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【第十四章開始】人の才能が見えるようになりました。~幸運な俺はいい才能を持つみんなと一緒に世界を救う~  作者: 犬型大
第四章

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やはり塔は謎である6

 そのおかげで早くケルテンの研究所の入り口を見つけることができた。

 薄暗い階段を降りて研究所に向かう。


「どっちに行くのがいいかな?」


「うーん……とりあえず研究室の方に行こう」


 ここに来た目的は研究所に置いてあった資料だった。

 フィーネの教育をする中でどうやらフィーネが研究所で見た資料に書かれていた異世界の文字を読めるらしいことがわかった。


 そこで夜滝は今一度研究所に行って資料を持ち帰り、フィーネに解読してもらうことを考えたのである。

 そうすることによって本当にここが異世界的なものなのか、何が起きたのかなどが分かるかもしれない。


 ついでにケルテンがゴーレム製作者だったことからゴーレムの製作法でも分かれば何かに活かせるかもしれないと考えたのである。

 もしゴーレムの製作法が分かったのならゴーレムとして作られたとしてフィーネの存在も堂々と公表出来るようになるかもしれない。


 ひとまず多くの資料が並べられていた研究室の方に入る。


「な、なにこれー!」


 前に来た時の記憶では確かに棚には資料っぽい本が並んでいた。

 資料を探せがクリアにならないから全て手に取って開いてみたので間違いない。


 しかし棚に本はなかった。

 代わりに棚には土埃のようなものが山になっていた。


「もしかしてこれが本だった……?」


 カレンが土埃に触れてみると砕けてさらにサラサラと細かくなってしまう。


「これじゃ解読は無理だな」


 圭も指先で土を摘むがもう本とは言えない。

 他の部屋も見てみる。


 備品室の隅にあった本も同じ状態になっていた。


「ここも……だけど」


 最後に寝室。

 机の上に並べられていた本は粉々の土になっていた。


 しかし一冊だけ机の真ん中に広げられたままになっている本があった。

 読んだ後本は戻したはずなのでこんなところに置いていない。


 圭が恐る恐る手を伸ばして本を1ページめくってみる。

 特に何も起こらない。


 大丈夫そうなので手に取って見てみる。

 相変わらず中身は見たことのない文字で書かれていて圭たちには解読することはできない。


 本の中身としては半分ほどのところまでしか書かれておらず、そこから先は白紙のページが続いていた。


「ピピ……コノママデハフィーネノソンザイガバレテシマウ」


 圭の方に乗って本を眺めていたフィーネが内容を読み上げ始めた。

 内容が書かれている最後のページだった。


 “このままではフィーネの存在がバレてしまうかもしれない。あの子は私の娘だ。むざむざと殺させるつもりなどない。なので私は仕方なくフィーネを休眠させることにした。

 休眠させてしまうとせっかくここまで積み重ねてきた性格や記憶に問題が生じたり大きく退行してしまう可能性もある。けれどフィーネが見つかるよりは遥かにいい。いつかフィーネがまた自由になれる時が来るはずだ。

 この日記をつけることはこれで最後にしよう。フィーネが眠りについてしまったのならこれ以上残しておくようなこともない。フィーネ、君が目覚めた時に近くに友達でもいてくれるといいのだが”


 机の上に残されていたのはケルテンの日記だった。

 パラパラとめくりながらフィーネに軽く読んでもらった感じではフィーネの成長記録のようなものである。


 人の日記ではあるが他の本が全て消え失せたのにこれだけが残っていた理由があるはずだ。

 もしかしたら、フィーネに対する遺品のようなものなのかもしれないと圭は感じた。


「持って帰ろうか」


 忘れられた研究所に残しておくことも忍びない気がした。

 ケルテンの日記ならその娘であるフィーネが持っていてもいいだろう。


「……アリガトウ」


「いいさ」


 ひとまずまた研究室に戻ってみた。

 改めて確認してみるが本は粉々で、本以外のものはそのまま。


 崩れたフィーネの体も同じ場所に崩れたままであった。


「これは……動くのか」


 録音機に魔力を込めて見ると再びケルテンの声が流れ出す。


「コレモッテカエリタイ!」


 亡き父親の声が聞こえる。

 フィーネは圭の方を振り返って録音機を持って帰りたいと懇願した。


「こ、これを?」


 圭は録音機を持ち上げてみる。

 割とずっしりとしていて重たいが持てないこともない。


「まあ、もう持ち主もいないしねぇ。むしろケルテンという人がいないのならフィーネのものと言ってもいいかもしれない」


「確かにそうだね。よし、持って帰ろうか」


「マスタースキ!」


 フィーネの気持ちも分からなくはない。

 重たいけれど持っていって怒る人もいないので日記と同じく持っていくことにした。


「コレモ」


「……メイド服だぞ?」


「オトウサンガクレタフク」


 さらにフィーネは床に落ちているメイド服も持っていきたいと言った。

 フィーネがストーンゴーレムだった時の体は粉々に砕け散ってしまったがメイド服は土にまみれながらもそのまま床に落ちていた。


 こちらのメイド服もケルテンからの贈り物のようでフィーネにとっては大切なものだった。

 持ち帰っていいのなら持ち帰りたいと思った。


「いいんじゃねえか? これぐらいなら荷物に入るだろ」


 カレンはメイド服を拾い上げると土を払ってたたむ。

 土にまみれていた割には綺麗である。


「にしてもなんで本だけが……」


「まるで何か隠そうとしているようだねぇ」


 フィーネという存在を得て、本の中身が解読されることを誰かが嫌がっているような雰囲気を夜滝は感じた。


「何か分かると思ったんだけれど……残念だね」


 圭たちは研究所を後にして塔から脱出する。

 大きな録音機は荷物の中に入らなくて抱えて出ることになった。


 どこからそんなもの持ってきたんだといぶかしむように塔の日本エントランスを守る覚醒者に見られた。

 けれど塔で起きたことには基本的には不干渉がルールなので何か聞かれることもなかった。


ーーー第4章完ーーー

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