は降り出したばかりで次の日も荒れ模様は続くとテレビでは言っている。


 明日もこれで仕事に行くのは辛いけれど次の日は土曜日で休みだった。

 幸い料理のストックもあるし予定もないので1日大人しくしていようと思った。


「一部地域で停電か……スマホ充電しておかなきゃねぇ」


 他にもニュースでは停電した地域まであると発表されていた。

 そこまで激しいのなら災害の備えもしておく必要があるかもしれないと夜滝は思った。


「圭、スマホ鳴ってるよ」


 入れているお風呂を止めに行った圭のスマホの呼び出し音が鳴り始めて夜滝が圭を呼ぶ。


「はいはい、っと。おっ?」


 慌てて戻ってきた圭がスマホを見ると先日連絡先を交換した薫からの着信であった。


「もしもし?」


 結局圭の方から連絡も取れずに機会があれば思いながらも行動はできていなかった。

 すぐさま圭は電話に出た。


「け、圭さん?」


「久しぶりだね。今日はどうかした?」


 SNSでの連絡も取れるのにわざわざ通話したと言うことは緊急の用件なのかもしれない。


「その、助けてほしくて」


「助けてほしい?」


 思いもよらない言葉に圭は眉を寄せた。

 重たいトーンの薫の声に冗談ではないとすぐに察する。

 

 夜滝が圭の様子を見て素早くテレビを消して会話に集中出来るようにする。

 圭はスマホをスピーカーにして夜滝にも声が聞こえるようにした。


「まずは無事なのかい?」


「はい」


 ひとまず薫は無事なようだ。

 声色は困っている感じだが、追い詰められたような切羽詰まっている感じまではいっていない。


「今どこで、何があったのか教えてくれるかい?」


「今、孤児院にいまして」


「孤児院に?」


「今日もお手伝いで孤児院にいたんです。そしたら天気荒れてきちゃって……」


「迎えに行けばいい?」


 天気が荒れて帰れなくなっているから困っているのかと圭は考えた。


「そういうことじゃなくて、実は困ったことになってるんです」


「何を困ってるんだ?」


「実は強風でどこからか看板のようなものが飛んできてしまって、孤児院の屋根に穴が空いてしまったんです。神父様も直してくれるところがないかと連絡を取ってみているんですがこの時間だし、天気も悪いからどこも引き受けてくれなくて……」


「なるほどね、それで連絡してきたのか」


「ごめんなさい……他に助けてくれるような人も思いつかなくて……」


 恒例の梅山と少し非力な薫の他には子供たちしかいない。

 どこに穴が空いたのかは知らないけれど孤児院にいる人だけでは応急処置もままならないのだろう。


 問題としては大きいが、対処できないようなものでもなくてよかったと思う。


「いや、いいよ。何か穴塞ぐための物はある?」


「子供たちが外でピクニックするビニールシートぐらいです」


「そうか……この時間ならまだホームセンターは開いてるかな。何か買ってそっちに向かうから」


「あ、ありがとうございます!」


「それじゃあまた後で」


 圭は通話を切って夜滝と顔を見合わせた。


「大変そうだねぇ」


「そうだね。とりあえず出来ることをしよう」


 圭と夜滝は着替えて家を出る。

 ホームセンターに寄ってブルーシートや重りなど必要そうなものを買う。


 車で向かう途中夜滝が連絡を入れてくれてカレンと波瑠も手伝ってくれることになった。

 下手な男手よりも覚醒者の二人の方が頼りになる。


 車で二人を拾って孤児院に向かう。


「あれ……なんだか道暗くねえか?」


「そうだな……」


 もう完全に日は落ちて辺りは暗くなっている。

 それは普通のことなのであるが周りは完全に暗闇になっていた。


 街灯もあるはずなのに光が一切ないのである。


「あっ!」


「どうした?」


「停電だって!」


 スマホで調べてくれた波瑠が驚いたような声を上げた。

 少し車を路肩に止めてスマホの画面を見せてもらうと少し前まで一部で起きていた停電の区域が広がって大規模な停電となっていた。


 だから街灯も消えているし、途中にある家から漏れる光もなかったのである。


「あちゃー、まさかこんなことになるとはな」


 停電がさらに広がるだなんて思いもしなかった。

 しかし今から帰るということもできないので孤児院にそのまま向かうことにした。


 暗かったので通り過ぎてかけたがなんとか事故もなく孤児院に着いた。

 元々車通りも少ないところなので慎重に運転すれば危ないこともなかった。

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